4-3.初めての
そして待望の春。
厩務員の人が前日に予告してくれた。
どうやら、厩務員も吉住正勝氏からオレが人間の言葉をわかるって教えられてるらしく、あたりまえのように話をしてくれる。
オレの初めてのお相手はベテランの牝馬らしい。
若い娘がよかったなぁとか贅沢は言いません。
オレも前世含めて未経験。当然馬のやりかたとかよく知らないわけだし。
当日になってオレのところへ牝馬が連れてこられた。
見て一目でわかる。相当な馬齢のオバさんだ。
お相手はミソラピアノだそうだ。
名前は聞いたことがあるような気がするけど、思い出せない。
重賞を勝ったような馬じゃなかったと思うけど、どこで名前聞いたんだろう?
「あらあら、こんなお若くて立派な方のお相手がこんなオバさんでいいのかしら?」
「初めてなんで失敗しちゃったらごめんなさい」
「おや初めてなの?
それは光栄ね、こんなオバさんなんだから緊張しなくても大丈夫よ。
気楽にやれば大丈夫。
ほら、厩務員さんたちは慣れてるから、いろいろおまかせしちゃって大丈夫」
オレの方はスタンバイOKのようだ。
何がって?
ナニがだよ!
「あらまぁご立派」
まぁお世辞だろう。他の牡馬のそのときのサイズがどのくらいかわからないからオレのがどうかよくわからん。
厩務員さん2人に手伝ってもらったけど、無事にお勤めを終えることが出来た。
感想?
なんかあっけなさすぎのような。
もう少しなんていうかお楽しみできたらよかったんですが。
一瞬だもんな。
オレが早すぎなだけかもしれんが。
あとになってミソラピアノの経歴聞いてビックリした。
スギノミサイルやスギノプリンセスのお母さんだそうだ。
名馬2頭も産んだ(他にもいるのかは知らない)超のつく名牝じゃない?
そんな名牝のお相手がオレでいいのかよって感じなんだけど。
それにしてもライバルのお母さんと種付けって考えてみるとなんかすごいな。
何がすごいかはしらんが、他に形容詞が思いつかないからしかたがない。
最初の種付けがあった後はしばらくお声がかからない。
人気の種牡馬は毎日どころか1日に何回もお勤めがあるようだけど、オレの方はまったくそんな気配はない。吉住正勝氏の話だと年間数頭っていうことだから、きっとまたお勤めはあるはず……
あるよね?
年間1回だけとか寂しすぎるし。数頭はあくまで複数であって、1頭だけじゃないよね、きっと。信じてるからね。
それにしても1頭相手に1回だけなんだね。
オレのほうは何回でも構わないんですけど!
人間はハーレムじゃなくても1人相手がいれば何回もできるけど、馬は1回だけとか思ったより寂しいものだった。
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