40. イケメン
「部屋は余っているから準備しようか?」
眠ったミサキを普通に部屋に連れ込んだルイスにディーは笑いながら声をかけた。
この家は一人一部屋。
さらにまだ余っている部屋もある。
「急に1人部屋では驚くだろう」
起き上がる時に介助も必要だと言うルイス。
「はいはい、そういうことにしておく」
おやすみと言いながらニヤニヤ笑うディーにルイスは苦笑した。
ここはディーの父、騎士団長が所有する別邸。
ミサキを一人部屋にするには、ディーに頼んで本邸から侍女を一人借りてくるだけだ。
宿屋ではディーもいるので3人部屋だったが、ここはルイス一人の部屋。
この部屋に限らず、部屋に女性を連れ込むのは初めてだ。
ミサキの身の潔白のためには、連れ込んではいけない。
そうわかっているのに、別々の部屋になりたくなかった。
そっとベッドにうつ伏せで寝かせ、シュシュを取って頭を撫でる。
布団を掛けると、ルイスはシャワーへ行った。
ラフな部屋着にホッとする。
討伐中は眠る時でもピッタリの服を着ていたので、急に解放されたような不思議な感じがした。
「ディー、布団だけくれ」
「一緒に寝ないの?」
くすくす笑うディーに、ルイスはまだ湿っている頭をボリボリ掻く。
空き部屋から布団を取ると、今度こそおやすみとルイスとディーは別れた。
ふかふかベッド!
馬車に乗っていたはずなのに、知らないうちにふかふかベッドで寝ていたミサキは驚いて顔を上げた。
知らない部屋。
綺麗な壁紙、本棚、ベッド。
キョロキョロと見回したがルイスは居なかった。
左手で身体を支えてなんとか起き上がる。
ベッドから降りようとすると、下で眠っているルイスに驚いた。
な、なんでベッドの下?
どういうこと?
ディーは?
起こさないようにベッドから降りたつもりだったが、青い綺麗な眼がゆっくり開く。
「おはよう、ミサキ」
「お、おは、おはよう、ルイス」
ラフな姿のルイスは初めて見るが、はだけた服がセクシーすぎる。
これは犯罪レベル!
教会で見たキラキラ服、ドラゴン討伐中の黒い服以外は新鮮すぎて目のやり場に困る。
ミサキは、ルイスの色気に目を泳がせた。
起き上がるのを手伝わないといけないと言い訳しながら部屋に連れ込んだのに、ミサキは自分でベッドから起き上がってしまった。
部屋に連れ込む口実がなくなってしまったではないか。
困ったなと思いながらルイスは立ち上がり、ミサキの頬を優しく撫でた。
「……一緒、OK?」
一緒の部屋でいいか? って事だろうか?
よくわからないままミサキが頷くと、ルイスは嬉しそうに青い眼を細めて微笑んだ。
いやー、待って!
ずっと気づいていたけれど、気づかないふりをしていたけれど、ルイスってイケメンだよね?
最初はずっと怖い顔をしていて眉間にシワを寄せていたけれど、その時から整った顔だなとは思っていた。
途中から笑ってくれるようになって、やっぱり整ってるなって気づいていたけれど。
背も高くて、騎士だから逞しくて。
優しくて、面倒見が良くて、イケメン。
ズルいでしょ。
ルイスはミサキの髪を櫛で梳き、シュシュで結んでくれる。
慣れた手つきでボタンを外し、服の着替えも手伝ってくれる。
いや、サラシを巻いているっていっても恥ずかしいからね。
っていうか、慣れているよね。
こんなイケメン、女性達が放っておかないか。
テントよりも部屋の中で着替えさせてもらう方がなぜか恥ずかしい。
真っ赤な顔になりながら着替えを手伝ってもらい、靴下まで履かせてもらった。
ミサキの着替えが終わると、ルイスは豪快に上のシャツを脱いだ。
上半身が逞しい。
見てはいけない、見てはいけない!
でも見たい!
ミサキが目のやり場に困っているうちに、ルイスの着替えはあっさり終わる。
腰を抱かれて部屋から出ると、下の部屋から騎士達の笑い声が聞こえた。
あれ?
宿じゃない?
誰かの家?
大きなリビングっぽい所でラフな姿でくつろぐ騎士達。
食べ物も飲み物も自由に広げているし、ユーイ、リッキー、クレイグは床で寝ている。
「おはよう、ミサキ!」
『あ、これ酔っ払い』
近づいちゃダメだよとガイルが手で×を作る。
あ、酔いつぶれている。
クレイグの手にはワインの瓶。
テーブルの上にも数本載っていた。
『酔っぱらい?』
大学生みたいと笑うミサキ。
座っていたビルが立ち上がり、ミサキにソファーを譲った。
「ありがとう、ビル」
本を片手に窓際へ移動するビルにお礼を言うと、みんながお菓子やフルーツをミサキの前に置く。
「肉食え! 肉!」
『まーた、父親だよ』
ドッと笑う騎士達に囲まれながら、ゆっくりと一日を過ごした。
夕方になるとディーが40代くらいのおじさまと、料理人っぽい人、メイドさんのような服を着たお姉さんを連れて戻ってきた。
部屋で談笑していた騎士達が一斉にピシッと背筋を伸ばしお辞儀をする。
えっ?
偉い人が来たってこと?
状況がよくわからないミサキはびくびくしながら周りを眺めた。




