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プロローグ

プロローグ。


「おい、坊や! 俺はな......そろそろ永遠に眠りたいんだ」


火の神という男は、自分が誘拐した人間の少年に、今まで隠していた自分の目的を語った。

それは強制的に拉致されたあの日、少年が最も知りたかったことだった。

しかし、2年近い間、訓練を受け、元の生活への未練が薄れ、もはや火の神が持っていた意図などどうでもいいものになっていた。

少年は彼の言葉を聞いてため息をついた。


「わかりましたから、食卓に座るのはやめてください」


それが少年が覚えている火の神、アクラの最後の姿だった。




未だ衰えぬ回転の熱に舞い、羽根が降り立ったのは、殺伐とした血の戦いが終わったばかりの血に染まった灰色の大地。

群れ一匹も埋もれなかったその崇高な地は今、血に染まり、赤みを帯びていた。

翼とハローを失い、冷たく冷め始めた天使たちの死体が散乱する荒野。

まだ目を閉じていない死者の視線が向く方向には、誰かが鉄格子で手を縛られたままひざまずき、審判を待っている。

彼は女神の啓示を受けた天使たちが審判のために集まった理由。


罪人である。


戦いの先陣を切った天使長たちに囲まれた罪人は、片翼を失い、怒りに取り憑かれたある赤い鎧の天使長によって処刑される瞬間を静かに待っていた。

処刑人を名乗るその天使長は、自分が崇拝する神の加護を受けた斧を振りかざした。

光り輝く神聖な光を放ち始める斧の刃。

それは処刑の始まりを告げる合図だった。

目の前の罪人を処刑する準備が整ったのは長い。

振り下ろされる斧に迷いはなかった。

しかし、降伏に同意し、素直に処刑を受け入れようとした罪人は、一瞬の隙に頭を上げて天使長の一撃をかわした。

回避された一撃は鉄甲に当たり、清らかな鉄の音を立てて鉄甲をきれいに真っ二つに割った。

それを見た天使長とその配下の天使たちは愕然とした。

神聖な力を注ぎ込んだ光の鎧は、罪人の動きだけでなく、他の能力も封印する。

幾多の犠牲を払ってようやく罪人を封印したものの、先ほど外れた天使長の一撃により半分に割れると同時に抑制力を失ったからだ。


「ふざけんなよ、わがままにも程があるんだ。 俺がどこでこんな力を欲して手に入れたと思ってるんだ、小物は神になる資格がないんだ、ふざけるなよ、鳩ども」


手に火の力を凝集させ、鉄の鎧を溶かしながら、やや攻撃的な口調で話す彼の顔には、今までに見たことのない怒りが滲み出ていた。


事実、天使の軍勢では神位の座に座る罪人を倒すことはできなかった。

そんな彼を天使たちが制圧できたのは、単純に罪人が自ら降伏したからだ。

罪人は神の力を与えられたばかりの人間である。

そのため、まだ色濃く残っている矮小な考え方が神聖な存在に危害を加えることに大きな罪悪感を感じ、自責の念を抱きながら降伏に応じたのだ。

しかし、そんな彼の態度が突然変わった。

どんな異変が起きたのかはわからないが、一つ確かなのは、戦闘が再開されそうな雰囲気であること。


望まぬ戦いを繰り返しながらも一度も敵意を示さなかった罪人が怒り狂うと、恐怖を感じた天使たちはすぐに戦闘態勢に入った。

罪人が虚空に手を伸ばすと、瞬く間に一本の剣が飛び出し、彼の敵を斬り裂くために殺伐とした刃を立てた。

再び繰り返されようとしている戦い。

長年の親友を失い、怒りに取り憑かれた赤鎧の天使長は、むしろ良かったと笑みを浮かべ、再び闘志を燃やした。

しかしその瞬間、空から降り注ぐ光の柱が彼らの間を切り裂き、戦いに強制的に終止符を打った。


「もう十分だ」


空いっぱいに響き渡る声。

目の前の天使たちとは比較にならないほど巨大な力を持つ存在たちを感じた罪人は、空を見つめながら警戒し始めた。

しかし、その声の出所をよく知っている天使と天使長たちは一斉に動きを止め、空から降りてくる存在に礼を尽くし、片膝をついて頭を下げた。

