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黒い短編集  作者: 衣月
3/27

パティシエのお菓子




さぁ

今日もお菓子を作ろうか



甘くて美味しい


そう、それはまるで

恋人のお菓子








お湯をたっぷり

ほかほかに煮込めば

白い死相も真っ赤な笑顔




砂糖細工の蝶々

こげた髪にかざりつけ




まんまるなあめ玉

小さく転がして

かわいい眼窩にうめようか




とけたマシュマロ

そっと舌をくるんで




金いろに輝くハニーで

キラキラなネイルアート




体をつむぐ神経

キャラメルでからめて




ミルクをかき混ぜて

クリィームのツノ立てて

おませな肌に薄化粧




チェリーも

ストロベリーも

赤く赤く

その赤いろは

血の赤いろ




とろけたチョコレェト

柔らかな心臓に詰めて




美味しさの隠し味に

透明な毒を一滴落として




かざりの薔薇つないで

かんむりのりっぱな王様




仕上げの真っ白な骨は

細かくつぶして粉砂糖








ほぉら

美味しいお菓子の出来上がり




恋する女の子はみんな食べたくなるスウィーツ


パティシエが想いをこめて作ったよ


一口食べればこの味の虜




カフェテラスの机に

白いテーブルクロスを広げて


さぁ席について

美食家な恋する女の子達


光るまで磨いた銀食器

一人ずつの前に並べて




早く早くと囀ずる小鳥


木霊が恋の歌を唄ってる


木洩れ日のワルツが通る




赤くなった帽子をかぶった天才パティシエ


豪華なスウィーツ

カートで運んで



女の子の目は宝石みたいに光って


唾を飲み込み音がする





さぁ食べましょうか




一斉に甘いお菓子に飛び付く女の子達


恋した男の子を

その空いたお腹に収めて


甘い笑い声が

緑の庭園に咲き誇る




桃色の頬

クリィームで染めて


純白のドレス

血で彩って







お皿は空っぽ


お腹はいっぱい


女の子達は夢心地






おねむりなさい


良い夢が見れますよ


決して醒めない優しい夢ですよ






その幼い目蓋が下りて


寝息もいつの間にか消えている






パティシエは

女の子達を一人ずつ

両手で優しく抱き上げて

キッチンの奥へと

姿を消しました





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