第44話 天の川の河底で②
銃片手に木の裏に隠れる。車から20mといったところだろうか。
しばらくすると足音が3つ。
ちらりとのぞき込む。スーツの男が3人。胸元には例のエンブレム。やはり時衛隊だ。
先駆けが足音立てないようゆっくり車に近づく。既にばれているというのに。忍ぶのであればもう少し手前からやるべきだった。
私は後続の二人に照準を合わせる。パシュっと小さな音が2つ。直後、二人は膝から倒れた。
先駆けは慌てて車の陰に隠れる。といっても、車の左側、私に丸見えの位置だ。呆れながら照準を合わせると、車の扉が突然開く。思わず「は?」と声が漏れた。
中から飛び出したのはタイガだった。そのままとびかかり先駆けを抑えつけた。
呆れながらも私は車に近づく。
「あの……タイガさん。何してんの?」
「少しでも力になろうと思って。たぶん手錠を持ってるはずだ。拘束して話を聞き出そう」
彼の言葉を無視して隊員の顎を蹴飛ばす。抵抗する気配はなくそのまま倒れ込んだ。
「どうせこいつらは口を割らない。やるだけ時間の無駄だよ。それよりいい考えを思いつきました。手伝ってください」
私たちは眠った隊員たちのズボンをまさぐる。彼の言うように手錠が出てきた。とりあえず三人を背中合わせにして腕をつないでおいた。起きたとしてもこれなら逃げられまい。
続いて通信機と拳銃をタイガに渡す。つけるよう指示すると何も疑うことなく着けてくれた。私も真似るように着ける。
「よしっ」
そう言いながら私は隊員1人の頬をたたいた。起きるまで何度も。
慌ててタイガが寄ってくる。
「な、何をしてるんだ」
「言ったでしょう作戦です。あ、起きた。おはようございます」
「な、お前ら!」
隊員はわめきながら手足を必死に動かす。当然無駄なあがきに過ぎないのだが。その様子は見ていて実に滑稽だった。
だが、いつまでも見ているわけにはいかない。黙るのを待てず私は足元に銃口を向けて引き金を引く。
目の前の男は目を丸くして固まった。
「隊員さん一度しか言わないのでよく聞いてください。次私が銃を撃ったらあなたには通信機で山にいる人たちへ伝えてほしいことがあります。1つ。あなたが銃を持った少女とバイクで逃亡しようとした男を殺したこと。2つ。そのあとタイガさんとその姉を拘束したこと。ちなみに、もしあなたが通信機で余計なことをしゃべったらあなたを本当に撃ちます」
耳についた通信機と銃見せつけながら淡々と告げる。
きちんと理解してくれただろうか。まあとりあえず次を撃たないことには始まらない。
ひとまず銃口を空に向けて一発。甲高い花火のような音が空に舞う。
隊員を睨みつけながら通信機をオンにする。震えた声だが言われた通り喋り始めた。私は銃を下ろし笑顔を送る。
「よかった殺さずに済んで。お兄ちゃんに怒られちゃうからね」
向こうの人がご丁寧に復唱してくれたのも聞こえた。おそらくお兄ちゃんも違和感に気が付くだろう。
私はバイクに駆け寄りエンジンをかける。追うようにタイガも駆け寄ってきた。
「ど、どこに行くんだい」
「挟み撃ちをしに」
「挟み撃ち?」
「うん。今の通信でお兄ちゃんに私が無事だってことは伝わったし、それはつまり挟み撃ちが失敗してることの何よりの証拠になる。安心してお兄ちゃんは戦えるってわけ」
タイガは驚いたようにこちらを見てくる。彼の開いた口が塞がらない。
「反対側に回ってこっちが挟み撃ちにしてやろうと思って、ついでにお兄ちゃん脅かしてやる」
しかし、私の考えなど知らないと言わんばかりに、ホログラムが私を覆う。自動運転用のパイロット。
「こっちに来いと言ってる。もしかして……案外あっちはやばめなのかな?ていうか、これじゃあ脅かせないじゃん」
私は諦めて後ろのシートに移る。
「タイガさん、そこの隊員さんたちちゃんと見張っといてね」
変わらず口を開いたままのタイガ。見ていて心配になる。
バイクは私の気など知らずに走り始める。ルートからして、お兄ちゃんも挟み撃ちを狙っているらしい。お兄ちゃんと思考の重なりを感じてうれしかった。




