予期せず、天界へ戻る
突然の事だった…
毎日は続くと、昨日はまだ、思っていた。
しかし、今…目の前で…聖美は、他の死神に裁かれてしまった。
嘘だ…ろ?
倒れた聖美を凝視する。息を吹き返し、また笑顔を見れるのでは無いかって。
穴が空くほど見るが、瞼すらもピクリともしない。
彼の人生は突然閉じてしまった。
あと一歩…届かなかったという事。
呆然とするアレベを前に…
「アレベ様?あれ?どうしました?」
呑気な声をあげたのは、顔だけしか知らない、かなり低ランクの死神。
せっかく、具現化も肩まで…出来たのに。
最後は、アレベが裁くのだと思っていたのに。
その前に頭を撫でるつもりで、取り組んだ修行は、意味をなさなかったらしい。
何故だ?
なぜ?どうして?
ぐるぐると、疑問符だけが回る。
今朝も変わらず、アルバイトに行き、大学から帰って来てから、アレベと自分の分の食事を作る聖美。
唐揚げ久しぶりに作りますね…なんて言いながら台所に消えた。
バタンと大きな音がして、慌てて台所へと行くと…
既に、彼は息を引き取っていた。
あんまりだろ…
サヨナラも言ってない。
何の前触れも無かった。昨日の続きの今日があった筈なのに。
受け入れられない目の前のこと。
何にも悪いことなんて、していないのに。
アレベがずっと側に居たのに…意味が無かったというのか…
青白い光が聖美の身体から、するすると天へと昇った。導かれるように雲の隙間が開いて、それへ光の線が真っ直ぐに1本出来た。
ぼんやりとそれを眺めていると…
「仕事完了なんで、帰りますけど…アレベ様はどうされますか?」
なんて声を掛けられた。
此処には…もう、居ない聖美。
地獄へと送られたのだと気付いた。
アレベは立ち上がる。
あっという間に天界へと戻ると、とりあえず、死神鳥の所を尋ねた。
「どういう事ですか!!?」
怒りに声が震えているのが分かったが、止めるつもりは無い。
「おぉ、帰ってきたか…それがな…あの者は…どうやら元天使だったようだ。それが下界に落とされた理由が、少し特殊でなぁ…神の子らしいのだが、天使界も長く続くと腐敗するらしくてな。それを正そうとして…結果裏切られたらしいぞ…お前に」
「えっ?はっ?ちょっと待ってください!我がですか?」
「そうだ…アレベよ、お前は堕天使だろ?堕とされた理由は、覚えておらんのだろ?」
「はい…それは、まぁ」
まさか、自分が裏切った事で聖美が結果的に人間界へと堕とされたとは思っても無かった。
償いたい魂が、彼を追いかけたとでもいうのか…
理由は、分かったが、地獄に居るだろう聖美を追いかけなくては!と思った。
「すいません、急ぎます故、また」
後ろから死神鳥の止める声が聞こえたが、無視して地獄の門へと急ぎ向かった。
助かった、テッドが居た。
今日の門番は、彼というのは、本当に運が良い。
「悪い、少しだけでいい、中へ入らせてくれ!」
「はぁ?何だって…?本気か?そりゃ、見学程度なら…でも、危険には変わりないぜ?身の保証は出来ないが、良いのか?」
「友人が…間違えて裁かれてしまったのだ!頼む…どうしても、謝りたい」
必死の形相だったのだろう…テッドが、珍しく引いていた。なんなら、土下座でも何でもする気だったアレベの気持ちが伝わったらしい。
門番を開けてくれた
「恩に着る…本当に」
「気をつけろよ、ヤバい頭のイカれた鬼ばっかだからな」
覚悟は出来ている。
何としても…聖美を助けなくては。
そして、もう一度、あの笑顔を見たい。その思いがアレベを突き動かす。
トビラの向こう…暗く先の見えない洞窟へ、一方足を踏み入れた。




