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黒い短編集  作者: 衣月
6/27

愛しのダーリン


ダーリン

覚えてる?


貴方が私に勧めた本


とても面白かったわ



だけど一つだけ

どうしても理解出来ないの



どうして婚約者のこの女性は

愛のために命を捨てられなかったのか

理解出来ないわ



私なら

他の男に愛を奪われるくらいなら

死んでも愛を貫くわ





ダーリン

貴方もそう思うでしょう?


私なら永遠に愛を誓うわ

だって

貴方が欲しいもの




ダーリン

ねぇ囁いて

私の恋した唇で

この耳に吹き込んで

風の歌より甘いテノール


貴方も私を死んでも愛しぬくでしょう?


だって私たち

こんなに深く愛し合っているのだもの




ダーリン

怯えないで


これは脅しなんかじゃないのよ?


このナイフ?

これは貴方を綺麗に飾るための煌めきよ



嗚呼

もっとその肌に刻みたい

愛の言葉も私の名前も


真珠の素肌を飾りたい

美しい血で深く深く





ダーリン

声を上げて

断末魔より高々と

ほら笑ってよ


貴方は誰より美しい人


私の胸を射抜いた瞳

私の脳を壊した鼓動


いつまでも触れていたい

その温もり消えたとしても





ダーリン

ほらおっしゃって


命捨てるほどに愛すると


拒まないで

受け止めて


さぁ舌を出して

絡めて知ればいいわ

愛の底なき苦さ



嗚呼

そう、私もよ


愛してる

いくらでも言うわ


愛してる

貴方を愛してる


こんな私たちに

他に何が必要かしら

貴方がいれば私は他に何もいらないわ





ダーリン

欲しくてたまらない


貴方の愛も貴方の体も貴方の心も

全部私のものにしたい



その鋭い爪から頂戴

指を一本ずつ切り落として

そっと壺に埋めるの

誓う数だけ滴る雫



嗚呼

私を見る眼も抉りましょう


いつか醜くなる私なら

どうか美しいまま留めておいて





ダーリン

私が欲しいの?


ならば捧げましょう


さぁ跪いたまま

そう、お嘗めなさい

甘くて哀しい血と蜜の味

味わいながら悟ればいい

貴方のために流れる雫


まだ私を乞うと言うのね

嗚呼

その言葉が私を光らせる


もうどうか体を裂いて

触れてみて この胸の鼓動

貴方になら全て差し出せるのよ




ダーリン

血潮に流して


貴方の快楽 私に分けて


足掻くままに貪り尽くすの

もう道なんて踏み外したもの


獣みたいに欲しいと言うわ

この欲に注げ込んで



止まらないで

進まないで

ただ堕ちるだけ


沈んでく足首

引き摺り合えたら幸せね





ダーリン

目蓋を閉じて


もう貴方を自由にさせない

誰にも感じないで

私だけがいい

全て私がもらってあげるわ



四肢をもいで


耳を削いで


鼻を千切って


唇を刻んで


舌を抜いて



その熱も奪いたい

ずっと願った(こころ)を頂戴




ダーリン

誓うわ


もう独りにしない


貴方が行くなら私も行くわ

辿り着く場所が墓穴だとしても

貴方の亡骸 数えて咲く薔薇になるわ


私は薔薇で

私は女


貴方がいるから私は生きれる


貴方は私の糧なのね




ダーリン

ありがとう


これからも私は貴方の愛を貫くわ


貴方の愛を残らず吸い尽くすの




ダーリン

私の愛しい人




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