「なんで作るかわからないものはうまく作れない」
さて次は17巻のセリフからです。
”じゃあ今ちょっとさ、ここで私を撮ってみてよ”
”え?なんで”
”いいからほら”
”は……はい……”
”どう?”
”あんまりうまく撮れませんでした”
”それはキミに「こういう写真にするぞ」っていう意図がないから。
今なんで写真を撮るかわからなかったでしょ?”
”これが「何で撮るか」がない写真といえるね”
”はあ…”
”パンケーキお待たせしましたー”
”うひょー”
”ほら奥村くんシャッターチャンス!”
”は……はい!”
”これが「なんで撮るか」がある写真。
わかる?”
”あれ?
パンケーキは?”
”今の場面は「何で撮るか」が経験的に明確だったから……?
モチーフが良かったといえばそれまでですが”
”おっ、鋭いね。
言語化も上手だあ”
”じゃあ今の写真は何を考えて撮った?”
”ほぼ無意識でしたけどあえて言葉にするなら……”
”美味しそうに食べるところが可愛いな……とおもったので”
”写真を見返したときに、その感情を想起できたり他人に見せたときに共感してもらえたり……
というのが「撮る理由」だったと思います”
(中略)
”まあ、そういうわけで作品には作者の意図が如実に反映されるのね。
「なんで作るかわからないものはうまく作れない」の”
”これは説明用の詭弁であまり本質ではないのだけども、重要なのは概念の全体像を捉えることだから”
このあたりのやり取りには続きがあるのですが、それはまた紹介するとして”写真を見返したときに、その感情を想起できたり他人に見せたときに共感してもらえたり…… というのが「撮る理由」だったと思います”という部分は”美味しそうに食べるところが可愛いな……とおもったので”を伝える物差しなわけですね。
個人的に映画、ラノベや漫画、アニメはカッコいい、可愛いやモテたい、愛されたいという感情を想起できたり他人に見せたときに共感してもらえたりための媒介の一つだと思うんですね。
なんでその作品で作者が何を伝えたいのかが、あらすじやタイトル、最初のつかみの導入部分で分かるというのが非常に大事になってくるんだと思います。
まあ、男性向けパーティ追放ざまあものみたいにやりすぎて、飽きられたジャンルもでてきてはいますけども。
少なくとも「誰が、どういった相手とどういうことをする話か」が分からないものには手を出せないでしょうしね。
結局、電子漫画で最初の何話かを無料で読めるようにするのは大正解ということだと思うし、現状のWEB小説サイトにおいては中身の想像つかない短文タイトルを読もうとするのは合わないかもしれないリスクが高いのでしょう。
まあ、私は80年代の星新一や新井素子から読書に入った口なので短文タイトルに対しての忌避感はないですが、これは作者がどういう作品を書いているかの事前情報があったからでもあると思うんですよね。