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王子の溺愛があったとしても、言葉が通じない異世界でドラゴン討伐なんて無理!  作者: 和泉


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23. 捕まる

「服がでかいな」

「かわいいでしょ」

 ディーのぶかぶかの服を着て食器を洗うミサキを眺めながら、ルイスとディーは今日の移動について相談した。


 ハイエナがまだいるかもしれないので、遠回りにはなるができるだけ草むらには入らないようにする。

 ミサキの歩幅も考慮して、今日はこの辺りでテントを張りたいとディーが地図を指差すとルイスは頷いた。


「みんなには、あの子は聖女だから討伐に連れていくと言ってある」

 簡単な単語しかわからないというのも昨晩伝えたと言うとルイスは「そうか」と気のない返事をした。


「……反対?」

 やっぱり連れて行きたくない? とディーが尋ねるとルイスは「危険だからな」と答えた。


 兄レオナルドの想い人に怪我をさせるわけにはいかない。

 早くミサキに会わせてレオナルドを安心させたい。


「今、あの子を王宮に返しても、あの子はまた辛くなると思うよ?」

「何か聞いたのか?」

「いや。何にも」

 ただそう思っただけだとディーが肩をすくめる。


「聖女の功績がなければ、あの子は王子妃になれない」

「……そうだな」

 ルイスは小さく座り込むミサキを見ながら溜息をついた。


 どうしよう。

 みんなが荷物をまとめている。

 たぶんもう移動するんだよね。


 パーカーもズボンも乾いていないと思うけど、この服を返さないといけないし、早くしないとテントが畳まれて着替えるところが無くなりそう。

 

 残ったテントはルイスのテントだけだ。


 テントの上の服を指差すと騎士の一人が取ってくれた。


 やっぱりまだ濡れている。

 でも濡れていても着るしかないよね。


 テントからルイスとディーが出てきたので、着替えたいとアピールしてみた。


『まだ濡れているけど、どうしたの?』

 首を傾げながらディーが悩む。


「服」

「いいよ」

 ディーはそのままでいいよとミサキが着ている服を指差した。


 この服くれるって解釈で合っているのかな?

 ペコリとお辞儀をして去ろうとするミサキ。


『待て!』

 ルイスに腕を掴まれたミサキは驚いて「ひゃっ」と声を上げた。


『こいつ、出て行く気だぞ?』

『まさか』

 ルイスの言葉に驚くディー。

 

 この服くれるんじゃなかったの?

 何で大きな声出したの?

 また怒ってる?

 

 泣きそうな顔でルイスを見上げたミサキは、着ている服と手に持っているパーカーを変える? と再びジェスチャーした。


「これ、OK」

 ディーが今着ている服を指差すとミサキはホッとした表情を見せた。


『一緒に行く』

 あー、何て言えばいいかなと悩むディー。


「行く」

 みんなで。みたいなイメージで騎士達をぐるっと指差したがミサキには伝わらない。


『んー、任せた! ルイ』

 ディーはミサキの手を取り、ルイスの手に乗せた。


「は? おい、ディー!」

『捕まえてて』

 騎士達に指示を出しあっという間にテントを畳み荷物を準備する。


 ディーはミサキの手から濡れた服をヒョイと取り上げると畳んだテントの上に括り付けた。


「はい、OK」

『OKじゃねぇよ』

 ミサキの手を掴んだまま文句を言うルイス。


 やっぱり怒っている?

 ミサキは掴まれた手をじっと見ながら、これ以上怒られないように大人しくすることにした。


 出発しても、なぜか掴んだ手は離されなかった。


 何で? 何で?

 逃げないように?


 わからないままみんなと歩く。

 途中で休憩をしたり、水を飲ませてくれたり、バナナのような木の実を取ってくれたが、いつの間にか手がまた捕まっている。


 なんでー?


『おい、ディー。困ってるぞ。代われ』

『アンジーに怒られたくないからパス』

 アンジーはディーの妻。

 確かに聖女とはいえ別の女性と手を繋いでいたと騎士の誰かがバラせば怒られるだろう。


『誰か他の奴に』

『恋仲になったらルイの兄上殿が怒るよ』

 レオナルド殿下の想い人であるミサキと騎士が恋仲になったら騎士が可哀想だ。

 お咎めは免れない。


『ね、ルイが適任』

 ディーがニッコリ微笑むとルイスの眉間にシワが寄った。


 また怒った顔。

 

 ……迷惑……だよね。

 急に汚い姿で現れて、言葉も話せない、何もできない女。

 自分でもいらないと思う。

 

 ミサキは繋いだ手とルイスの眉間のシワを交互に見た後、申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「ミサキ、OK。ルイス、ノー」

 ディーがミサキの両頬に手を置き、顔を上げさせる。

 気にしなくていいよって事だよね。


 ミサキは泣きそうな顔で微笑んだ。


『ほらー、ルイが怖い顔するから怯えたし』

 

 ミサキは言葉がわからないので周りの反応に敏感。

 不安でみんなの顔色ばかり窺い、聞きたいことがあっても言葉が出なくて我慢している。

 こんな子が今すぐ王宮に戻っても楽しく暮らせるわけがない。

 

 ディーはミサキの顔をゆっくり解放した。


 今、この子に必要なのは安心できる場所。

 頼りになって信用できる人物。


 レオナルド様には悪いけれど、ルイスが居場所になればいいと思っている。

 ドラゴンを倒した男と結婚ならルイスに権利があるはずだ。

 

『ルイ、聖女サマをよろしくね』

 指揮は任せてと言うディー。

 

 ルイスは綺麗な青空を見上げながら溜息をついた。

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