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1章 8話 リザルト

 見学会の結果は良好だった。

 特にこの領の辺境伯は即日購入すると言って、書類をせがんだくらいだ。


 2週間後、俺らのパーティはあの屋敷に集まった。

 売買した結果をニーナが教えてくれて、その場でちょっとしたパーティを開いてくれるということになった。


 到着した俺とゴンザレスに、ニーナはアルコールの弱い炭酸ワインをグラスに注いで渡してきた。

 アルコールは弱いけれど甘くて美味いやつだ。キンキンに冷えていて、すっきりする炭酸もいい。

 喉の渇きを感じて、俺はそれぐいっと飲む。


「結局なんだけど、一番ここを買いたがっていた辺境伯は辞退して、王家が買うことになったわ」


 王家が買うって言っているところを辺境伯が、『いやいや俺が買う』とは無理だろうね。

 少なくとも建設的なお話し合いが行われたに違いない。建物をめぐる話だしね。


「でね、王国は勇者パーティに使わせるために購入したんだって」


「はあ!?」


 思わず声が裏返る。


 しかし、ニーナは気にした様子もなく、淡々と続けた。


「勇者パーティーが疲労、消耗が激しくなったため、前線近くに拠点を用意するって話。予算も追加で出たみたい」


 グラスの中の泡が静かに弾ける。


 なるほど、と一瞬だけ納得しかけて……やっぱり腹が立つ。それに、お金足りない、で簡単に予算追加すんなよ。


「あいつら、そんなに軟弱だったか?」


「さあ? ただ、無理して倒れる人が増えたのは事実みたいね」


 そこでニーナは、ちらりと俺を見る。


「……誰かさんが、無駄な出費を徹底的に削ってくれないからじゃない?」


「知らねえよ。あいつらの金の使い方が下手なんだろ」


 鼻で笑うと、ニーナは満足そうに頷いた。


「それで、辺境伯が見学会の日に購入希望出してくれている中、王家はその日に希望しなかったじゃない。数日経ってからの希望」


 ニーナはグラスに口をつけ、そして、にこりと悪い笑みを作って話を続ける。これは金の亡者が火を吹いた時の顔だ。


「王家だから、勇者だから優先するのは筋違い。あなた方に売ったら、最前線で魔族や魔物と戦ってきた辺境伯がどう思うだろうか。謝罪に行く私たちがどうなるのか考えたことあるのか、と説明したの」


 結構王家にグイグイいくな、と思う。


「それに、心理的瑕疵物件のことを伝えたの。私たち、王国すなわち、王家の運営している王国が、私たちに悪魔降臨儀式をしていた部屋があるにも関わらず、何も説明がなかったの、どういうことなんでしょうね、って」


 完全に詰めに行ってる。


 でも、そのとおりだ。

 王国が販売した建物なら、王国が確実に確認するはずだ。

 あまりの廃墟っぷりに確認しなかったのかもしれない。でも、それは規約違反だ。

 王国で売った物を王家が、知らぬ存ぜぬなんてそんな恥知らずなことは言えない。


「それで?」


「辺境伯への顔立てと、こちらへの補填込みで……」


 ニーナは悪い顔を作り、わざと間を置く。


「163万ゼニー」


 俺は理解が追いつかなかった。

 163万ゼニー、日本円にして1億6300万円。

 当初の売り出し価格は113万ゼニー。

 50万ゼニー上乗せ!?


「売り出し価格の1.5倍くらいで売れたのか?」


「そう、沢山指摘のサービスしてあげて、値上げしてあげたのよ」


「ナイス!」


 俺は空いている片手でニーナの手にハイタッチをする。


「勇者の野郎のために、勇者が壊した家を買い取るのか! マジで最高だよ!」


「しかも、相場の約1.5倍の高値でね」


 勇者の野郎どもが快適な休憩をしている時に、その屋敷を俺がリフォームしたことを知れば、きっと奴らは虫唾が走ることだろう。

 そう思うと、もう一杯お酒を飲みたくなる。ゴンザレスの手元にある炭酸ワインを取ろうとすると、ゴンザレスが勢いよくワインボトルを手に取って遠ざけた。


「お前、酔っ払うと素っ裸になるやつに、昼間っから何杯も飲ませられるかよ」


 ゴンザレスがそう言ってガハハと軽快に笑う。

 

 ゴンザレスの腹を軽く叩き、そしてゴンザレスにもハイタッチする。


「今回もありがとうな。お前らがいないと、売れる家は作れない」


「なあーに、利益がでかいのは、うちのケチ担当のお陰さ」


 ゴンザレスが炭酸ワインを俺のグラスに注いだ。


「てめぇ、残り少ねえ髪の毛引っこ抜くぞ」


「ドワーフは髪に未練なんて持たないんだよ、ガハハ!」


「はいはい、それくらいにして、今回の売り上げに」


 ニーナがグラスを掲げる。それに合わせて俺とゴンザレスがグラスを掲げた。


「それと次はリファが裸で酔い潰れないことを祈って」


 ゴンザレスが、ぶふっ、と笑う。うるせぇよ。


「乾杯」


 俺たちはグラスを互いに軽く当てた。


 その音は祝福のベルのように屋敷の中に響いて消えていった。




【今回のリザルト】


出費内約


 物件購入費(土地付き)

 12万2000ゼニー


 材料購入費

 チーク材 15万ゼニー

 エルダートレント材 0ゼニー

 その他消耗品 2000ゼニー


 事故事由除去費用

 シスタールナ派遣費用 20万ゼニー

 (出張代、お得意様及びお友達割引込み)


 謝罪金

 辺境伯への詫び金 30万ゼニー


 合計出費

 77万4000ゼニー


最終販売価格

 163万ゼニー


確定利益

 85万6000ゼニー

 (日本円で約8560万円相当)


パーティ資金への持ち越し

 42万8000ゼニー


一人当たりの利益

 約14万2600ゼニー

 (日本円で約1426万円相当)

 読んでいただきありがとうございます。

 感想、ブックマークなどありがとうございます。

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