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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第二章 FIRE失敗民、異世界地元民の少女を母親と和解させる

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第12話 助手 ロニ誕生

 ロニを雇う目処が立ったので、オレたちはロニの母親に会いに行くことに。


 泊まっていけ行けと言われたので、 ソファで寝させてもらう。さすがに人んちのベッドで寝るのは、なんだかと思ったからである。



「おう。よく寝られたか?」

 

 ロニの気配がしたので、オレは起き上がる。


 マリエとロニは、おそろいのルームウェアで現れた。


 ただ、胸のサイズはロニのほうが上である。


「なにか言いたそうね?」

 

 マリエが、胸の前で腕を組む。


「別に。メシにしよう」


 朝食は、キナ子が作った。白米と味噌汁、ハムエッグである。


「いただきます。スクランブルなんだな?」


「ウチは、ずっとこれよ。目玉焼きに醤油かソースなんて、しょうもないケンカをしたくないからよ」


 たしかに。目玉焼きだろうがスクランブルだろうが、玉子は変わらず、うまい。


「リクエストがあったら、今後はあたしが朝食作るわよ。キナ子は、冒険者にもなるんだし。あたしたちはもう夫婦だから、人の手が入った料理も食べたいわよね?」


 オレは、首を振った。


「いいよ。誰が作るとかゴミ出し当番は誰だとかは、今後二人でルール化しよう」


 今は、「メシを夫婦間のどっちが専属にするか」なんて時代じゃない。


 何もかもロボット任せにしないマリエだから、オレも添い遂げようと思った。

 交際ゼロ婚だけど。


「ありがとう、ミツル」


 マリエは、ロニにも話を振った。


「ロニちゃん、朝はパンのほうがよかったとかあるかしら?」


 いつも気まぐれで、マリエは当日の朝食を決めるらしい。

 

「平気。何が出ても、おいしい。ありがとう、マリエ。キナ子も」


『お褒めに預かり、後衛でございます。レディ・ロニ』


 キナ子が頭を下げる。今日は、下半身がストレッチャーではない。人間と同じ、二本足である。さすがに車輪では、段差のあるダンジョン攻略は難しい。また、足型移動機構の訓練も兼ねているそうだ。


「いえいえ。ロニちゃんは、大切な経理ですもの」


 ロニは、「マリエの家に住み込む、経理係」ということになった。

 

 これなら、商家の娘というスキルを活かせる。


 ロニの住む異世界の計算は、こちらと対して変わらない。


「なにからなにまで、お世話になります」


「いやあ。どんぶり勘定から卒業できるから、こちらとしてもありがたいわ」


 コツコツ積立ができるくらいだから、マリエだって経理くらいはできる。

 しかし研究に没頭しすぎて、予算オーバーを起こしてもおかしくはない。


 キナ子らドロイドに任せてもいいが、あくまでも地球ルールの経理だけ。

 異世界で発生した予算や経費のチェックは、ロニが担当したほうがいいだろう。


 とはいえメインは、あくまでもオレの魔法指導である。


「ミツルの魔法レクチャーの料金も、あたしが払うわね」


「いいのか?」


 オレはちゃんと、仕事として頼もうと考えていたが。


「それくらい、いいわよ。アンタにキナ子のトレーナーになってもらうんだから」


 ドロイドであるキナ子も、冒険者パーティに加わった。


「冒険に同行する際に生じた装備品や報酬などは、ロニちゃん持ちでいいわ。ただし、気をつけてね」


「はい。税金だよね」


 異世界からの商品持込み、及び逆に異世界人の地球での商取引には、だいたい双方一〇%の関税がかかる。

 これは、冒険者にも当てはまるのだ。


 例えば、ダンジョンでアイテムを手に入れて売ろうとしても、異世界側が税金をかけてくる。


 反対に、異世界側の店舗も、アイテムをやや高額で取り引きしなければならない。地球側が関税をかけているからだ。

 

 なので、店売り商品は割高になる。売値は元値になるので、買い叩かれちまう。


 だからオレは、鍛冶屋で物々交換に近い取引をメインにしているのだ。


「なんでそんなに、税金かかるんだろうな?」


「簡単にダンジョンに、入れなくするためよ」


 最初こそ、異世界にダンジョンができたとき、こぞってダンジョンに群がってきた。

「関税掛けますよ」

 の一言で、その騒動は一気に縮小してしまう。


 ときの権力者は失脚したが、「異世界のことを考えたら英断だったかも知れない」との声もある。


 たしかに関税は、ダンジョンへの抑制効果をもたらしていた。


「自由ダンジョン攻略!」「自由経済!」「発展!」と、まだ謳う輩も多いが。

 

「あのまま無税で進めていたら、一攫千金を狙った冒険者が、異世界にドッと押し寄せてくるわよ。同じように向こうの商人も、マジックアイテムを大量に売りつけに来るわ」


 地球からすれば、異世界はあくまでも「海外」なのである。

 

 鍛冶屋のラインナップにあまり高価な品物がないのは、こういう背景があるわけだ。

 高価なアイテムは、売るより自分で持って使うほうがマシなのである。とはいえ、自国に持ち込めないと来たもんだ。日本に持ち込むと、銃刀法違反になるから。

 

 そのため鍛冶屋には、必要最低限の装備品しかない。高価なアイテムを揃えても、税金が高すぎて手に入らない。


「めんどくせえなあ」


「その分、どっちも潤うからいいのよ。関税って、そういうためのものだから。個人同士の取引ならクソだけど、国同士ならウィンウィンってわけよ」


 税金を徴収しなければ、冒険者ギルドも機能せず、無料でダンジョンになど入れないのだ。


 冒険者登録はパスポートであり、就労ビザでもある。


 オレたち冒険者は、異世界に「働きに」行っているのだ。


「そうか。だから、違法ダンジョンなんてもんが」


「かもしれないわね。違法ダンジョンで冒険者を募って、自分たちだけ潤いましょうって魂胆なんでしょうね」


 法律がまだまともに機能していないうちに、自分たちの根城を開発してやろうぜ、ってわけか。

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