4-5.3回目
それからまた1週間後。
これは週1回って決められてるのかもしれないな。
今回も前日に予告なし。きっとそういうものなんだろう。
3回目のお相手は……なんとビックリ。
また知ってるお相手だとは。
驚きのスギノプリンセスでした。
来る早々に恥ずかしそうに顔を伏せる。
そして何か言いたそうにこっちを見る。
たしか去年も現役で走ってたはずだから、もしかして今年が初種付け?
そりゃ恥ずかしいわな。
「あなたがお相手とか聞いてない……」
そう言ってまた顔を伏せる。
「まぁオレのほうも聞いてないのは同じだけど、もしかして今年が初めてだったり……」
「……」
どうやら、そうらしい。
「もう一度、一緒に走りたかった。
待ってたのに、何度も何度も……」
「そりゃ悪かったな。でもオレのほうとしては勝ち逃げしておきたかったのは事実。今度やったら負けそうだったし」
「ずるい……」
「まぁそう言うものの、オレももう一度っていうか何度も戦わなきゃいけない相手だとは思ってたよ。オレのほうとしても怪我は予定外で、まさかあのまま引退することになるとは思わなかったよ」
「あなたが来なかったからつまらなかった」
聞いた話になるが、スギノプリンセスはあれから1年半で出走数こそすくなかったものの、G1を含めて重賞5戦に出走して全部勝ったらしい。
生涯成績9戦8勝。唯一の負けがオレとの有馬記念なわけだから、オレとの再戦に固執してたのはわからんでもない。
「でもまぁ、こうしてまた会えて嬉しいよ。有馬記念で一度会ったきりだからな」
「わたしも嬉しい……でも、こんなふうに会うとか思いもしなかったから」
「まぁな、でも歴史に残るような名牝の最初のお相手がオレでいいのか?」
「……あなたがいい」
「……」
「……」
思いもかけずラブシーンになってしまって、ちょっとドギマギしてる。
よく考えてみると、オレの最初のお相手はスギノプリンセスのお母さんだったわけだが、母娘とかこれって倫理的に問題ないのか?
「蹴るなよ?」
「蹴らないわよ!」
スギノプリンセスは、どう見ても緊張してるようだけど、とりあえず問題なくお勤めを終わることができた。
「ありがとう」
「え、なにが?」
「うーん、なんでもない」
なんか最初来たときとは違ってすっかり打ち解けた感じの微笑みを返してスギノプリンセスはオレのところから去っていった。
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