表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子の溺愛があったとしても、言葉が通じない異世界でドラゴン討伐なんて無理!  作者: 和泉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/49

12. 新人

「なんで食事も別なのよ!」

「まさか特別なものを食べているんじゃないでしょうね」

「い、一緒です」

 マリーを筆頭に教会の女性達がエマに詰め寄ると、エマは小さくなりながら女性達に答えた。


「準備も片付けもしないってこと?」

「ありえない」

 新人なのだから当番をするべきだと言うジャネットにみんなが同意する。


「働いていないくせに食べるなんて」

 これは私たちが祈りを捧げてもらった物なのに。とアンジーが言うと、周りもそうだと言い始めた。


「今日の片付けをやるように新人に言いなさい」

「で、でも、教皇様が」

「うるさいわね、絶対にやらせなさいよ!」

 マリーが言うと、やってるかどうか見張るわとジャネットが名乗りでる。

 エマは周りの顔を見た後、渋々頷いた。


『あの、聖女様。すみません。片づけを手伝ってほしいのですが』

 扉からおずおずと声をかけるエマに、ミサキはニッコリ微笑んだ。


 今日の食事はパンとスープ。

 パンはみんなで切り分けたのだろう。

 一切れだけだった。

 スープはじゃがいもや人参など野菜のみのスープ。


 王宮で食べさせてもらっていた食事がどれだけ豪華だったのか思い知る。


 それでも働いていないのに食事までさせてもらったことには感謝しないと。

 せめて皿洗いくらいしたいと思っていたところだ。

 エマが来て良かった。


 ミサキは食器を持って立ち上がった。

 キッチンに持っていけばいいのかな?

 まだキッチンの場所もよく覚えていないけれど。


 ホッとした表情を見せるエマ。

 なんでホッとした顔?


 キッチンにはお皿が山積み。

 みんなの分なのかな?

 

 ミサキがスポンジを手に取ると、エマは驚いた顔をした。


『まだ頼んでいないのにどうして?』

『全部洗えばいいんだよね?』

『あ、あの。手伝います』

 エマもスポンジを手に取り水に濡らす。


 お皿を種類ごとに分けて重ね、順番に洗い、テキパキと終わらせていく。

 水が冷たいので真冬は大変だろうな。


 全員分洗い終わるまでに三十分ほどかかってしまったが、なんとか全て洗い終えた。


「ありがとうございます」

 なぜかエマにお礼を言われたので、ミサキも「ありがとう、エマ」と答えた。


 もっとエマと話が出来たらいいのに。

 どうやって言葉を覚えたらいいのだろう。

 王宮の家庭教師マルクは一つずつ物の名前を教えてくれたが結局覚えきれなかった。

 ノートもないし、もちろん単語帳なんてものもない。


「おきる、えっと」

 何時に起きればいい? と聞きたいのにやっぱり言葉が出てこない。

 ミサキが困っていると、エマは手で6を作った。


 6時!


「ありがとう」

 ミサキが微笑むと、エマもうれしそうに笑った。


 エマに部屋まで送ってもらったミサキはまた静かな部屋で一人になった。

 ベッドとサイドテーブルしかない部屋。

 窓もなく、本もない。

 

 ……ナタリー探しているかな。


 昨日の午前中に王宮から勝手に逃げ出し、おじいさんとおばあさんのお店で泊まらせてもらって今朝からこの教会でお世話になっている。

 あの環境がとても恵まれていたと今更気づいても遅い。

 勝手に逃げ出したのだ。


 きっとレオナルドも呆れているだろう。


 カッコいい王子様。

 3週間だけだったけれど、毎日一緒にご飯を食べることができて幸せだった。

 手も握ってくれて、頬にもキスしてくれて。

 本当に夢のような時間だった。


 あーあ、綺麗な彼女がいるって気づかなければよかった。

 庭に行かなければよかった。


 言葉が通じるようになってから、「君は異世界から来たから仕方なく面倒見てあげているだけだよ」って言ってもらったら、彼女がいても「そうだよね」って受け流せたかもしれない。


 一人はダメだ。

 涙を我慢できない。


 ミサキはベッドに小さくうずくまり、泣きながら眠った。


 翌朝6時に部屋を訪れたエマはミサキの顔を見て驚いた。

 明らかに泣いていましたという顔だ。


 おろおろとするエマ。

 恥ずかしそうにミサキは笑った。


 今日は食事の支度を手伝う。

 じゃがいもの皮を剥いたらエマが驚いていた。


 ちゃんと一人暮らしで自炊していたんだから!

 難しい料理は作れないけれど、じゃがいもは安価でよくお世話になっていたので皮むきは出来る。

 

 その驚いた顔は、何にもできないと思われていたのだろう。

 どうだ! とばかりにミサキは玉ねぎのみじん切りも披露した。


 野菜スープを大きい鍋で作る。

 何人ここに居るのだろう?


 ここの調味料はわからないので、味付けはエマにお任せだ。


 黄色っぽい粉を水で溶いて焼くのも手伝った。

 トルティーヤみたいだ。


 食事が出来上がる頃に、お姉さん達がやってくる。

 水浴びをしたのだろうか。

 ツヤツヤの髪がキレイだった。


『……何よ、新人』

 目が合ったマリーが眉間にシワを寄せる。


「きれい」

 ミサキは自分の黒髪を引っ張り、手でウネウネを表現した。

 マリーの綺麗なウェーブの茶髪を褒めたつもりだが伝わっただろうか?


『当然よ』

 ふんっと去っていくマリー。


 伝わらなかったかな?

 発音が間違っていたかもしれない。


 うーん。と悩むミサキにエマは手で〇を作ってくれた。


 伝わったってこと?


 やっぱり会話がしたいなぁと思いながら、ミサキはエマと料理をお皿に盛った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