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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第三章 FIRE失敗民、違法ダンジョンをぶっ壊す

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第21話 ステ・スキル振り

『ミツル。あんた、寝てないでしょ?』


 翌朝、オレはマリエから説教を食らう。


「寝ましたよー」


 アクビを噛み殺しながら、オレは応対した。


 朝メシは、部屋に持ってきてもらっている。


『ウソ。さっきから、アクビばっかりしてるじゃない』


「理論上は、寝たっつーの」


 船を漕ぎながら、オレはヨーグルトをスプーンですくう。


 オレは魔法使いビルドで手に入れたスキル、【瞑想】を使っていた。半覚醒状態に自分を追い込み、魔力のみを回復するスキルである。


『心配だったのね。ロニちゃんのお家が』


「ああ。瞑想なら半分寝ている状態でも、すぐに覚醒できるからな」


 オレは宿泊している間、ずっとロニの屋敷がある方角を見張っていた。どんな悪党が狙っていようと、対処できるように。


 妖精をさらった盗賊団が、ロニを襲う可能性があったからである。


「喜ばしいことに、結果は空振りだ。オレは安心して、枕を高くできらあ」


『半分徹夜なのに、よく言うわよ』


 今回の見張りで、わかったことが。

 ロニの【認識阻害】フードは、本物だったらしい。


「どうやら奴さんは、ロニを少年だと思い込んでる」


『当時着ていた服も、あたしの用意したものに変えたものね』


 まったくだ。あれがなかったら、ロニの正体はバレていたかも知れない。


「それに、冒険者ギルド関係者にも、共犯がいないことが確定したぜ」


 もしギルドに共犯者がいたら、ロニが情報を持ってきた段階で、手を打っていたはず。


「ギルドからは、情報が漏れてない。安全だと見て、いいだろう」

 

『あたしの方でも、情報を集めてみるわ。特に、建築業などの会社をあたっているところよ』


「ムチャをするなよ。リアルを襲われたら、こっちはたまったもんじゃない」


『わかっているわ。異世界で得た力は、あくまでも異世界でしか行使できないって』


 そう。どれだけダンジョンで強くなったとしても、地球ではストッパーがかかる。


 どれだけ強力なアイテムを得たとしても、地球ではガラクタだ。スマホゲーのデータ集合体と、同レベルでしかない。


『ミツル。あんたも、気をつけなさいよ。強いって言っても、相手は魔王かも知れないのよ』


「魔王とは、何体もやりあっているが」


『その過信が問題だって、言ってるのよ』


「心得ている。オレだって、ムチャはしないさ」


 ひとまず、異世界の街を回ってみるか。


 情報を集めつつ、ロニと色々とショップを見て回りたい。


「まだ早いな。ギルドまでには、間に合うだろう」


『ミツルさん。その前に、ステータスやスキルを見直すことを推奨します』


 キナ子が、そう提案してきた。


「そうだな。朝が早すぎる」

 

 まだ、装備品の店は開いていない。今出ていっても、食料市場くらいしかないだろう。

 装備更新は、店が開いてからにしよう。


「さて、レベル確認」


 オレもキナ子も、レベルは【二〇】になっていた。レベル差を手早く埋めるため、ボスに第二形態ができたようだ。これで、ボスを連続で狩る必要もない。手間が省けるってもんだ。


「なにをするかなぁ……」


 昨日はノーコストで、新たなスキルを手に入れた。それを補完するか。


「投げ技を手に入れたから、振り払われないように腕力を上げよう」


 腕力をメインに、ステータスポイントを振る。

 ちょいと、攻撃力に難が出始めているからな。

 魔法付与を過信して、物理ダメージを軽視しすぎた。ちゃんと、物理攻撃力も上げなければダメだ。失念していたとは。


『ヒガン』が手数で攻めるタイプだったから、そのクセが抜けていない。


『ミツルさんは、戦士タイプを、どのように調節していくつもりですか?』


「ダメージソース係かな」


 戦士系と言っても、数種類の戦闘タイプがあるのだ。

 相手の攻撃を引き受けるタンクや、ダメージを出す係などである。

 ダメージソース役も、物理一辺倒か、魔法剣を駆使するかで分かれるのだ。

 

 タンクは、キナ子がいる。

 ロニは、魔法ダメージソースに極振りだ。


 オレは、物理をダメージに振る。

 魔法スタイルでは、主に補助系で攻めていこうと決めた。


「だから、ロニのアドバイスを参考にしたい」


 スキル振りは、ロニと合流してからにしよう。

【チェイン・ライトニング】のスキルを、一ポイントだけプラスするにとどめる。


『わかります。ではワタクシは、前衛タンクを目指して、【HP自動回復】に全振り致します』


「おう。こいつも、もらっておけ」


 ボス討伐で手に入れたアイテムを、キナ子の首にかけてやった。


【ドクロの涙】といって、呪いを防ぐ効果がある。

  

「アンデッドの体力吸い取り攻撃を、割合で防いでくれる」


『ありがたく、使わせていただきます』

 

 準備を終えて、ギルドへ向かった。


 ギルドには、ロニたちの車が待機している。


 ロニの母親が、オレの前に来た。腕輪を、オレにくれる。


「魔力の自動回復をご所望だと、娘から聞いたので。これを」


【チャージド・リング】というアイテムを、オレは受け取った。


「ありがとうございます」


「こちらこそ。娘をお願いいたしますね」


 ロニの母親が、頭を下げる。


 車の外で、ロニは雪の精霊であるノーマンを撫でていた。


「元気でね、ノーマン。お母さんのこと、お願いね」


「ワンッ!」


 ロニはノーマンを撫でたあと、こちらに。


「思い残すことは、ないか?」

 

「行こう、ミツル」

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