SideStory 浮気2
「いないって、そんなはずは」
「ごめん、もう一回見てきてもらってもいい?」
「はい」
頼まれた侍女は湯あみ場へ。
「あの、やっぱりいらっしゃらないですけど」
数人に声をかけたけれどいないと言われたと侍女は首を傾げた。
「マズい!」
「マジか、あれだろ、庭園だろ」
侍女達に愚痴くらい言いたいだろうと思っていたが、まさかいなくなるなんて。
「俺、ディーに連絡してくる。ユーイ、悪いけど聞き込みして」
「落ち着いていたけど、あれ怒ってたのか、マジか~」
わかりにくいと苦笑するユーイ。
手あたり次第、侍女達に声をかけたがミサキの場所を知る者は誰もいなかった。
「……バレなかったわね」
「護衛くん達も、侍女の姿だなんて思わなかったでしょうね」
脱出成功と笑う侍女達。
「さぁ、仕事をしましょう」
ミサキは侍女達に連れられ、レオナルドの昼食が載ったワゴンを引きながら執務室へ。
「……は? ミサキ? 何をやっている?」
困惑したレオナルド。
事情を話すと、補佐官チャールズは盛大な溜息をついた。
「今日ここにずっといればいい」
面白そうだと笑うレオナルド。
「うん、でもここだとルイスが来ると思うから、隣のルイスの部屋に居ようと思って」
ナタリーと一緒に掃除道具を持ってルイスの部屋に居ればバレないのではないかとミサキが言うと「確かに」とレオナルドは納得した。
「侍女姿も可愛いよ、ミサキ。ルイスがイヤになったなら俺にしておく?」
いつでも大歓迎だというレオナルド。
ミサキは「私でも侍女になれますか?」と笑った。
「ミサキ、はい、あーん」
レオナルドからマスカットを一粒貰って頬張る。
「おいしい」
そういえばお昼ご飯を食べていなかった。
食器をワゴンに片付けていると、廊下がバタバタと騒がしくなる。
侍女に「絶対に振り向かないで」と言われたミサキは指示に従い、後ろを向いて片付けるフリをした。
「レオ!」
バンッ! と開く扉にミサキの身体がビクッと揺れる。
「なんだ、ルイ? 慌ててどうした?」
まだ食事中だと苦笑するレオナルド。
「あぁ、悪い。ミサキを知らないか?」
「離宮だろ?」
「いないんだ」
「じゃぁ、侍女の談話室か、図書室か……」
「いなくなったんだ!」
護衛が見失ったと眉間にシワを寄せるルイス。
「いなくなったって、なぜですか?」
補佐官チャールズが首を傾げると、ルイスは手をギュッと握りしめた。
「……庭園でオルレイ王女と歩いているのを見たと」
「は? なんで王女と庭園?」
「オルレイ国王がどうしてもって、王女が会うのを楽しみにしていたと、」
断り切れなかったと言うルイスにレオナルドは溜息をついた。
「俺がミサキにフラれたのはバラ園が原因だと思っている。ルイスが離縁するなら俺がもう一度ミサキを口説くぞ」
「離縁するわけないだろう!」
「ルイがするつもりがなくたって、ミサキがイヤだと言ったら仕方ないだろう」
グッと言葉に詰まるルイス。
「と、とにかく、ミサキを見たら教えてくれ!」
食事中にすまないとルイスは慌てて走っていった。
「……案外、気づかないものだね」
「侍女の服を着ているはずがないという先入観でしょうね」
レオナルドとチャールズが笑いながら侍女服のミサキを見る。
「……離縁する?」
ニッコリ微笑むレオナルドに、ミサキは困った顔で微笑んだ。
補佐官チャールズにルイスはしばらくこのフロアには来ないだろうと言われたミサキは、隣のルイスの部屋で普通に過ごすことにした。
ナタリーが軽食を運び、紅茶も入れてくれる。
窓の外は段々暗くなっていく。
待ちつかれたミサキはルイスのベッドでいつの間にか眠ってしまった。
「……こんなに探しても見つからないなんて」
左手で顔を押さえるルイス。
「門は通っていないというから街には行っていないはずだけど」
何も持って行っていないし、行くところもないはずだとディーが慰める。
「何と言われようと、断れば良かった」
「……そうだね。ミサキが以前王宮を飛び出した理由を忘れていた」
ミサキの国では二人で歩く事も許されないのかもしれないというディーの言葉にルイスは目を伏せた。
再びレオナルドの執務室へ行き、「ここにはいない」と言われて落胆する。
「……ルイ、少し休憩しなよ」
「もう暗い。ミサキを早く見つけないと……」
「いいから休めって!」
ディーはルイスの執務室の扉を開け、ルイスを押し込んだ。
「……ルイ? 今日この部屋に来たのはいつが最後?」
奥の部屋に明かりがついているのを不審に思ったディーが何時に探しに来たかとルイスに尋ねる。
「王女が来る前にここで着替えたのが最後だから、朝9時頃か?」
そもそも奥の部屋には入っていないというルイス。
ルイスとディーは顔を見合わせた。
ゆっくり奥の部屋に入るとベッドの上でスヤスヤと眠るミサキ。
なぜか服装は侍女のお仕着せだ。
「……なるほどねぇ」
見つからないはずだとディーが笑う。
ルイスはミサキを抱えながら困った顔で微笑んだ。
翌朝、離宮のベッドでいつものように目を覚ましたミサキは驚いた。
隣にはルイス。
しっかりと抱えられて動けない。
見つけてくれたのかな……?
それともナタリーが居場所を教えたのかな?
ゆっくりと開く青い眼。
「おはよう、ミサキ」
「……おはよう、ルイス」
気まずく挨拶すると、ルイスはミサキをグッと引き寄せた。
「俺の愛情が足りなかったみたいですまない。今日は一日中、ミサキが満足するまで愛すから許してくれ」
息ができないほどの口づけに困惑するミサキ。
「え? ちょっとルイス?」
「お仕着せを脱がすのは少し背徳感があるな」
だが悪くないとルイスが笑う。
ボタンを外しながらミサキの白い首に吸い付き、ニヤリと笑った。
「も、もう許して」
「まだ足りない。俺にはミサキだけだ」
「わかった、わかったってばぁ」
夜まで愛され続けたミサキは気絶するように眠りについた。
「……本当に俺にはお前だけなのに」
そっとミサキの前髪を横に退ける。
王女に嫉妬してくれたのか?
嬉しいと言ったらまた怒るだろうか?
「愛しているよ、ミサキ」
ルイスはミサキに口づけすると細い身体を抱きしめながら眠りについた。
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