3-13.最強馬
有馬記念のゲートが開いた。
スギノプリンセスが素晴らしいスタートを決めて、先頭に躍り出ていく。その姿は正直美しいとかしか言いようがない。
オレはジャパンカップのときほど素晴らしいスタートではなかったものの、自然な感じで2番手につけることができた。
2番手とは言ってもスギノプリンセスがいい感じに飛ばしていくから、大きく離れた感じだ。あの感じで最後まで行くとは思えないから、そのうちペースダウンすることだろう。
オレはあえてスギノプリンセスを無視して、自分のペースを維持する。
今日のレースはオレが作らせてもらおう。
1周目のスタンド前を過ぎたあたりでスギノプリンセスはペースを落としてきた。予想通りと言える。逃げをやってみてわかった。オレくらいのスタミナがあれば別だが、正直あのスギノミサイルのダービーのペースは真似するのがしんどい。
スギノミサイルのスタミナに不安があるから菊花賞ではオレが有利って思ってたあの頃の自分が恥ずかしい。スギノミサイルはスタミナも不安はなかった。
今日のスギノプリンセスは先日のジャパンカップのときのオレより、はるかに速いペースで走っていた。あのペースのままゴールまで走り抜けるスタミナがあるなら、正直オレでは勝負にならない。だが、やはりというかなんというか、ペースを落としてきてる。
それなら、こちらがペースを上げる番だ。
オレが徐々に後続を引き連れたままペースを上げていくと後ろに迫ってきた馬群を感じてスギノプリンセスはやむを得ずって感じで再びペースを上げ始める。
しめしめって感じでオレはまたペースダウンさせてもらう。
ジャパンカップで逃げをやって、1つ世界が広がった。後ろからこうやってプレッシャーをかけられるのが逃げ馬にとって、精神的に来るものがあるのだ。
これの繰り返しでスギノプリンセスだけでなく、後続の馬たちもペースを乱してムダにスタミナを消耗していることだろう。
正直、スギノプリンセスに自由に逃げられたら勝てるかどうかはわからない。オレも少しレースってのがわかるようになって来たせいか、このスギノプリンセスって馬、本当に強いってことがわかっちゃうんだ。
でも、まだなんといってもレース経験が浅い。
今ならまだ勝てる。人間だった頃の知恵と転生してからの経験で。
最強馬対決に真剣に挑んできてるスギノプリンセスには悪いけど、ちょっとずるく勝たしてもらうよ。
最終コーナーをまわって、先頭は変わらずにスギノプリンセス。
脚色は決して悪くない。やっぱすごいわ、この娘。
だが、オレはたっぷりと貯めた脚でスギノプリンセスに並びかける。
ここで二の脚使ってくるんだから、本当に強いな。
さすがにオレも手の内使い尽くさなきゃいかんらしい。
いくぜ!
「灼熱のファイナルギア!!」
完全にスギノプリンセスをぶっちぎって、そのまま先頭でゴールした。
「あーん、負けちゃった……」
マジにスギノプリンセスが号泣してる。
そういえば、今まで負けたことがなかったんだよな。
「強かったよ、本当に」
これは本当にそう思う。
「次は負けないんだからね!
もっともっと強くなって次は泣かせてやるー!!」
そういいながら、スギノプリンセスは走り去っていく。
負け惜しみじゃないな、あれ。
もっともっと強くなられたら正直勝てる気がしないんだけどな。
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