第21話 ステ・スキル振り
『ミツル。あんた、寝てないでしょ?』
翌朝、オレはマリエから説教を食らう。
「寝ましたよー」
アクビを噛み殺しながら、オレは応対した。
朝メシは、部屋に持ってきてもらっている。
『ウソ。さっきから、アクビばっかりしてるじゃない』
「理論上は、寝たっつーの」
船を漕ぎながら、オレはヨーグルトをスプーンですくう。
オレは魔法使いビルドで手に入れたスキル、【瞑想】を使っていた。半覚醒状態に自分を追い込み、魔力のみを回復するスキルである。
『心配だったのね。ロニちゃんのお家が』
「ああ。瞑想なら半分寝ている状態でも、すぐに覚醒できるからな」
オレは宿泊している間、ずっとロニの屋敷がある方角を見張っていた。どんな悪党が狙っていようと、対処できるように。
妖精をさらった盗賊団が、ロニを襲う可能性があったからである。
「喜ばしいことに、結果は空振りだ。オレは安心して、枕を高くできらあ」
『半分徹夜なのに、よく言うわよ』
今回の見張りで、わかったことが。
ロニの【認識阻害】フードは、本物だったらしい。
「どうやら奴さんは、ロニを少年だと思い込んでる」
『当時着ていた服も、あたしの用意したものに変えたものね』
まったくだ。あれがなかったら、ロニの正体はバレていたかも知れない。
「それに、冒険者ギルド関係者にも、共犯がいないことが確定したぜ」
もしギルドに共犯者がいたら、ロニが情報を持ってきた段階で、手を打っていたはず。
「ギルドからは、情報が漏れてない。安全だと見て、いいだろう」
『あたしの方でも、情報を集めてみるわ。特に、建築業などの会社をあたっているところよ』
「ムチャをするなよ。リアルを襲われたら、こっちはたまったもんじゃない」
『わかっているわ。異世界で得た力は、あくまでも異世界でしか行使できないって』
そう。どれだけダンジョンで強くなったとしても、地球ではストッパーがかかる。
どれだけ強力なアイテムを得たとしても、地球ではガラクタだ。スマホゲーのデータ集合体と、同レベルでしかない。
『ミツル。あんたも、気をつけなさいよ。強いって言っても、相手は魔王かも知れないのよ』
「魔王とは、何体もやりあっているが」
『その過信が問題だって、言ってるのよ』
「心得ている。オレだって、ムチャはしないさ」
ひとまず、異世界の街を回ってみるか。
情報を集めつつ、ロニと色々とショップを見て回りたい。
「まだ早いな。ギルドまでには、間に合うだろう」
『ミツルさん。その前に、ステータスやスキルを見直すことを推奨します』
キナ子が、そう提案してきた。
「そうだな。朝が早すぎる」
まだ、装備品の店は開いていない。今出ていっても、食料市場くらいしかないだろう。
装備更新は、店が開いてからにしよう。
「さて、レベル確認」
オレもキナ子も、レベルは【二〇】になっていた。レベル差を手早く埋めるため、ボスに第二形態ができたようだ。これで、ボスを連続で狩る必要もない。手間が省けるってもんだ。
「なにをするかなぁ……」
昨日はノーコストで、新たなスキルを手に入れた。それを補完するか。
「投げ技を手に入れたから、振り払われないように腕力を上げよう」
腕力をメインに、ステータスポイントを振る。
ちょいと、攻撃力に難が出始めているからな。
魔法付与を過信して、物理ダメージを軽視しすぎた。ちゃんと、物理攻撃力も上げなければダメだ。失念していたとは。
『ヒガン』が手数で攻めるタイプだったから、そのクセが抜けていない。
『ミツルさんは、戦士タイプを、どのように調節していくつもりですか?』
「ダメージソース係かな」
戦士系と言っても、数種類の戦闘タイプがあるのだ。
相手の攻撃を引き受けるタンクや、ダメージを出す係などである。
ダメージソース役も、物理一辺倒か、魔法剣を駆使するかで分かれるのだ。
タンクは、キナ子がいる。
ロニは、魔法ダメージソースに極振りだ。
オレは、物理をダメージに振る。
魔法スタイルでは、主に補助系で攻めていこうと決めた。
「だから、ロニのアドバイスを参考にしたい」
スキル振りは、ロニと合流してからにしよう。
【チェイン・ライトニング】のスキルを、一ポイントだけプラスするにとどめる。
『わかります。ではワタクシは、前衛タンクを目指して、【HP自動回復】に全振り致します』
「おう。こいつも、もらっておけ」
ボス討伐で手に入れたアイテムを、キナ子の首にかけてやった。
【ドクロの涙】といって、呪いを防ぐ効果がある。
「アンデッドの体力吸い取り攻撃を、割合で防いでくれる」
『ありがたく、使わせていただきます』
準備を終えて、ギルドへ向かった。
ギルドには、ロニたちの車が待機している。
ロニの母親が、オレの前に来た。腕輪を、オレにくれる。
「魔力の自動回復をご所望だと、娘から聞いたので。これを」
【チャージド・リング】というアイテムを、オレは受け取った。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。娘をお願いいたしますね」
ロニの母親が、頭を下げる。
車の外で、ロニは雪の精霊であるノーマンを撫でていた。
「元気でね、ノーマン。お母さんのこと、お願いね」
「ワンッ!」
ロニはノーマンを撫でたあと、こちらに。
「思い残すことは、ないか?」
「行こう、ミツル」




