5・夕食
作品をつくって、少し移動すると、また作品をつくって……。
その後の成果はこんなものだった。ろくに進まずに、夕方を迎えてしまった。が、当人達からすればいいものが出来上がったので、十分に満足しているようだ。ロウ一人の時も大体こんな感じなので、特に反省はしない。
夜を過ごす場面を探し出すと、森で亥豚を見つけたので、急きょ夕食のメインに当てることにした。ロウは現れた黒い影が亥豚であると判断するや否や、太刀を抜いた。刻みつけられた傷に、亥豚は、驚いた様が手に取るように分かるような声を上げた。覚束ぬ足取りで森の奥へと走り去っていく。
亥豚を追う際。何もせずロウの荷物の葛籠の上で足をバタバタさせるプールに目が止まると、声を発した。お前も火を起こすとか、何かしたらどうだ、と。
「あたしは荷物を見守る番頭役だから」
「……」
「そんなつれない顔しないでよ。きっちり役目は果たすからさ。『ギャー! 助けて―! おじさーん!』って」
あくまで待機の姿勢でいくつもりらしい。呆れてものも言えなかった。
ロウが目を付けた獲物は、意外と大物だった。足を縄で縛りあげ、かついで持ち帰ると、爛々とした目を向けたプールが待っていた。
「くあーっ! かっちょいい! こういう時は、おじさんみたいな強い人にくっついてきてよかったと思うよ。食糧確保に事欠かない!」
「草をかじる場面もままあるが……」
「ささ、早いとこ火をつけてよ! 肉! 肉!」
どうやらその目は、ロウでなく亥豚に向けられたものだったようだ。
ロウは周辺に枝が落ちていないか探した。その間、プールは持ち込んできた荷物を広げた。
「握り飯持ってきたけど食べる? 数は少ないけど」
「遠慮しておく。余裕があるうち、とっておいた方がいい」
「旅を首尾よく続ける知恵? じゃああたしも、半分食べるだけにしておこうかな。煮物はどう? 小豆とカボチャのやつ。小豆ばっかりだけど、味がしみ込んでるから柔らかくておいしいよ」
「それはもらおうか。確かにあの宿屋の煮物は美味かった」
「ふふっ、分かる大人は好きだよ」
プールは二ヤリとした。
集めた枝に炎が燃え上ると、提灯に負けず劣らずの赤を放った。肉を焼き、急須をかける。
「まだ?」、「……」という淡白なやり取りが、計十三回続いた。十四回目で、プールは限界に達し、豪快に肉にかぶりついた。恐らくまだ半生。しかしそこは意地で食らいついた。茶を飲み、続いて握り飯を頬張る。あんまり急ぐものだから、案の定のどに詰まらせる始末。胸を叩きながら、慌てて茶で流し込んだ。
結局握り飯は、丸々全部食べてしまった。
ロウは騒がしい娘だと呆れつつも、見ていて飽きがこないと、その様を静観していた。