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王子の溺愛があったとしても、言葉が通じない異世界でドラゴン討伐なんて無理!  作者: 和泉


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45. 結婚

 手が不自由な事を理由に、ミサキがルイスの部屋で過ごす許可をディーは国王陛下にもらった。

 結婚までは手を出さないという約束をしたが、怪我をしているミサキに手を出す事は難しい。


 凱旋祝いの夜会は聖女ミサキがドレスを着ることができないため延期となった。


 3日後には王宮のすぐ横の離宮に引っ越し。

 ミサキの侍女はナタリー、護衛はジョン、ユーイ、ガイル、クレイグ、リッキー、マリウスにニックを入れた7人。

 ディーは引き続きルイスの補佐だ。


 医師免許を持つビルは元の所属、国王陛下付きの第一騎士団へ。

 妻帯者のレスターはレオナルド付きの第二騎士団へ戻った。


『え? 結婚?』

 何でそんなことに?

 絵本のとおりにするってこと?

 急にドレスの採寸があり、ウエディングドレスのデザイン画を見せられたミサキは、ルイスと結婚する事を知った。


 あんな大勢の前で私がルイスと一緒にいたいと手を取ったから断れなくなってしまったのだろう。


「ノー」

 片手でお祈りポーズをして教会は追い出されたからダメだと伝える。


『結婚したくないのか』

 落ち込むルイスにディーは『教会がイヤなんじゃない?』とフォローした。


 3ヶ月経ってもミサキの腕は使えるようにならなかった。

 背中は突っ張った感じが消えず、未だに仰向けで寝ることはできない。


『英雄と聖女がうちの店に!』

 王宮を飛び出した時に助けてくれたおじいさんとおばあさんの店にルイスと行ったら、泣きながら喜んでくれた。


『ミサキが世話になったな』

『と、と、とんでもない! 怪我を治してもらって感謝しています』

 おじいさんは綺麗に治った腕をルイスに見せながら嬉しそうに笑った後、温かいシチューを出してくれた。


 助けてくれた時と同じシチューの味だ。


「美味しい」

 ミサキがおじいさんに微笑むと、おじいさんもおばあさんも涙ぐんだ。


 英雄ルイスと聖女ミサキが街で気軽に買い物や食事を楽しむ姿は度々目撃された。

 英雄が聖女を溺愛していること、聖女が国のために右腕が使えなくなってしまったというウワサはどんどん国中に知れ渡っていく。

 すぐに王都から遠く離れた田舎街までウワサは届いた。


「キレイです」

 身支度を整えてくれたナタリーはまるで母のように目を潤ませ、そっと目元をハンカチで押さえた。


「ミサキ、可愛い」

 やっと結婚だと青い眼を細めて微笑むルイス。


『可愛すぎる』

『やっぱり俺と結婚しよう!』

『いやいや、俺だって!』

 いつもよりもキラキラが付いた服を着ている賑やかな騎士達と、補佐官ディー。

 

 傷が見えないように首までレースで覆われた純白のウェディングドレスを着たミサキと、白の正装をしたルイスは離宮から馬車で教会へと向かった。


 王宮でルイスの手を取ってから半年。

 あっという間に結婚式の日になってしまった。


 言葉も話せない、右手も使えず介助が必要な私を毎日優しくサポートしてくれるルイス。

 ワイワイ楽しく遊んでくれる騎士達。

 

 この世界に来て、なんでこんな辛い目に。と思ったことは何度もあるけれど、今は幸せになれそうな気がする。


「大丈夫か?」

 ドレスの重さで背中は痛くないか? と気遣ってくれるルイスにミサキは微笑んだ。


 ドラゴンを倒した英雄と聖女の結婚式。

 中に入れるのは王族と大臣だけだが、一目見ようと多くの貴族、街の人で教会の前は溢れかえった。


 結婚式はやっぱりあの追い出された教会だったが、エマたちの姿はなかった。

 数人の神官と教壇にいる教皇は見覚えがある。

 掃除をしている時にはなかったが、今日は赤い絨毯が敷かれていた。

 

 国王陛下やルイスのお父さん達、もちろんキラキラ王子のレオナルドも参列してくれている。

 

 ルイスに腰を支えられながらゆっくり歩くバージンロード。

 まさか自分にこんな日が来るなんて想像していなかった。


 何と言われているのかわからないけれど、きっと「病める時も健やかなる時も」みたいなありがたい言葉だろう。

 教皇の後ろには大きな女神のステンドグラス。

 きれいな光が差し込んでいる。


『では、誓いの口づけを』

 教皇の言葉でルイスはミサキの顔を覗き込んだ。


 ドレスが重く、すでに背中が痛いのでミサキは顔を上げることができない。

 ルイスが小さくなりミサキの高さに合わせた。


 突然覗き込んだルイスにミサキが驚く。

 腰を支えられ、手が顔に添えられたミサキは、誓いのキスだとようやく察した。


 そうか、こっちの結婚式でもキスはあるんだ。

 ルイスと初めてのキス。


 あんなに毎日世話をしてくれて、ずっと一緒の部屋にいるのに、一度もキスをされたことがない。


 だから結婚はしてくれるけれど、別に私の事が好きなわけではないのだろう。

 もしかしたら最初で最後のキスかもしれない。


『ミサキ、好きだ』

 ルイスの唇がそっとミサキに触れる。


 え? こっちの世界の結婚式はキスが長いの?

 軽いキスで終わるのかと思ったら、意外にキスが続く。


「ミサキ、愛している。ずっと俺の側に」

 囁かれる言葉と熱いキスにクラクラしそうだ。


「……は?」

 愛している?

 ちょっと待って。

 何でルイスの言葉がわかるの?


 キスの途中でミサキの驚いた声が響く。


「は? って何だ。今度は何だ? 結婚したくないって言ってもダメだぞ。離さないからな」

 誓いの口づけの最中に何だと言うルイスは泣き出したミサキの顔を見て慌てた。


「そ、そんなに口づけが嫌だったのか? 悪い、もうしない。嫌がることはもうしないから側にいてくれ」

 ミサキの涙を指で拭きながら困った顔をするルイス。


「聖女は結婚式の段取りを知らなかったのか?」

「言葉がわからないので伝える手段がなく」

 国王陛下の疑問にディーがすぐ答え、教皇も事前に説明はしなかったと答えた。


「……ルイス、私のこと好きなの?」

「当たり前だろう。好きじゃなきゃ結婚なんて……」

 途中まで答えたところでルイスも「は?」と止まる。


 今、ミサキの言葉が分かった気がする。

 そんなことあり得るのだろうか?


 ルイスはミサキの黒い眼をジッと見つめた。

 

「ミサキ、好きだ。愛している」

 ルイスの言葉を聞き、嬉しそうに頷くミサキ。


「私も、ルイスが好き」

 泣きながら答えるミサキにルイスは人目も憚らず熱い口づけをした。

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