17. 共鳴
ここへ来て四日目。
今日も朝からたくさんの人が並んでくれた。
怪我をしていない人も並んでくれるようになり、握手をする人も出始めた。
やっぱりアイドルの握手会みたいな感じ?
行列が長くなってしまうので、神官が二人つくようになった。
一人はこれ以上並べませんと断る人。
もう一人は頂いたものを裏へ運んだり、間で休憩を挟んでくれるマネージャーみたいな感じの人だ。
目に見える傷の人は少ないが、みんな喜んで帰ってくれるので痛みがなくなっていると良いなと思う。
午後は礼拝堂の掃除。
何人もの神官が止めようとするが、ミサキはやりたいとアピールした。
邪魔かなと思ったが、夕食の支度をするリリルとメイリンを少しだけ手伝った。
皮むきや出来上がった料理を運ぶ程度だけれど。
最初は戸惑っていた二人だったが、ちょっとだけ打ち解けたと思う。
五日目の朝食は少し豪華になった。
食材が増えたのだろう。
パンとスープの他にサラダがついた。
午前は礼拝、午後は掃除。
うん。なんとなくここでやっていけそうな気がしてきた。
ミサキは入口の扉を拭きながら青空を見上げた。
礼拝堂の前に一台の立派な馬車が停止する。
真っ白な馬が二頭に豪華な装飾がついた馬車だ。
バタバタと神官達が走り、教皇様までやってきた。
『エマ、聖女様を』
『は、はい、教皇様。奥へ戻ります』
『いや、壁際で待たせてくれ』
エマはミサキを扉から離れさせ、壁際に立たせた。
『ここにいてください』
手で床を指差し、ここに居てと指示をする。
エマは雑巾を受け取り、急いで奥へ入った。
え? エマ? 私は奥に戻らないの?
このまま?
入口から入ってくる大きな男性。
綺麗な金髪が扉の向こうで光を反射した。
レオナルドのような王子っぽい服装をした男性は、金髪・青眼。
レオナルドが物語の中で姫とダンスを踊る優雅な王子だとすると、この人はドラゴンを倒していそうな王子だ。
絵本の王子?
顔がなんとなくレオナルドに似ている気がするのは、海外のイケメンが全部同じ顔に見えてしまう喪女の病のせいだろうか?
教皇様がお辞儀をすると、神官達が一斉にお辞儀をする。
ミサキも慌てて壁際でお辞儀をした。
エマー! 早く戻ってきてー!
私はどうしたらいいの?
お辞儀を終え、顔を上げると偶然イケメンと目が合ってしまった。
ドクンと高鳴る胸。
身体の中から何かが沸き立つような、何かと共鳴するかのような不思議な感覚にミサキは目を見開いた。
『……なんだこの感覚は?』
ドクンと高鳴る胸。
壁際のあの少女と目が合った瞬間、剣が震えたような気がした。
『ルイス様?』
教皇の横を通り過ぎ、一直線にミサキの方へ歩くルイスに周りがざわつく。
『ルイ?』
ルイスの補佐ディーは何も言わずに少女の方へ歩いていくルイスを慌てて追いかけた。
ルイスはミサキの真正面へ立つと教会の白いワンピース姿の小さなミサキを見下ろした。
やはり剣が共鳴している。
ルイスはそっと剣に触れながらミサキを見つめた。
『お前は何者だ?』
眉間にシワを寄せるルイス。
え? 怒っている?
一人だけ部屋に残っているから?
でも、エマがここに居てってジェスチャーしたもん!
『ルイス様、聖女様は言葉がわかりません』
急いで追いかけてきた教皇の『聖女』の言葉に、ルイスの眉間のシワはますます深くなった。
『聖女は王宮だろう。聖女を勝手に名乗っているのか?』
『ち、違います。本当に治癒能力を持った聖女様です』
ジッと見つめてくる男性はイケメンだが怖そうだ。
この人が持っている剣は何だろう?
さっきからこの剣と共鳴しているような気がする。
ドクドクと高鳴る心臓はそろそろ口から飛び出そうだ。
『治癒か』
本当にそんな力があるなら良いけれどなとルイスは肩をすくめるとミサキから離れた。
『教皇、祈りを頼む』
『はい。明日から討伐に出かけられるのですか?』
『いや、明後日だ。今日このあと王宮へ挨拶に行って一泊する』
『では私もご挨拶に同行しましょう』
教皇に奥へと案内されるルイスと補佐ディー。
数歩進んだルイスはミサキの方をもう一度見た。
細くて小さいただの子供だ。
聖女なわけないだろう。
本当にそんな者がいるのなら、伝説通りに水不足を解消してくれ。
「好みの女だったか?」
珍しいなと笑うディーに、ルイスはフンッと鼻を鳴らした。
「少し気になっただけだ」
一応、この聖剣と共鳴するような不思議な感覚だけは王宮に報告しておくか。
ルイスは聖剣に触れながら奥へと歩く。
ドラゴン討伐の成功を祈って。
男性達が奥へと歩いていくとエマが急いでミサキの元へ戻った。
エマー! 遅いよぉ!
裏へと二人で戻り、ホッと胸を撫でおろす。
怖そうな、厳しそうな人だった。
もう一人の人はよく見えなかったけれど。
ミサキは雑巾を手に取り、エマと掃除道具を片付けた。




