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王子の溺愛があったとしても、言葉が通じない異世界でドラゴン討伐なんて無理!  作者: 和泉


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15. 礼拝

 食べ終わったミサキは食器を持って廊下を進んだ。

 誰もいない廊下。

 みんな寝ているのだろう。


 キッチンへ行き、自分の食器を洗う。

 全員分洗ってある食器を見て、エマが一人でやったのかなとミサキは目を伏せた。


 部屋に戻り再びベッドへ。

 小さく丸まりながらミサキは再び眠りについた。


「おはよう、エマ」

「おはようございます!」

 昨日のことは何もなかったかのように普通に挨拶したミサキにエマは微笑んだ。


 良かった。

 今日は泣いていなかったみたいだ。

 エマはミサキの目が腫れていないことにホッとする。


 昨日のように朝食の準備のためにキッチンへ。


「りんご」

 夜中に食器を片付けたときには食材は準備されていなかったので、エマは6時よりももっと早く起きて準備したのだろう。

 

「はい! りんごです!」

 準備されたりんごを指差すとエマは嬉しそうに笑った。


 王宮でも果物は頻度が少なかった気がする。

 きっと高価なのだろう。

 腕を吊っていたおじさんがたくさん持ってきてくれたが、腕が治ったお礼なのかもしれない。


 ここでみんなの怪我を治せばお礼が貰えて、エマに美味しいものを食べさせてあげられるだろうか。

 ここの女の人達はみんな細くて、栄養が足りていない気がする。

 野菜だけでなく肉や魚もエマに食べさせたい。


 ミサキは今日からちゃんと働こうとグッと手を握った。


『新人! これ、洗っておきなさい』

『私のも』

 マリーとジャネットがカゴをキッチンの入り口に置いていく。


『そんな! 自分のものは自分で洗うルール』

『うるさいわよ、エマ!』

 昨日仕事をサボった罰だと言うマリーに便乗し、さらに5人の先輩達がカゴを置いて行った。


『そんな、酷すぎます』

 泣きそうな顔でカゴを見るエマ。


 あ、これって嫌がらせ?

 もしかして私と一緒に居るからエマも嫌がらせをされている?


「わたし、ノー? ごめん、エマ」

 私のせいで嫌がらせされて、ごめんね。と通じるだろうか?

 ちゃんと謝ることすらできないこの語学力。

 3週間、真面目に勉強したつもりだったのに全然身についていない。


『ち、違います。聖女様のせいじゃないです!』

 首を全力で左右に振るエマ。

 ミサキは申し訳なさそうに微笑んだ。

 

 食事のあと、置いておかれたカゴの中身を順番に洗濯していく。


 水浴びする池から水を汲んで洗濯板で洗って干すという作業は思ったよりも重労働。

 何度も水を運ばなくてはならないし、脱水機もないので絞るのも大変。


 絞りすぎるとシワになってしまうし、干すときも下に付かないように気を付けなければ洗い直しだ。


 あぁ、洗濯機ってすばらしい発明だったんだ。

 ボタンを押したら洗って乾いている。

 今すぐここに洗濯機がほしい。


『エマ! 探したぞ。礼拝の時間なのに』

 街の人が待っていると呼びに来た神官は7つもカゴが置いてある状態に首を傾げた。


『えっ! すみません。でもまだ洗濯が終わっていなくて』

 白いワンピースを干しながら、水に浸かっているワンピースをチラッと見るエマに神官は溜息をついた。


『聖女様にまで洗濯をさせるとは。聖女様、そんなことなさらなくて大丈夫です』

 神官は、洗ったワンピースを水ですすいでいるミサキの手を桶から出し、タオルで拭く。

 ミサキの手は冷たく、赤くなっていた。


『この方の手は女神の手。水仕事をさせるとは』

『す、すみません』

 神官はカゴに書かれた名前を確認し、押し付けた7人の名前を覚える。


『ここはこのままでいいので、すぐに礼拝に』

『はい。今すぐ行きます』

 

 あれ? 洗濯が途中だけれどいいのかな?

 

 ミサキはエマと神官に連れられ、昨日の礼拝堂へ行く。


 あ、仕事の時間だから洗濯は後にしなさいって事ね。


 昨日並んでいたのは12人。

 今日は20人以上が並んでいる状態にミサキもエマも驚いた。


 一番人気のマリーと同じくらい人が並んでいる。


「おはようございます」

『待っていたよ、エマちゃん。今日は俺が1番!』

 エマと同じくらいの年齢に見える青年が人差し指を一本出した。


 俺が一番だぞみたいな自慢かな?

 ミサキはペコリとお辞儀をした。

 

『チャドさん痛い所ありましたっけ?』

『ははは。俺は頭が悪いからさ、聖女様に治してもらおうと思って』

『頭は治りませんよ』

 周りからドッと笑いが起きる。


 なんだか楽しそうだ。

 エマが自分の頭を押さえてみせるとミサキは首を傾げた。


 頭?

 青年の頭は別に怪我などしていなさそうだけれど?

 ミサキが自分の頭を指差すと、エマも青年も周りの人達も、うんうんと頷いた。


 本当に頭なんだ。

 よくわからないまま青年の頭に手を10秒ほど置く。


『よっしゃー! これで頭が良くなったぞー』

『なってねぇよ』

 またドッと笑いが起き、みんな楽しそうだ。


『次は俺! 肩が上がらなくってさ』

 その場にしゃがんだ男性の肩をエマが指差すので、ミサキは肩に手を置いた。

 10秒ほどで手を離すと、両腕を上げて『すげぇー!』と叫ぶ男性。

 周りもどよめき、歓喜する。


 楽しそうに盛り上がる部屋の片隅に、マリーは舌打ちした。

 

 一人一人、ワイワイと盛り上がっていたせいか、今日はエマとミサキが一番最後になってしまった。

 途中から神官も付き、これ以上並ばないように制限まで。


 あと一人で終わりというところで、二番目に肩を治した男性が箱を抱えてやってくる。

 中にはたくさんのキャベツ。

 持ってきた御礼では足りなかったと、追加で大量のキャベツを持ってきてくれた男性にエマは頭を下げた。


 神官が受け取り、ミサキの方を見る。

 ミサキも会釈をすると、男性は肩を触り、腕を上げて見せた。


 肩が痛くて腕が上がらなかったけど、上がるようになったってこと?

 よくわからないが喜んでくれたみたいなので良かった。


 初日に比べるとかなりたくさんの贈り物を頂いた。

 今日は人数も多かったし、追加でもらったキャベツは瑞々しいので、採りたてなのだろう。

 

 ミサキは棚に入りきらなかった食材を見ながら微笑んだ。

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