4-1.怪我、休養そして
有馬記念の後は故郷の新冠に帰ってたっぷりと休養。
そして、復帰後の大目標は春の天皇賞連覇……ではなく、大阪杯だ。
やはり2000メートルのG1レースに勝たないと種牡馬としての価値が……
そういう事情は藤森調教師のの方も十分わかってるようで、大目標の大阪杯の前に1戦叩いておきたいってことで京都記念に出走予定だ。
京都記念は去年も勝ってるし、オレの大好きな京都競馬場ってこともあり、なんかとってもいい感じだよな。そういえば去年、京都記念で対決したイギリスのホークアイも京都記念の後に大阪杯に出走して優勝と、これまたいい感じ。
今年はこんな感じで行こう!と思ってる。
ただ気になることといえば、絶対来るよね大阪杯には。
誰がって?
決まってるでしょ、スギノプリンセス。
2000メートルってことで今度は向こうの得意距離。
向こうは伸び盛り、有馬記念の後に言ってたように、もっともっと強くなってくるんでしょうね。正直勝てそうな気がしないんですが……
それでも、やらなきゃいかん。
きっとここ勝てたら夢のハーレム種牡馬の道が開けるはず!
……そう思ってたんだけどなぁ。
なんで、このタイミングで怪我しちゃうかなぁ。
まぁあまりひどくなかったってことだけが救いではあるけど、これで春シーズンは棒に振ることに。
しかたない、きっと神様が休めって言ってるんでしょう。
でもきついなぁ、オレって今がピークな気がする。
これから下り坂じゃね?
そして、秋に復帰。
いろいろ太りきったオレの再調教はあまり順調とは言えず、秋の天皇賞は見送ることに。
となると、ジャパンカップか有馬記念か。
長期休養明けで有馬記念に勝った名馬は過去にいたけれど、正直今の状態で勝てるような気がしない。
去年勝ったレースに無理して出走して、それなりに人気集めた上での惨敗とか誰も得しないし、藤森調教師も二の足を踏む。
出すからには万全の状態で出したい、せめて勝ち負けできる状態でという、G1を4勝した馬を預かる陣営としては極めて難しいところに来てしまっている。
でも、その2つを除くとまともに出れるレースがない。マイルチャンピオンシップに出走するという案も出たが、春に安田記念にも勝ってマイルの絶対王者となったタカノロイヤルに勝てる気がしない。このマイルチャンピオンシップに勝ってマイル3連覇とともに引退予定ってことで陣営も力入れまくってるし。
アルゼンチン共和国杯はハンデ戦で斤量に不安があるし、ステイヤーズステークスの3600は有利ではあるけど、今更G2の長距離戦に勝利したところで何の意味があるのかという……
陣営の苦渋の決断として、秋は捨てて来春の大阪杯目指してじっくりと構えるという結論になった。
そして万全の状態で京都記念出走の最終追い切りで骨折という悪夢のような現実に。
引退という2文字が関係者すべての頭をよぎる。
でも晩成の血統。しかも調教していてまったく衰えを感じさせないという現実が、関係者を悩ませる。
ただ、この連続での悪運がこれ以上、現役を続けさせるべきではないという天の意志ではと考えた藤森調教師はオーナーと相談して引退の運びとなったのは、もう春競馬も終わる時期ではあった。
引退して種牡馬入りというには極めてタイミングも悪い。
活躍してから2年間の月日が競馬世界からビーアンビシャスのことを忘れかけさせていた。
そして2400メートル以上のG1レースでは全勝。それ未満のG1レースでは全敗という極端であり明確なデータが関係者の食指を遮ったのは皆の予想通りだった。
極めて宙ぶらりんの状態でのビーアンビシャスの引退となった。
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