これに対し、闘志を燃やしていた赤い鎧の天使長も、素直に斧を下ろしてひざまずき、空から降りてくる存在に礼を尽くした。

大地に足を踏み入れた三人の女神の群れの真ん中に立った金髪の女神が前に出てきた。


「レンチウスよ、貴方は自分が得た力の重さを知っているか?」


自分の名を挙げて問いかける金髪の女神に、戦いを挑む意志を感じさせないので、罪人は剣を下ろした。


「どうして私の名前を...?」

「私の質問に答えずに質問に答えるとは......久しぶりの無礼だ。 貴殿が受け継いだその力は、一介の小物に過ぎない貴殿には、勿体ないほどの力だ。前大火の神が何を考えていたのかは知らないが、彼の独断的な選択により、この宇宙の秩序は崩れようとしているのだ」


レンティウスは彼女の言葉に反論しようとしたが、金髪の女神はそれを許さなかった。

彼女の指一本でレンティウスの口は正体不明の力によって固く閉ざされ、何の言葉も出せなかった。


「本来であれば、強引に貴殿の命を奪い、その権能を資格のある者に引き渡すつもりだったが......シャルフェル様の意見は違うようだ」


その瞬間、燦然とした強烈な光によって空が白光の虹に覆われ、再び誰かが降臨した。

聖なる光線と共に天に降臨したある女神の聖なる姿は、まるで祝福が具現化されたような形相であった。

彼女はシャルフェルと呼ばれる最高神。

本来は宇宙の外壁から流れを見守る立場に徹している彼女だが、こうして姿を現したのは、宇宙の歴史上、創造の時を除けば初めてのことだった。

彼女の登場に、今度は3人の女神を含む全員が片膝をついて敬意を表した。

シャルフェルとはこの世界にとって、その存在だけで祝福に等しい。

そんなシャルフェルの聖なる足音が触れた灰色の畑の天使たちの血と肉体は、みるみるうちに洗い流され、畑は元の姿を取り戻し始めた。

降り注がれた祝福に世界が感謝するのだろうか。

野原を走る風がシャルフェルを包み込みながら通り過ぎた。


「初対面ですね、レンティウス。私はシャルフェル、この宇宙を外壁から見守る存在。普段は彼らの選択を尊重するため介入しない方ですが......今回ばかりは私が介入する必要を感じました。アクラの選択が無視される姿は、あまり愉快ではありませんでしたからね」


三女神を追及するつもりで発した言葉ではありませんでしたが、シャルフェルの言葉に三女神は罪悪感に押しつぶされ、頭を下げました。


「アクラが選んだ人間があなたなのですね?エステラを秘めた魂を持つ人間を誘拐して訓練させ、こんなことをするとは......彼はいつも私を驚かせてくれますよ」


まだ体のあちこちに残る戦いの傷跡を見たシャルフェルがレンティウスに手を差し伸べると、服や体の傷が一瞬で治った。

世界の理屈を無視し、強制的な回復を強行する奇跡。

これもシャルフェルが下す祝福である。

そして彼女の祝福に直接さらされたレンチウスは、一瞬にして心が浄化され、先ほどまで燃え上がった憎しみはどこへやら。

怒りによって燃え上がったレンティウスの魂が落ち着くのを確認したシャルフェルは、安堵のため息をついた。

彼女がここに降臨したのは、実はこのためだった。

新たな神が自分に与えられた力の力を目覚めさせる時、その要因が憎しみであれば、その神は悪神になる可能性が高い。

今のレンティウスが持つ火の権能は、宇宙の存在に関わる繊細かつ強大な力。

このような力を持つ悪神が誕生すれば、世界はやがて崩壊するだろう。

そこでシャルフェルは、レンティウスを強制的に自分の祝福に触れさせ、それを防ぐために降臨したのだ。


「権能を受け継ぎ、神になってまだ一日も経っていない君にはよくわからないが......君が受け継いだその力は、単に火を操るだけの能力ではないのだ。どんなに肉体がその力を受け入れる準備ができていても、精神的にはまだ未熟な状態......彼らがあなたに危害を加え、権能を奪おうとしたのも理解できます。しかし、それは秩序の規律を破る行為。たとえ彼女たちの選択がどんなに合理的であったとしても、神との約束を破ることは許されません」


