3-5.秋の天皇賞スタート
「ついに俺様の時代がやってきたぜ!」
パドックでタカノロイヤルの叫び声がうるさくてしかたない。
オレからタカノロイヤルの様子を見ても毛艶もいいし、馬体はいい感じに絞れている。あの叫び声も見方によっては気合いが乗ってると言えなくもないだろう。
まさに絶好調。初のG1奪取か?
と、思えるのだが、どうにもなんかいつもの調子で好位止まりとなってしまいそうな気がするのはオレだけではないようだ。
タカノロイヤルが1番人気ではあるのだが、2番人気のドウネンブラウンとあまり差がない。ファンも信用しきれないでいるのだろう。
3番人気はトカイラーニング。言わずと知れたマイル王だ。
春の安田記念も勝ってすでにマイルG1を3勝もしているのだが、前走の毎日王冠でタカノロイヤルに差をつけられての2着ということで少し人気を落としているようだ。
オレとは初対決だな。長距離をメインに走ってきたオレとマイルをメインに走ってきたトカイラーニングが激突するという点でも、この秋の天皇賞というレースは面白いだろう。
そして4番人気はオレ、ビーアンビシャス。
前走の惨敗した宝塚記念からは間隔の空いた久々の出走。そして予定していたレースを熱発で回避しての体調不安など、イマイチ不安視される点が多いところだ。
だがオレとしては様々な不安点はすでに解消している。対策はバッチリだ。
昨夜もぐっすり寝られたからな。というのも環境が変わると寝付きが悪くなるオレのためにいつも使っている馬房のワラをわざわざ東京競馬場の出張馬房まで運んでくれていたのだ。
付き添って東京競馬場まで来てくれている厩務員の石脇さんにマジ感謝。
人気どころはそんなところか。いつものメンバとしてはサワダジーニアスは引退しちまったし、サワノルージュはエリザベス女王杯に出走ってことで今日はいない。
そういえば、ローンペルセウスは……7番人気か……だが今日はトカイラーニングが逃げるだろうからちょっと厳しいだろうな。逃げ馬同士で潰し合ってくれるとオレとしては楽だから、せいぜい頑張ってほしいところだ。
いよいよ本馬場入場。
関東初お目見えってことで緊張するぜ。
オレの入場時にファンから大きな声援が響いてびっくりした。オレって意外に人気ある?
敵地に登場ってことでブーイングでもされるかと思ったが、こっちのファンも優しいねぇ。まぁ、ファンにとっては関東馬・関西馬って意識はさほどないんだろうね。
そういえば、宝塚記念のファン投票でもオレが1位だったんだな。もしかして、アイドルホースの座も近い?
よーし、いい感じに気合いが乗ってきたぜ!
東京競馬場でのG1のファンファーレも初めて生で聞くことが出来て、ちょっと感動。前世でよくテレビで聞いたメロディだ、これ。
そして、秋の天皇賞のレース開始のゲートが開かれた。




