第14話 初めての魔法戦闘
あ、そうだ。大事なことを聞かなきゃ。
「あのさ、鍛冶屋さん。ドロイド用の装備ってあるかい?」
鍛冶屋に、キナ子用の武器と防具を見繕ってもらった。
「ミツルはいいの?」
ロニが、なにも買おうとしないオレに話しかけてくる。
「昨日、さんざん取引したからな」
「いい素材アイテムがあったら、こっちで加工してあげるよ」
「助かる。そんときは、よろしく頼む」
「あいよ。気を付けてな」
鍛冶屋と別れて、オレはポータルへ。
まだ初期ダンジョンしか行けないが、どの冒険者もそうだ。
最初は、初期の低レベルダンジョン帯しか入れない。強い仲間がいても、一人でも低レベルの人物がいると、その人物が基準になってしまう。
『パワーレベリング』防止のためだ。パワーレベリングとは、弱い仲間が強い冒険者に釣れられて、高レベルダンジョンで効率よくレベルを上げる行為を言う。
パワーレベリングなどを許せば、高レベルの冒険者ばかりになってしまう。また強い冒険者さえいれば、ハイレベルなダンジョンが安全とも限らない。
「ミツル、地球の街を見てもさ、異世界のマジックアイテムってないね」
「地球はお前さんの世界と違って、【魔素】がないからなんだと」
異世界のアイテムを行使するには、魔素が不可欠となる。
だがあいにく、地球には魔素自体がない。
異世界で拾ったものは、鉄製のナイフ一本とっても、ガラクタにしかならないのだ。
必然的に、異世界の住民に売りつけるしか、選択肢はなくなる。しかも、高い関税付きで。
その割高感から、地球からの冒険者はみるみる目減りしていった。苦労の割に、採算が取れないから。
『これは、双国の戦略ともいう説もございます』
キナ子が、話を引き継いだ。
「なまじ一般人にダンジョンを開放しようものなら、あっという間にアイテムを売りさばかれて、異世界グッズの価値が下がっちゃう。こちらの文化も異世界に流れすぎて、またそちらも価値を失う危険があるのよね」
とは、マリエの弁だ。
それでも、エピック以上のアイテムが手に入れば、一攫千金は夢ではない。
税金でごっそり持っていかれたとしても、オツリが来る。
そのため、未だに危険なダンジョンへ足を運ぶ連中は少なくないそうな。
「オレも似たようなもんか。よし、気合い入れていくぞ」
「おーっ」
オレたちは、ギルドにある円形のポータル床に立った。
「こちらは車で、キナ子のコンディションチェックとデータ取りをするわ。みんな、気をつけてね」
「ああ。行ってくるよ、マリエ」
「帰ったら、ちゅ~してあげる」
オレは苦笑して、ポータルを起動させた。
数秒もしないうちに、ダンジョンへ。
初級ダンジョンに、到着した。
「荒らされている形跡は、ないな」
【ボルケーノベア】なんて、現れたからな。もっと荒廃していると思っていたが。
「ダンジョンは、一晩で形が変わる。けど、根本的な形状は基本的に変わらないよ」
ランダム生成とはいえ、コアが無事なら荒らされる形跡はないという。
「スライムが来たぞ」
相変わらず、ファンシーな姿が。ボルケーノベアの死体を食ったからか、より数を増している。
モンスターの死体が消えるのは、スライムが全部食っているためだという。
冒険者の死体も、スライムが処理しているのだ。高等なダンジョンには、死んだ冒険者を食らって強くなったスライムがいる。
「まずは、ああいうので慣らしていこう」
スライムを的にして、魔法を打ち込む。
【アイスアロー】だけではなく、【アイスボール】という攻撃を放つ。
「おっ敵が固まった」
スライムが、アイスボールを受けて凍った。
『参ります』
すかさずキナ子が前に出て、凍ったスライムを殴り飛ばす。
スライムが、砕け散った。
『こういう攻撃法で、よろしいのでしょうか?』
「そうだね。色々と使い分けて」
スライムやゾンビを相手に、凍らせて殴るを繰り返す。
「なんだ、今日は? 大漁じゃないか」
素材のドロップが、いい感じだ。
「『レアの【金属素材】を、二個手に入れろ』って依頼があったんだが、こんな初級でクリアできるなんて」
ホントはもっと、高レベル帯のダンジョンで引き受ける依頼だ。それこそ、ボルケーノベアがでてくるような場所で。
「こんな最序盤から、クリアできるとはねえ」
『どこかでスライムが、レアアイテムを食らったのでしょう』
レア以上のアイテムは、敵がドロップした後はすぐに回収したほうがいい。
低級モンスターが、レアアイテムを魔素ごと食ってしまうからだ。
その分、レアを食ったスライムも、いい素材を落とす。
宝箱に入っているものは、確定でドロップできたりもするが。
「もう一つ、【サンダーシード】が手に入ったぜ」
素早さを上げるため、【皮の手甲】にはめ込んだ。
「ミツル、スキルはいいの?」
「おお、そうだった」
オレはボルケーノべアとの戦いで、大幅レベルアップしたんだっけ。
今のオレは、魔法使いスタイルだ。現在、オレのレベルは【一五】ほどである。しかし、魔法使いのビルドは軒並み【一】である。初級魔法を打てる程度だ。
「おーい、キナ子。ちょっと、ザコ掃除を頼む」
ロニにビルドの相談をしている間、キナ子にはレベルアップついでに戦ってもらう。
キナ子のレベリングにも、ちょうどいいはずだ。
コウモリやゴブリンなどを、キナ子が蹴散らしていく。
「では先生、ビルドのお手本をお願いします」
オレは大げさに、ロニに頼んでみた。
「大げさな……」
ロニも、肩を竦める。




