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今日は特別ね

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

まぁ、何時もこんな感じなので。

「……」

俺の前には椅子に腰掛けたまま、位の高い方の腹に惜しげも無く顔を埋める女がいた。いや、女と言うのも憚られる。○○歳児である。その○○歳児は顔を埋めたまま、全力で呼吸を繰り返し、延々と泣き言を話している。

「帰りたくないよぉ〜!! 暫く此処にいたいよぉ〜!!」

嗚咽に混じって、掃除機顔負けの『ずごー……ずごー……』という呼吸音は、泣いた振りして匂いを嗅ぐためなのでは無いかと思う。

「困ってんだろ。梅香の君が」

とりあえず首根っこを掴んで引っ剥がそうとするが、御前に巻き付いた腕が早々離れることも無く、しっかりと拘束していた。

さり気なく御様子を伺うと困り顔のまま、幼女と化した女の髪を撫でていた。

「……あと五分だけね。五分したら離れようね」

「厳しくしても良いんですよ」

「今日は特別ね。特別……」

興味のない相手はバッサリと切り捨てる方だが、身内にはとろける様に甘い。何だかんだで我儘を許し、したいようにさせて下さる。

まぁ、御本人がそう仰るならば、俺は何も言う事はない。

「梅香の君、何処へも行きませんか? また呼んで下さいますか? 突然消えるなんて事なさいませんか?」

「何処にも行かないし、会いたいと望んでくれるなら、傍に寄り添ってあげるよ」

そう仰って漸く名残惜しそうに腕を離した。いじけながらも約束は守る様で、渋々俺の横に立つ。


其れから相変わらず此奴は梅香の君の気配を感じとったらしく、また予定を立てていた。気配を感じ取ると一種のトランス状態になり、その後、幸そうな顔をしてリラックスをする。そう、この時までは。

「……」

来週、梅香の君の庭を訪れた彼奴は、ただ愕然と立ち竦んでいた。梅園の前には立ち塞がる様に存在するバリケード。工事が行われる事は明白だった。

梅香の君が『特別』と仰っていた言葉の意味。これだったのか……。

呆然と立ち竦ん此奴に掛ける言葉が分からず、お互いに無言が続いた。そんな気まずい雰囲気を変えたのは、やはりこの庭の主だった。

「……暫くはあの場所で抱き締めてあげられないから……。でも私は此処にいるし、出掛けても此処へ戻ってくるよ。だから心配しないでね」

そう仰って此奴の横に寄り添った。何時もは抱き着く此奴も、今は言葉を話さずに黙って梅香の君を見上げになっている。

「分かっていたのか?」

「ううん。でも……抱き着きたくなった。大切なものが無くなそうで」

「君はとても感が良いんだね」

其れから彼奴は、俺と梅香の君の袖を掴んだまま、暫くその場に佇んでいた。

へばりついて離れないのはまぁ、何時もの事なので。

それでも何だかんだでお許し下さる気がするのは私の甘えだと思います。


気が付くと全て始まっていて、気が付いた時にはもう遅いんですよ。

あの場所で微睡むことは暫く出来ないけれど、最後にあの場所に居れて良かったと思います。


関係ない話ですが、そうならない為に、今回は手始めに楔打っときました。

天秤に会えるのが楽しみです。

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