22. テント
何でこんなことに。
小さなテントの中にはルイスとディー。
二人に挟まれるような川の字で寝ることになってしまった状況にミサキは苦笑した。
これでも一応未婚のピチピチ18歳。
男性と一緒に寝る習慣はない。
しかも意外に密着。
外は危ないからテントの中にいろと言われた気がしたが、一緒に寝るとは聞いてない!
左を見れば金髪のルイス。
右を見れば茶髪のディー。
どちらもイケメンだ。
たぶん二人とも偉い人。
ルイスが一番偉くて、ディーがサポートしているように見えた。
騎士はあと8人。
みんな身体が大きくて普段から鍛えているのかなと思った。
『ルイ、やっぱり狭い』
向こうで寝るというディーをルイスが止めた。
『流石に二人きりはマズいだろう』
『レオナルド様の想い人と何かあるわけでもないでしょう』
このままでは寝返りも打てなくて身体が痛くなりそうだとディーは起き上がった。
「おやすみ、ミサキ」
ミサキの頭を撫でるとテントを出て行くディー。
『おいおい、待て、ディー!』
『信用してますよ』
ニッコリ微笑みながら出て行くディーにルイスは溜息をついた。
何でいなくなったの?
おやすみ?
え? じゃ、二人っきり?
不安そうに見上げるミサキと目が合ったルイスは気まずそうに「おやすみ」と言うと、クルッと反対を向きミサキに背中を向けた。
あ、気を使ってくれている。
大きい背中。
それに温かい。
もうディーがいないので少し離れればいいのに、ミサキはなんとなく人恋しくて密着したまま目を閉じた。
「……寝ているね」
「……マジか」
様子を見に来たディーが笑う。
自分がいなくなったときのまま、場所も変わらず眠ったようだ。
ルイスはなぜか反対を向いているけれど。
「女の子が飲まず食わずで4日間、林の中?」
よく生きていたねと苦笑するディーに、ルイスもそうだなと頷いた。
王宮から逃げた理由は聞いていない。
レオナルドは「すれ違いがあった」と言っていたが。
ふらふらで自分が今にも倒れそうなのにジョンを治してくれた娘。
レオナルドと喧嘩をしたとは考えにくい。
「まぁ、当初の予定通り聖女様と一緒にドラゴン討伐だと思えばいいでしょ」
ディーの任務はルイスを守ること。
聖女がいれば怪我をしても生存率がグッと上がる。
聖女には悪いけれど、同行してもらうよ。
寝顔はまだ幼い。
一体何歳なのだろうか?
「じゃ、今度こそ本当におやすみ」
「おい、俺はこのままか?」
ルイスの背中にぴったりとくっつくミサキの頭を撫でると、おやすみと出ていくディー。
ルイスは「マジかよ」と呟きながら溜息をついた。
翌朝、目が覚めたミサキは心臓が止まりそうなくらい驚いた。
「ご、ごめん、なさい」
ミサキはルイスにしっかりしがみついて眠っていたのだ。
ルイスは反対を向いたまま。
きっと一晩中寝返りも打てなくて困っただろう。
『よく眠れたか?』
起き上がり、自分の綺麗な金髪をクシャッとかきあげるルイス。
お前のせいで全然眠れなかったとでも言いそうな顔だ。
教会で初めて会った時の印象のせいかもしれないけれど、この人は少し怖い。
「おはよー」
いきなりテントの入口を開けるディーにルイスが苦笑する。
何にもないが、男女二人。
何かあるかもと疑う事もしないのか。
「おはよう、ミサキ」
「おはよう、ディー」
優しく頭を撫でた後、ディーはミサキにシャツとズボンを手渡した。
ルイスは立ち上がると何も言わずにスッとテントから出て行く。
「OK?」
テントの入口を閉めるディー。
え? これを着ていいよってこと?
ミサキは少し悩んだが有難く服を借りる事にした。
「大きい……」
ズボンは足首がキュッとなっているので下に擦ってしまうことはないがかなり足首で布が余っている。
ウエストが紐で良かった。
シャツも大きいので袖を何度も折り返した。
これはお父さんの服を借りた子供みたいに見えるかもしれない。
せめて彼シャツくらいのサイズだったら色気もあるのだろうけど。
パーカーとズボンを脱いだミサキはあまりの汚さに驚いた。
背中は木にもたれていたせいだろう。
背中はほぼ茶色。
ズボンのお尻もヒドイ。
こんなに汚かったの?
汚いパーカーとズボンを持ってテントを出ると、あまりのブカブカにディーは笑った。
「大きいね」
ここに来ている騎士はみんな身体が大きいのであまりサイズは変わらない。
ディーの服はこれでもまだ小さい方だ。
ルイスの服はもっと大きい。
『洗う?』
ディーがミサキの服を指差しながら洗濯っぽい動作をするとミサキは頷いた。
手を引っ張られ、ディーに連れてこられたのは川。
林の小川はここにつながっていたのかもしれない。
林から出る直前に小川はなくなり岩から水が湧き出る所になってしまったが。
バシャバシャと川の水で顔を洗うディー。
ミサキも真似をして顔を洗った。
「ありがとう」
タオルを差し出されたミサキが微笑むと、ディーは濡らした手で跳ねたミサキの髪を簡単に整えてくれた。
ずっと洗っていないので髪も身体も汚いのに。
ミサキが申し訳なさそうに見上げるとディーは優しく微笑んだ。
ディーもイケメン。
王子というよりもホストっぽい。
私にもわかるような簡単な単語でゆっくり話してくれる優しい人だ。
川にパーカーを入れると茶色い水が出た。
『うわ、汚い』
擦って濯いでも背中の茶色は取れなかった。
ズボンのお尻の茶色も。
樹液なのだろうか?
洗ってもほとんど綺麗にならなかった。
洗った服はディーがテントの上に干してくれる。
「ありがとう」
ミサキが微笑むと、ディーは優しくミサキの頭を撫でた。




