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今朝は、品出しのアルバイトが無いと聞いて、アレベは…

今日は、大学なるものへ、ついて行こうと思ったのだ。


まだ死神鳥からの連絡は無いし、毎日待っているだけでは、なかなかに退屈で…

何か手がかりが見つかれば…と思うのも、ほんの少しだけは、あったが。

特別、この下界での生活が長引いても困る事は無さそうで、意外にも快適に暮らしている。

寝床もある、食べ物もある…

話し相手には、聖実が居て、彼は割と面白い事を言うし、ハッとするような真理を言う事もあり、人間界は、部屋から散歩に出れば新たな世界が広がり、特別退屈する事もなく、快適この上なく、のんびりと毎日を過ごしている。


むしろ、何故…ここに来たのかを、忘れてしまいそうな程…ここでの生活に馴染んでいっていた。


聖実の人の良さに、付け入り…利用する者が居るなら、追い払いたいというか…注意喚起をしてやりたかった。

それが、彼の為になるか、ならないかは不明だが。

大学について行けば、どんな風に外での生活を送ってるのか、分かるだろう。

万が一にも悪の道へ進むキッカケが転がっているのだとしたら、断固として修正してやりたい。


まぁ、ただ単に、アレベは心配なだけという事になるだろう。


「大学という場所を見てみたい」

アレベが言うと、聖実は

「面白いところでは無いかも…勉学の場ですから…何も説明とか出来ないですんですけど…それでも良かったら…」

言わんとすることは分かった。

他の人間には、アレベの姿は見えないから、話しかける事が出来ず、退屈するのではなかろうかと、心配してくれてるのだろう。

本当に優しい奴だと思った。

そう考えてすぐ、はたと気づいた。

家に居る時は、絶えず沢山の話をしてくれていた聖実の想いが、ハッキリと分かった。

それは、アレベがこの世界で退屈しないように、次々と会話を繰り広げていてくれたのだろう。



「姿は、消す故…聖実にも見えぬ…言わずについて行っても良かったが、それは盗み見するようで悪い気がしてな…」

ただ見学がしたかっただけだ…と言うと、納得したようで、それならどうぞどうぞ…という返事が返ってきた。


聖実が玄関を出ると、アレベもついて出た。


「ではな…」

一声かけると、集中する…姿を消す能力を発動させた。

キョロキョロとする聖実は

「アレベさ〜ん、あれ?もう先に行ったのかなぁ…」

「まだ居る、我の事は気にするな」

声だけを出した。

コクンと頷くと歩き出した彼に、アレベは付いて行った。


聖実は自転車に(またが)ると、足をグンと踏み込んだ。一気に加速し、風に乗って軽やかに漕いでいく。

木々の影が落ちる道路をスイスイと走る。

風を切るのを楽しむように走るその姿は爽快で、見ているアレベも、同じようにスピードに乗った。

浮遊したままのアレベは、障害物もお構い無しで、信号だろうが、街路樹だろうが…

はたまた、壁すらもすり抜けながら、付いて行った。


聖実の自転車のスピードがゆっくりになり…止まった。

沢山の自転車が並んでる所へ同じように停め、ガチャリと鍵をかけた。


樹々が両側からせり出した小道を歩く彼に、アレベもついて行った。

大きな建物が見える。

外壁はグレーに屋根は赤茶色で、いかにも学校です!と主張しているソレに、聖実は慣れたように入って行った。


「よぉ〜聖実!今朝は早いんだな」

「朝のバイトが無かったから」

気軽な感じで話しかけてきた髪の毛の明るい男に、聖実は、笑顔で対応してる。


「悪ぃんだけど…代返頼まれてくんね?」

「良いけど、授業は出た方が良いと思うよ?」

まぁまぁ〜、頼むなぁ〜って言いながら彼は瞬く間に去った。

聖実は来て早々に、用事ごとを頼まれ、快諾してしまう。

それを見て後ろでは苦い顔をしているアレベが居た。


扉を開け、広い教室内には、バラバラと散って数人が席に着いている。


「聖実〜こっち、こっち!」

黒髪を肩で揃えた可愛いらしい女の子が、呼んでいる

「ハナちゃん、おはよう」

聖実は、その女の子の横に座ると、リュックから、ノートや筆箱を取り出している。

並ぶ聖実とハナは、まるで女の子が二人居るみたいであった、改めて、聖実の性別は微妙で、男にも女にも、どちらにも見える。


教授らしき人物が、入って来て、出席を取り始めた。

聖実は、自分が呼ばれた時は、もちろん返事をしたが、違う名を呼ばれたのに、これにも返事をする。

横から小声で、ハナが怒ったような声を上げた

「アイツ、また、聖実に代返頼んだの?」

「うん、なんか、急いでたから…」

「急いでる風なだけだよ!聖実も、そんなの断りなよぉ!」

「うん、まぁ…そうなんだけど…ね」

苦笑いする聖実に、気の強そうなハナの組み合わせは、しっかり者の姉と、庇護の対象となるべき妹のようだった。


二人は、真面目に授業を聞いては、ノートにペンを走らせている。

授業が、面白くないのか、他の者は、寝ていたり、スマホを弄っていたり、授業では無い教科の本を開いていたり…と様々で、勉強する姿勢を取っているのは少数だった。

アレベも多数の生徒のように、聞いているうちに眠気に襲われ…浮遊したまま、寝始めてしまった。


静かになった事で目を覚ますと…

教室には、誰も居なくなり、教授が片付けをしているところだった。

もちろん、聖実とハナの姿も無い。

アレベは、取り残されたようで、ほんの少し心許なくなった。


2人を探しに行こうと教室から出た。



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