4-6.近親
それから後も毎週1回のペースで計6頭とのお勤めを終えた。
そして1週間経っても次のお相手が現れない。
どうやら、今年のお勤めはこれで終わったようだな。
そう思ってたんだけど、ある日いきなり吉住正勝氏が現れた。
「今年はもう終わり。お前の方もそう思ってたかもしれないけど、急に1件増えた。
ちょっとお前をうちに買い取るに当たって条件出された相手でもあるし、なかなか面白いかもしれないと思える相手だから受けることになったわけだ。
よろしく頼む」
どうやらこれまでの6頭はすべて吉住ファーム内のお相手だったらしい。そして追加の1頭は別らしい。
オレとしては特にこだわりはないんだがな。
そしてそのお相手は直後に連れてこられた。
「わーい、お兄ちゃんだ!」
どう見てもソシアルラバーです。でもオレとソシアルラバーの配合ってずいぶん近親じゃないのか?
「名牝オーシャンルビーの3×3ってのは面白いとは思うな。
そしてソシアルラバーはスギノプリンセスと同じく父がフェイルオーブ。ファイアグルームの血統の中でもフェイルオーブを父に持つ牝馬との配合はなかなか合うと思ってるんだよ」
もしかして、吉住正勝氏の解説聞きながらの種付けになるのか?
そして、吉住正勝氏はオレに解説してくれてるのかと思ったのだが、どうやらソシアルラバーの種付けに付きそって来ているオレも産まれ育った牧場の牧場長への解説らしい。そりゃそうだわな。
「お待たせしても悪いでしょうし、さっさと済ませましょうか。
ソシアルラバーは蹴り癖があるようですから皆気をつけるように」
「おい、ラバー。蹴るのか?」
「だってー。
いきなり怖い顔して迫ってこられたら怖くなっちゃってさー」
なんでも、今年が初めてらしいんだが、種付けに2回も失敗してて、こんな時期になっちゃったらしい。
緊張をほぐすために、少し近況を話してたけど、ソシアルラバーとは厩舎も同じだったから、あらためて話すこととかあまりないんだよな。たわいない話ばかりになっちゃったけど、そのおかげもあって少しは打ち解けたかんじになってきた。
「じゃあいくけどオレなら怖くないよな?」
「うん、お兄ちゃんなら大丈夫……と思うけど……
お兄ちゃんもそんなふうになっちゃうんだね……」
オレの方はすっかりスタンバイOKの状態になってた。
いや、いつもより少し興奮気味かもしれない。
なんていうか、すっかり大人になった幼馴染みの従妹と、そういうことすると思うと、ちょっと興奮するのはしかたないところじゃないと。
「蹴るなよ」
「うん、ガマンするから」
少しだけ緊張もほぐれた感じのソシアルラバーにオレは後ろから覆いかぶさった。
問題なくお勤めを終えてほっと一息。
「あんまりワガママ言って牧場の皆に迷惑かけるんじゃないぞ」
「ワガママなんて言ってないし、別に迷惑かけてないと思うー」
「いや、こうやって何度も種付けで引っ張り回すのは十分迷惑かけてると思うぞ」
「だってー」
「次からはもう大丈夫だよな?」
「うーん、来年もお兄ちゃんがいいな」
「そりゃオレに言われても知らん。牧場の人の考え次第だな。
でも、いい子を産んだら、次もってことになるかもしれないな」
「よし、頑張っていい子を産むね!」
意気揚々とソシアルラバーは帰って行った。
繁殖の時期もそろそろ終わりだし、今年のお勤めは今度こそ終わりかな?
来年の春まで、またのんびりさせてもらうか。
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