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第一話 薄桃の吹雪

過ぎ去った記憶。焼き付く様な体温。感情が焦がれる程爆音で高鳴る鼓動。意識が全て別次元に飛ばされる程に見惚れた美貌。脳を渦巻くドス黒い快楽の渦。


「あっはっ...だ、大胆...本当に初めて...?」

「はぁっ...、はぁっ...、」

「あはっ、もうっ....そんな物欲しそうな顔しないの。」


脳裏に色濃く染み付いた記憶の全てが忌々しい程に"あの事"を思い出させる。その記憶の根底には何時まで経っても消える事の無いあの夜があった。


___第一話 薄桃の吹雪


春。世間一般的には入学や就職、何か真新しい事を始めるにはお誂え向きの季節。それに漏れず、自分自身も高校生としての芽吹きを今か今かと待ち望んでいた。

桜の木が満開に咲き誇る通学路は、一年間でこれ程までに心が踊る事は無かったと自信を持って断言出来る。一種の拷問とも言える受験勉強の精神的な苦痛から解放され、蒼天の空へと羽ばたき青春を謳歌するという感情が心を支配しているのだから。


聖裕「今日から高校生か...まだ実感湧かないな...」


着いた校門。薄ピンクや白とも捉えられる桜吹雪が舞い散る最中、自分、出雲聖裕はこれから三年間の青春が幕を開ける事に少しの緊張と期待を胸に秘めて一歩目を踏み出した。


___そう思っていた時。


?「そこの君、」


不意に背後から呼び止められ、反射的に振り向く。振り返った先には一人の女子生徒が。桜の様に美しい薄桃のショートヘアに、ラベンダー色の透き通った瞳。高い身長に映える、魅惑のボディライン。

まるでこの桜吹雪に紛れてしまっても可笑しくはない幻想的な美貌。


聖裕「何か用ですか?」

?「いーや、人違いみたい。ごめんね。」


数秒程此方を見詰めた後、その女性は校舎に入って行った。だが何故だろう。突如現れた彼女を視界に入れた瞬間から、心臓の鼓動が早くて仕方が無い。

あの顔、あの背丈、あのボディライン。彼女の全ての要素がかつて自分に天国を見せてくれた女性と合致して止まない。だがそんな奇跡はこの世には存在しない。その筈。奇跡はこんな所で起きはしない。その筈なのに。


聖裕「ったく...入学式前に俺は何を考えてんだっ...!!」


そう自分に言い聞かせ、校舎内の下駄箱へ歩みを進める。新調された様に下駄箱は綺麗で、期待と緊張が混在する場所特有の空気が充満している。恐らく三年間お世話になるであろう上履きを履き、視界の先にある自身のクラス表にて自分の名前を確認。


聖裕「1年3組...4番。」


自身のクラスへ向かうべく階段を登る。一段一段を新生活の始まりとして踏み締めていたその時、


?「...いや、やっぱり。」

聖裕「っ!」


不意に、背後から先程聞いたものと同じ声が聞こえて来た。その艶やかな声に身体が硬直してしまい、振り返ろうにも身体が言う事を聞かない。そんな様子は第三者から見たら立ち止まっている様にしか見えなかったのであろう。

声の主は此方に近付いては肩に細い指でそっと触れた。


?「...明日の部活動見学、華道部においで。」


ただその一言。部活動の勧誘を耳元で囁かれただけ。しかし"恐らく"初対面の人間に囁く事は本来有り得ない。有り得るとしてもハニートラップや何かの目的を持った物が多い。

が、それでも彼女の甘言になんの不信感も抱かず、身体が無意識に動き始める。今この廊下を"彼女"と自分以外存在していないかの様な錯覚に囚われる程思考は遮断される。

それでも理性が脳の片隅に残っているのか、足は着々と自分の教室へ。その景色はなんとも儚げで、吹いたら消えて無くなる桜の様だった。

やがて着いた教室。新入生の皆は自分の席に座っては只管無言で、担任が来るのをただひたすらに待っている。自分も一番後ろにある自分の席へ着き、貰ったプリントに目を通しつつも初対面の人間が一人二人会話を繰り広げるその景色を眺めて時間を潰した。

やがて1年3組のクラス担任であろう教師が入室し、軽い自己紹介と今後の予定とその他諸々を説明してはチャイムの音が学園中に響いた。


教師「えー、入学式が終わったら部活動見学があるので、皆はプリントを頼りに見学しに行って。ちなみに俺陸上部の顧問だから、皆、ね?素晴らしい脚腰と身体になりに来いよ!」


若々しい男性教師。恐らくアタリだろう。問題児を更生する力を持ち合わせつつ、その声質や表情筋で特に女子からの人望を集めるタイプの教師だと本能で悟る。

__その後の入学式は何の変哲も無い、堅苦しい式だった。その後は教室に戻った後、各々が行動を始める。そんな中自分はプリントに記された地図を元に華道部へと足を運んだ。


好評だったらPERFECT WORLDと同時連載したいです。

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