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世界にダンジョンができたせいでセミリタイアに失敗した男、冒険者になって無双  作者: 椎名 富比路
第二章 FIRE失敗民、異世界地元民の少女を母親と和解させる

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第11話 あこがれの人はどこへ?

 オレが言うと、ロニは絶望感を表に出す。

 

「ウソ」


「正確には、ヒガンの力を失った」


「ゲームのアカウントがなくなったため、データが消失した」なんて言っても、ロニには意味がわからないだろう。


 なので、「ヒガンとしての能力をロストした」ということにした。


 オレも名残惜しいが、運営の都合なら仕方がない。


「でもヒガンって、ミツルなんでしょ?」


「ああ。だが、今のオレはヒガンじゃない」


 オレは、ロニからナゲットをもらう。


「戦い方は、ヒガンに近かったよ。必要最低限の力で、最大限の成果を出す感じは」


 それは、うれしいな。そう言ってもらえるのは。


「とはいえ、オレはもうヒガンほどは強くない。一から鍛え直しになる」


 だから、魔法のレクチャーの提案も、すぐに賛成した。

 

「運営の方にも、ヒガンの強さを取り戻せないかって、掛け合ってみるわ。アンタには、ゲームの頃から世話になったものね」


「ありがたい。頼むよ、マリエ」


【フュージョン・ワールド】は、現実ともシンクロしている可能性が高い。

 ならば、ヒガンのデータだってきっと取り戻せるはず。

 望みは薄い。しかし、やってみる価値はあるだろう。


「ヒガンより強くなるには、魔法の習得は必要だな。だから、ロニをコンパニオンにはしたいと思っている」


「私でよかったら、力になるよ」

 

「助かる」


 オレとしては冒険の同行より、指導員として採用したいのだが。


 ロニ自身は、冒険に出たがるだろうな。


 ムダに高い正義感や、どこから湧き上がるのか不明な責任感が、彼女を掻き立てている。


「ホントに、ここに住んでいいの?」


「交渉次第よ。ロニちゃんがお母さんを説得できなかったら、この話は流れるわね」


 マリエが、ギョーザをつまむ。


 ロニも、マネをする。うまかったのか、目を見開いてイスから飛び上がりそうになっていた。

 

「あたしも、ロニちゃんがよければ、ここを提供してもいいわ。話し相手も欲しかったし」


「そうか。ありがとうな」


 オレは、ラーメンをすする。


「何を言ってんのよ。アンタも、うちに来るのよ?」


 ラーメンをすする手を、オレは止めた。


「オレが? どうして?」


「結婚するじゃん」


「え」 


 あの話、マジだったのか。

 冗談だと、思っていたんだけどな。


「ロニちゃんの件が片付いたら、次はアンタだから。役所についてきてよ」


 おおう。どうやら、本当のようだ。


「一度だけ聞くわ。嫌だったら言ってちょうだい。あきらめるから」


 オレは、マリエに腰を折る。


「よろしくお願いします」


「それは、好きと捉えても?」


「マリエとオレでは、絶対釣り合わないって思っていたから、オレのほうが萎縮してた」


 こんなに思ってくれている人を、ほうってはおけない。


 実際、ロニが冒険者になるなら、住む場所も必要である。

 図々しい言い方になってしまうけど、ここならと思ってしまった。


「私、ここにいたい! 地球に住みたい!」


 まるで都会に出たいという田舎少女みたいなことを、ロニは言う。

 

「それは、ギョーザがうまかったからか?」


「それもある。でも、ここで暮らしたい」


「親と離れ離れになるぞ」


「いいよ。お母さんはずっと仕事で忙しいし。ネグレクトとかはないよ。こっちが、負担になりたくないんだ」


 母は仕事人間らしく、妊娠中も業務を続行していた。

 そのせいで、家庭にいてほしかった夫と衝突が絶えなかったらしい。

 結局、まだ物心ついていないロニを置いて、出ていってしまったという。

 

「お母さんを安心させたいのね。だったら、なおさらまともに説得する必要があるわよ。すれ違ったままでは、ダメね」


「わかってる。でも、私が誘拐された過去があるから、どうしても過保護気味になっちゃってさ」


 どうも母親は、ロニの誘拐は自分の落ち度だと、責任を感じているようなのだ。


「じゃあ、自立することは賛成されても、冒険者になることを反対されそうなんだな?」


「かもしれない」


 弱ったな。


 モソモソと、テーブルに咀嚼音だけが響く。


「マリエ。オレもピザ、もらっていいか?」


「どうぞ」


 マルゲリータに手をつけ、かじった。まだ温かいため、チーズがにょーんと伸びる。


「それ面白い。私の世界でも地球に似せた料理を作っているけど、そこまで再現度は高くない。びろーんって伸びるチーズなんて、向こうでは珍しいよ」


「そうか? 日本が特殊すぎるだけだ」


 日本の食文化自体が、世界でも珍しい。本場イタリアのピザ屋にはカトラリーがあり、手づかみでは食わないらしい。チーズも、そこまで伸びないって聞く。

 

「そのうち、お前さんの世界にも電話が普及して、デリが流行るようになるさ」


 オレがロニに、語りかけていたときだ。

 

「……それよ!」


「あああああ!」と言いながら、マリエが頭を抱える。


「あたしの、おバカ! すん、っげえ簡単だったわ。なにが最強の在宅ワーカーよ? アホすぎるわね。単純なことを思いつかないなんて」


「どうしたんだよ、マリエ。いきなり?」


「ロニちゃんが、こっちにいられる超絶簡単な方法を、思いついたのよ」


「どうやって?」

 

「地球で仕事を見つけたことにすればいいのよ」

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