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2-15.泥沼

 降りしきる雨の中、宝塚記念がスタートされた。


 逃げるのはいつものとおり、ローンペルセウス。

 他に逃げる馬はいなそうで、単騎で大きなリードを広げていく。


 そしてオレはいつものとおり、シンガリでゆっくりと進む。

 前走の春の天皇賞同様にサワダジーニアスが下がってきてオレの後ろにピタリと付く。またオレを完全マークか……

 わかってはいたものの、やはりこいつのマークは嫌だ。イライラする。


 いや、サワダジーニアスだけじゃない。他にも下がってきてる馬がいるぞ。

 サワノルージュがオレの横に位置づけしやがって、こっちに向かってニコリと微笑みやがった。オレと並走するのか?

 待て待て……オレのすぐ前にいるのはドウネンブラウンにタカノロイヤルじゃないか。

 もしかしてお前たち皆が揃いも揃ってオレをマークするって言うのか?


 有力馬たちがこぞって最後尾付近のオレをマークし始めたので、レースは異常な形で流れ始めた。他の馬たちも有力馬たちの動きを無視できず、オレの前で多くの馬たちが団子状態となっている。

 そして単騎逃げを撃ったローンペルセウスだけが1頭軽快に大きく差を広げていく。


 おいおい。

 決して長くはない2200メートルのレースで序盤からこれだけの差がついてしまって大丈夫なのか?

 焦る気持ちが全身を覆う。

 しかし、オレに何ができる?

 でも、このままじゃローンペルセウスの大逃げが決まってしまうぞ。

 お前ら、それでもいいのか?


「こういう時、レースの流れを決めるのは1番人気の馬の責任だよな」


 後ろから、サワダジーニアスの声が聞こえる。明らかにオレを挑発していやがる。

 でも、実際問題としてオレが行くしかないのか?


 前方には大きな馬群の壁。横にはサワノルージュ、後ろにはサワダジーニアス。

 これらをさばいて大外へ持ち出す?

 そんな器用な走りができるはずがない。

 道は……1つしかないか……

 誰も通っていないグチャグチャの最内コース。


 鞍上のジュンも迷っているようだ。

 オレが自ら最内へと進路を取った。すると、ジュンも迷いを捨てたようだ。

「行くしかないね」

 ジュンの見せムチが唸る。


 まだ、レースは中盤。半分以上の距離が残っている。

 ここからあのグチャグチャな泥沼を通って、ゴールまで脚が持つのか?

 でも、ここで逡巡しているような時間はない。


「頑張ってこいよ」

 どうやら、サワダジーニアスはオレについては来ないようだ。

 ゴールまでに確実にオレは潰れる。そう見たのだな……

 確かにそうかもしれん。

 でも、行くっきゃないだろう。


 オレの始動でレースの流れは動き始めた。

 オレに合わせてペースを上げる馬や、無視して脚を溜める馬。

 はるか前方を進むローンペルセウス目掛けて馬たちが動き始めた。


 オレは最内のグチャグチャな泥沼コースをもがきながら進んでいた。

 馬群のすべてを内側からかわせば、もう少しまともな馬場状態のコースを選べるはずだ。

 だが、ロングスパートをかけているにもかかわらず、なかなか前へと進んではくれない。

 他の馬たちと走っている馬場の状態が違っているのに加えて、他の馬たちの何頭かはスパートを開始しているため、さっきまでの団子状態から長い一列縦隊の状態に変わっていてどこまで行っても馬群をかわせないのだ。


 長い長い最内のグチャグチャの泥沼状態からやっとのことで抜け出せたのは、もう最終コーナーを半分以上過ぎたあたりだった。

 そして最後の直線へ。

 前方にローンペルセウスの姿を捉えたぞ。


 さすがにローンペルセウスも足取りが重くなっている。

 この距離であの程度のスピードなら、捕まえられる……いつもの末脚が残っているのなら……

 だが、オレの末脚はどうやらここまでの道中で使い果たしてしまったようだ。脚が重い……まったく加速ができないどころか、どんどん速度が落ちている。

 最終スキルなんてとてもとても発動できやしない。


 はてしなく遠い……

 ローンペルセウスのところまで届かない……


 オレは完全に失速した。

 後ろから他の馬たちの追走してくる足音が聞こえる。

 オレは馬群に飲み込まれていった。


 このレースでオレは競走馬生活で初めて掲示板を外した。

 8着の惨敗……

 1番人気の惨敗で罵声が飛び交っている。


 あのまま待機していれば、展開次第ではあったものの2着まではあり得ただろう。

 だが、あそこで勝負をかけなければ、1着を掴むチャンスは永遠に来なかったはずだ。

 もう一度同じ状況になったとしたらオレはまた同じ選択をするだろう。


 後悔はない。

 ただ、次こそは勝てるようにさらなる研鑽が必要なだけだ。

 これで第2章は完結です。

 第3章の執筆はすぐ始めますので少々お待ち下さい。

 決して某ゲームのなんちゃら杯イベントのために執筆が遅れてるわけじゃありません。

 3人とも結局イベント始まってから再育成したせいとかじゃありません。


 評価やブックマークしていただけると、やる気が出て原稿も進むと思います。

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