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毎週千文字短編 2 息子を待ちながら

作者: 大谷乱介

 息子が学校へ行かなくなった。

 中学校から連絡があったのだ。

「息子さん、もう一週間も学校来てないんですよ」 

 自分で体調が悪いからと欠席の連絡をしていたのだと言った。

 最初は怒りがきた。なぜ学校へ行かないのか。親に隠しているのか。

「息子さんも思うところがあるんだと思います。ご家庭でどうかお話ししていただけたらと」

 担任の一言で我に帰った。

 

 息子は今どこで何をやっているのか分からないが、とりあえず帰ってくるまでは俺としてもどうしようもない。仕事をするべきだとわかっていてもつい物思いに耽ってしまう。

 俺は高校の頃のある友人を思い出していた。

 

 そいつは俺の高校時代の一番の友人だった。名は雄介と言う。頭が良く、面白く、顔はそこそこだったが、いいやつだった。

 俺と雄介は違うクラスで、同じ放送部だった。放送部は俺らが入部した当時、男が誰一人としていなくて肩身が狭かった思い出がある。なんの変哲もない、小さな文化部だった。

 しかし雄介は兼部をしていて雄介はサッカー部にも所属していた。そのせいか、雄介はいつも忙しそうにしていた。テストが重なると放送室に顔を出すことはほとんどなくなり、放送部では仕方なく幽霊部員としての扱いを受けていた。

 すると雄介はその空気を察知したのかだんだんと普段の部活にも顔を出さなくなっていった。

 俺がそのことを話すと彼は

「今更俺が行ったところですることがあるわけでもないし変な空気になるだけだろ。別にいいんだ、忙しくて顔を出せなかったのは俺の責任だし」

 と言って結局それきり放送室に彼が訪れることはなかった。今思うと彼は何でもかんでも自分の責任だと思って背負い込んでしまうきらいがあった。

 それでも俺らの仲が悪くなることはなく、よく休み時間には廊下に出て話し、たまに電話もした。

 そして二年の春。クラス替えによって俺たちは同じクラスになった。そして雄介は学校へ来なくなった。

 そのあと一度だけ、雄介から電話があった。

 あっけらかんとした声で学校を辞めることを伝えられた。俺の方はああとかうんとか返事をすることしかできなくて、さっさと電話は切れてしまった。

 

 今もあの時どうやって声をかければよかったのかと考える。いくら考えても答えは出ないし、もう過去に戻ることもできない。でもその答えはきっと息子の問題を解決する糸口になるのではないか。そう考えるとますます悩んでしまう。

 夕暮れ、赤く染まる窓からの景色に問いかけた。

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