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さてさて…

コスプレをしよう!と意気込んだのは良いが…


本当にいいのか?

勝手な事をして、上からお叱りを受けないだろうか…


アレベは、悶々としつつ…

数日は考えたままで、実行に移すことは無かった。


いつもの衣装に袖を通す。

漆黒のローブは、フードが付いており、すっぽりと長い蒼銀髪は、その中へと封じる。

顔もほとんど隠したままなので…

どこから見ても死神の洋装でしかない。

今日も決められた裁きが記された書物を手に、重たい足取りで、扉から一歩踏み出した。


しかし…裁きを下す瞬間、人間の悲痛な表情、この後の地獄への恐怖の顔を見てしまうと、やはり、ムクムクと思い付いた考えが、頭の片隅に持ち上がる。

我が…天使の姿なら、こんな顔を見る必要は無かったのでは…

死への恐怖はあるかも知れないが、天使が現れた場合、人は、夢か幻か…?なんて、フワリと思うだけだろう。

一方の死神は、現れただけで悲痛なる叫びを上げる事、間違い無しの存在だ。

もう、見た瞬間に終わりを悟る事になる。

抗ってみる者も、極たまに居るが…

もちろん、拳の一つも当たる事は無い。

八つ当たりしたいのも分かるが、悪いが、死神だから…な。


髪の毛は天使時代そのままだし…

白い服さえ着れば…それとなく見えるんでは無かろうか…しかも、死神特有のあの有名な大(がま)などは、持ち合わせていない。

他の死神が持っているのは見た事があるが、アレベは、書物片手に…というスタイルが気に入っている。

任務の最初から、それでやってきたので…

今更、大鎌を振って…なんてやりたくも無い。

書物片手に、白のローブに変えるだけで、事足りる。


アレベは、ツラツラと…自分に天使の真似が出来るであろう理由を並べ立てていった。


数日後…

「まぁ、怒られて、降格された所で…」

アレベは、どうやら…さほど困らないらしい。

いそいそと、真っ白のローブを、洋服棚の奥から引っ張り出している。

前職の天使時代に来ていた純白のローブ。

布先には、金糸の刺繍が入り、光が当たると反射し

、キラキラと輝く…

正に、天使の為の天使たる衣装。

何故そんな物が、まだ自分の手元にあったのが…

深く考えを巡らせ、何とか思い出そうとしたが、頭が痛くなり…さっさと止めた。


袖を通してみる。

鏡の前に立つと…どう見ても死神には見えない、完全なる天使が居た。


これがコスプレと言えるのか…ただ、元の職業の服を着ただけ。

まぁ、死神が見せかけだけでも天使になろうとしているのだから、やっぱりコスプレか?なんて、うんうんと納得していた。


ドキドキする胸を抑える。

こんなに心拍が上がるのは死神になってからは、初めてだ…

記憶には無い感覚に、思わず緊張した。


さて、行くとするか…

足取りは軽く…扉を開けた。



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