3-12.有馬記念に向けて
「去年と違ってまったく疲れを感じさせないな」
ジャパンカップの勝利後もまったく疲れを感じさせないオレを見て、藤森調教師も有馬記念へのゴーサインを出した。
去年は有馬記念へ向けて調整したが、菊花賞やその前のレースの疲れから回復できずに有馬記念を回避せざるを得なかったのだ。
これも成長ってやつかなって思ったけど、熱発で1戦回避してた分、レース数が予定より少ないことを思い出した。
ドウネンブラウンも引退してしまったから、ライバルになりそうな馬も思い当たらない。
強いて言えばタカノロイヤルか。マイルとはいえヤツもG1馬になってからの初対決。1枚皮が向けてるかもしれないから油断は禁物だ。
そして3歳馬たちの初対決。まぁジャパンカップにも何頭か出てたみたいだけどクラシックレース優勝馬たちはジャパンカップ回避してたから、あまり気にもしてなかった。やはり菊花賞の後のジャパンカップはきつすぎるからな。その点、有馬記念は菊花賞から向かいやすいものだ。
どんな馬たちが来るか、まったく知らないけど、楽しみではある。
「現時点でG1を2勝してる馬はアンビだけだから、年度代表馬も取れるかもね。有馬記念次第ではあるけどね」
ジュンがそんなことを言ってくる。
年度代表馬かぁ。今まで気にしたことなかったけど、きっと名誉なことなんだろうなぁ。
でも有馬記念に勝たれて、G1の2勝馬がもう1頭来られると、直接対決に負けた分、印象が悪くなってそっちに取られちゃう可能性もありそうだな。
有馬記念に向けて調整を続けていた、ある日、
「お兄ちゃーん、わたしも有馬記念に出たいって言ったら、ダメって言われちゃった」
ソシアルラバーがまたわけのわからないことを言いだした。確かにソシアルラバーの血統からして2500メートルならいい感じかもしれないけど、秋華賞2着だけで他に重賞勝ちもないから本賞金が足らないだろう。
まぁ、フルゲートにならなければ出走はできるかもしれないけど、あまりにも唐突すぎる。騎手も被ってるし。
「なんでまたそんなこと言い出したんだ?」
「だって、スギノプリンセスが出ることになったって聞いたもん」
スギノプリンセスってあの秋華賞勝った馬か。確かスギノミサイルの全妹とか言う。
「秋華賞の疲れで長期休養って聞いたけど」
「なんかジャパンカップのレースの動画見たら、疲れも何もかもすっ飛んで絶好調になったんだって。やる気満々で体調万全だって」
なにそれ、わけわかんないって。
聞く限りではスギノミサイルと比べても遜色ない走りするとか。
ジャパンカップのレース見てってことはオレと戦いたくて来るってことだよな。
確かに秋華賞馬であるスギノプリンセスなら実績十分だし、何よりファン投票で上位に入ってたはずだから出走条件は十分だ。
なんか、末恐ろしい敵を自分で作り出してしまった気がするなぁ。
ちなみに後から聞いた話では、出走を予定していた春のグランプリである宝塚記念優勝馬ローンペルセウスは逃げ確定で来るであろうスギノプリンセスの出走を聞いて出走回避したようだ。弱気すぎる!
新連載はじめました。現実世界恋愛ジャンルです。
「悪女、2周目は恋に生きる」
(リンクは下の方から行けると思います)




