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3-1.夢オチ

「何を、ぼーっとしてるの?

 奇数番のあなたから入らないと先に進まなくってよ」


 え、ゲート入り。

 そうだな、急がないと……

 って、ちょっと待てよ、今の高飛車なギャル誰だよ!


 茶髪の女の子がどうしてこんなところにいるの?

 しかもスク水で……

 おっと、胸のところに白い布で名前が貼ってあるな。

 タカノロイヤルって……


 そうか、タカノロイヤルか……

 あれ?

 あいつ女の子だっけ?


 いやいやいやいやいや。

 人間の女の子って……

 ないないないない。


 慌てて周りを見回すと周りはスク水の女の子だらけ。

 なんだなんだ!

 あ、夢か。

 夢なんだな。


 焦った……

 そう言えば人間の頃、競走馬が女の子になって走るスマホゲームにハマってたよな。

 そういう夢なんだな。


 でも、どうしてスク水?

 たしかゲームでは勝負服とか着て走ってたぞ。

 スタミナトレーニングの水泳や夏合宿ではスク水着てたけどさ。


 銀髪の大人の美女って感じのドーネンブラウンが優雅に歩いていく。

 向こうでヤンキー座りしてる目つきの悪そうなのはサワダジーニアスか。


「わーい、雨、雨。

 楽しいな♪」

 向こうではしゃいでる小さな女の子はローンペルセウスだな。


 雨?

 言われるまで気づかなかったけど、シャワーのような雨が強く降っている。

 そう言えば、このところずっと雨続きで京都大賞典の当日も雨の予報が出てるって話だよな。

 京都大賞典……その言葉で、あらためて周りを見回すと、ここって京都競馬場か。

 オレの大好きな京都競馬場、デビューからこれまで負け知らずの京都競馬場だからな。

 っていうかオレまだ京都競馬場以外じゃ勝ち星ないんだよな……


 おっと、ゲート入りだったな。

 オレは係員に誘導されてゲートへ……って、ちょっと待った。

 どうしてオレだけ馬のままなんだよ。

 オレだって美少女化したい……いや、リアルにそういう願望があるわけじゃないよ、言っておくけど。

 まぁ夢だから仕方ないよな。どれだけ非現実的でも……


「Wow Wow Wowowo♪ Wow Wow Wowowo♪」

 ファンファーレじゃなく周りの女の子たちが合唱してるな。これってあのゲームのオープニングかよ。待って、それより先は著作権が……


「よーいドン!」

 いきなりかよ。

 そして、かけっこじゃないんだから、よーいドンはないだろ、よーいドンは……

 

 オレがスターターに文句をつけている間にレースは始まっていた。

 しまった出遅れちまったぜ。


 レースはローンペルセウスがすごい勢いで先頭を泳いでいる……

 え?

 水泳なの?


 しまった、さっきゲームでスク水を着てたのは水泳とかイメージしたせいで、こうなったのか?

 なし、これはなし。

 オレがそう唱えると、普通の京都競馬場の風景に戻った。

 うん、これでよし。


 それにしても、ローンペルセウスにずいぶん離されちゃったな。これ大丈夫なのか?

 そして、オレの目の前には他の馬たち……スク水の女の子たちの姿をしているが……

 とにかく、他の馬たちがずらっと並んでオレをとうせんぼしている。

 これってオレがマークされてるってこと?


 しかたなく、オレはいつもどおりに最後方でついていく。

 そして、最終コーナー手前。

 このあたりだよなって思ったら、いきなりジュンの見せムチがうなる。

 え、ジュンってさっきまでいなかったじゃん……夢だからしかたないか。


 とにかく、なぜか前方が大きく開けている。

 よし、チャンスだ。

 オレはいつもどおりにロングスパートを開始する。


 他の馬たちを一気にかわして最後の直線へ。

 そして前方を見ると、はるか遠くにローンペルセウスの姿が!

 ムリ!

 ここから追いつくとか、もう絶対ムリ!


 オレをはるかにぶっちぎって、ローンペルセウスがゴールへ……

 1着でゴールして大はしゃぎのローンペルセウスの姿が見える。

 うわぁ、負けたー!!


 オレがハッと目を覚ますと、いつもの馬房だった。

 外から雨が降り続く音が聞こえている。


 宝塚記念の負けっぷりが未だにトラウマとなってるのかな、変な夢だった。

 こんな変な夢を見るときって前世から体調が悪い時なんだよな。

 あれ、そう言えばなんか寒気が……

 どうしたんだろう?


 その後、トレセンの獣医に診察された結果、熱発で要安静ってことで、秋の復帰初戦の京都大賞典は回避となってしまった。

 オレとしたことが……

 せっかく得意な京都競馬場のレースだったのに……

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