4-7.未来への伝承
翌年以降もお相手はいろいろ変わったり、また同じお相手だったりしながらも、吉住ファームでの種付けは安定して毎年数頭続いた。
子どもの方も比較的順調に産まれ続け、産まれた子たちはすべて中央デビューを果たすという安定さだった。まぁこれは吉住ファームの信用が大きかったとも言える。
それでも、すべての産駒が中央で勝利を上げるというのは称えてるべき偉業だろう。ただ、重賞まで進むようなずば抜けた産駒は少なく、初年度産駒の重賞勝ちはなし。名牝と言われてもいい牝馬たちの産駒としては、相当物足りなかったとも言える。
産駒が少なかったのが一番の原因ではあるが、種牡馬ランキングに一度も載ることなく、15年の種牡馬生活を終え、今は悠々自適の生活を送っている。
ただ、近年になってやや異変が起こっている。後継種牡馬となるような活躍した牡馬は誕生しなかったが、安定した成績を残した牝馬たちはすべて繁殖に上がり、多くの孫たちが産まれている。
その孫たちの世代の活躍が目覚ましいのだ。
そのうちの1頭、スギノプリンセスとの間に産まれた牝馬の産駒の牡馬が皐月賞を勝ったのだ。比較的牝馬の活躍が目立っていた孫世代であるが、牡馬での活躍馬、しかもクラシックホースが出たことにより、ブルードメアサイアー(母の父)としてのビーアンビシャスの価値があらためて注目された。
今になって、もう亡くなっていた吉住正勝氏の慧眼と長期的戦略が称えられた。長距離晩成型であるがゆえに注目度の低かったビーアンビシャスを拾い上げ、たいした産駒を出さないと批判されながらも名牝たちとの交配を辛抱強く続けた成果がここに来て実ったのである。
また、各国から地道に集めた日本では馴染のない血統の種牡馬たちとの配合がここに来て光を放ち始めていた。
今になって言えることとしては、ビーアンビシャスはあまり特徴のない種牡馬であった。ただ、牝馬の良さをそのまま次の世代へ繋げるという意味で大いに役立ったと言える。
ビーアンビシャスの血は牝馬たちを通じて未来に繋がることが出来た。
だが栄枯盛衰の激しい競馬界のこと、その血が今後も伝え続けられるのか、はたまた新しい血に飲み込まれ消え去ってしまうのか、今の時点でそのことを知るものは誰もいない。
今回で最終回となります。途中長期間の休載などありましたが、ここまでおつきあいいただきありがとうございました。
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