表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/55

3-11.騸馬

本当に長期間の休載で、もう忘れられてると思いますが、連載再開します。

最終回まで書き貯めてありますので、休載することなく最後まで完走できると思います。

なお、設定をR15に変更しました。次章でちょっと微妙な表現でてきますので。馬の交尾を性的表現と捉えるかどうかは人それぞれでしょうけど……

 ジャパンカップ開催日、快晴。見事なまでの良馬場である。

 ただし、東京競馬場の開催も年内は本日で終了。良馬場とはいえ、芝状態は完全とは言い難いのはしかたないところ。

 それでも、草深いフランスの競馬場を走り慣れた馬たちからすれば、まったく気にはならないことだろう。


 オッズを眺めてみると、1番人気は昨年の優勝馬フランスのガゾンロイ。続いて2番人気に同じく昨年の2着馬アメリカのドリーミングアイ。そして3番人気にやっとオレ、日本のビーアンビシャスが来る。あまりオッズに差がないことだけが救いではあるな。

 人気なのはこの3頭だけで、4番人気以降は10倍以上と大きく離れている。


 ゼッケン1番をつけたドリーミングアイとゼッケン2番をつけたガゾンロイがパドックの時点からもう睨み合ってる。馬だけじゃなく関係者もバチバチに睨み合ってるし。

 誰だよ、こいつらを同じ枠にしたやつは……あっ、抽選ですか。そりゃ、いたしかたないですね。


「去年の雪辱は必ず返してやるからな!」

 ドリーミングアイが吠えてるし。

「どなたですか?

 どこへ行っても、そんなことを言う方たちばかりで、負けた馬たちのこととかいちいち覚えているわけないじゃないですか」

 ガゾンロイもすました顔してるが、どう見てもただのアオリだろ、それ。


 ちなみにサラブレッドの言葉は万国共通です。もともと限られた地域の馬たちが世界に散らばっていった経緯もあるし、それ以降も種牡馬や繁殖牝馬として多くの馬たちが国境を越えて行ったのですから。

 まぁ、その後の歴史で少しはローカルに言葉も変遷していきましたが、せいぜいなまって聞こえるくらいのものです。


 あの2頭のことはほっておくとして、オレは1つ気になることがあった。

 秋の天皇賞の後、ドウネンブラウンは言ったよな、フランスからの2頭に勝ち逃げされたって。

 でも、ドリーミングアイはアメリカだろ?

 ドウネンブラウンがボケてただけ?

 まぁお年寄りだからしかたないか……って言うほど年じゃないよな、あいつ。ボケや勘違いとも思えない。そう思って去年のレースの動画を見る機会があったんだよ。

 確かにもう1頭フランス馬がいた。

 4着に沈んだオーギュスタン。去年の時点で6歳だが、今年も登録されてやがる。そしてレースはと言うと、ずっと3番手でオーギュスタンの後をピッタリとガゾンロイが進み、レース終盤にオーギュスタンがドリーミングアイに競りかけ、そして最後の直線でガゾンロイが競り合う2頭を抜き去って勝利。

 競り合いで脚を使い果たしたオーギュスタンは4位に沈んでいった。

 これ、ガゾンロイの脚を温存させ、逆にドリーミングアイを潰したオーギュスタンがレースのすべてを牛耳ぎゅうじっていたんじゃないか?

 でも、そこまでしてオーギュスタンに何のメリットがあるっていうんだろ?

 ジャパンカップに来るくらいだから、それなりの実績のある馬なんだろうけど、その割に年取ってもまだ現役だし。


 そんなオーギュスタンがパドックでオレの前を歩いている。

 後ろからヤツのケツを見ててすべてわかってしまった。

 ないのだ。

 何がって?

 ナニだよ。


 ちょん切られてたのか。栄光とかそういうのは、もういらないってことか。

 陣営としては種牡馬としての未来もあるガゾンロイに栄光を集めるためにオーギュスタンを犠牲にしてたわけだ。

 こりゃ去年のジャパンカップだけじゃないな。そりゃまぁガゾンロイは強い馬なんだろうけど、オーギュスタンなしでどれだけやれたのか怪しいものだ。

 オーギュスタンも自分で勝ちに行こうと思えば勝てたレースもいくつもあっただろうに。


 せつないなぁ、とにかくちょん切られるのは辛いよなぁ。

 日本では騸馬せんばって少ないって聞くけど、海外では結構多いらしい。気性的に問題のある馬は割と簡単にちょん切られちゃうとか。

 そりゃ、種牡馬になれる馬はほんの僅かなんだから、切っちゃってもいいのかもしれないけど、切られる方にしてみればたまったものじゃないからな。

 日本でよかったよ。そういえば、記憶によればジャパンカップって騸馬の勝馬がそれなりに多かったような気もする。自信はないが確か昔2年続けて騸馬が勝ったんじゃなかったっけ?


 まぁそれはそれとして、本当に用心しなくてはいけないのは、このオーギュスタンなんだろうな。

 まぁ、藤森調教師もそれをわかっててああいう作戦を立ててきたわけなんだろうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 気になるところで止まっていたのでずっと気になってました。 再開嬉しいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