シャルフェルが神との約束を口にすると、レンチウスは前代火の神、アクラの言葉を思い出す。

アクラは生前、火の力を渡すのは自分との盟約だと強調していた。

あまりにいたずら好きな神であったため、ただの悪ふざけの言葉だと思っていたが、それがかなり大きな意味を持つ行為であったことに今更ながら気づいたレンティウスは、静かにうなずいた。


刹那の気づきが過ぎ去り、顔を上げたレンティウスの目にはシャルフェルがゆっくりと近づいてきていた。

シャルフェルの視線が交錯した瞬間、レンティウスは未知の力によって手足が強制的に固定されるのを感じた。

彼女はレンティウスに近づき、人差し指で彼の額をぐっと押さえた。

彼女の意図はわからないが、体が動かないので、レンティウスはただ、これから起こる状況に身を任せることにした。


「安心してください。私はこの状況を解決するために降臨したのですから。 これから私はあなたに試練を課すつもりです。 あなたが受け継いだその力は、秩序のために存在する力。 ですから、あなたはその力を得る資格を証明しなければなりません。 あなたが無事にこの試練を乗り越えれば、彼らもあなたを神として認めてくれるでしょう。 そうなれば、アクラとあなたの間に交わされた約束も守られ、誰も存在を消滅させられるような事態は避けられるはずです」


最高神は全知全能である以上、彼女の決定は絶対的なものだ。

彼女の意見に異議を唱えることはできても、逆らうことはできない。

これは宇宙の法則。

だからこそ、今の彼女の言葉は無条件に決まった絶対的な宣言なのだ。

したがって、シャルフェルの言葉に、三女神は誰も彼女の決定に文句を言わなかった。

そしてシャルフェルもそれを知っていたため、誰の意見も聞かなかった。


「これから最高神の権限で、あなたが持つ火の権能を封印します。 そしてあなたを別の世界に落とします。 そこで試練を乗り越え、あなたが神にふさわしい者であることを証明してください。権能は、試練を乗り越えるたびに、その力を少しずつ解放していくでしょう」


その瞬間、レンティウスの背後に巨大な白い魔法陣が広がり、やがて小さなサイズに収縮し、レンティウスのフィールドに染み込んでいった。

何も感じなかったが、制御されていなかった体内の熱が消えたことで、自分が受けた火の力が消滅したのだろうと推測できた。

どうせ欲しくなかった力だったのだから、惜しいとは全く思わなかった。

ただ、今彼を悩ませているのは、再び異世界での旅を始めなければならないという事実だ。

すでに一度異世界に拉致され、望まない訓練を受ける生活を強いられていたレンティウスは、再び異世界に送られることにうんざりしていた。

レンティウスは力を放棄し、ただ元の世界に戻りたいと思ったが、すでに先代の火の神にそれは不可能だと聞いていたので、吐き出そうとした質問を再び飲み込んだ。


「試練とは...どのようなことを言うのですか?」

「それは言えません。 あなたに与えられた試練は、意図された方法で乗り越えられれば何の意味もないのですから。 これはあなたのために秘密にしておくのです。 衡平性に反する試練は、彼女たちに納得してもらえないでしょう。 永劫の時を試練の呪縛の中で暮らしたくはないでしょう?」


計り知れない時間を苦しみの中で生きる自分の姿を想像したレンティウスは、ふと怯えながらうなずいた。


「じゃあ...もし...私が力に相応しい人間ではないと判断されたら、どうなるんですか?」

「あなたの体に封印された火の権能を奪われるでしょう。 権能が去った肉体がどうなるかは...あなたもよくご存じですよね?」


シャルフェルの問いに、レンティウスは自分に権能を渡し、一握りの灰となって消滅した火の神を思い浮かべた。


「さあ、では...あなたの旅に祝福がありますように...!」


シャルフェルの言葉が終わったその瞬間、レンティウスは速い速度で下に落下し始めた。

何の干渉も受けない落下が終わり、空気の抵抗を感じ始めるのは、それほど時間はかからなかった。

かろうじて目に飛び込んできたのは、空を彩る無数の星と、星団の中心で輝きを放つ一対の月。

異世界での新たな生活はすでに逆らえない運命であることを嘆きつつ、今度はもう少し平和な生活が待っていることを祈りながら、レンティウスは手にした剣を離さないように握りしめた。



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