7回目 策謀や思惑
「計略だな」
あっさりと答えを出される。
「直接の戦闘はしない。
だけど、ちょっかいをかける。
それで相手の疲労を狙う。
よくある手段だ」
まずは小さく当たっていき、相手を消耗させる。
そうしてから本格的な攻撃を開始する。
疲労した相手はろくに動けず、抵抗は少ない。
例え備えが万全でも、使う人間が動けなければ意味がない。
「それを狙ってるんだろ。
相手に頭があるんならな」
なるほどと思いながら話を聞く。
「さすが先生」
考えを述べてるのはヒロキの師匠にあたる者だ。
朽木が連れてきた者の一人である。
食料や武器などだけでなく、こうした者達を通じてヒロキ達に智慧を与えている。
おかげで底辺を這いずり回っていたヒロキ達も、ある程度の知識を手にいれる事が出来た。
その師匠の言うことは、なるほどと思えるものがあった。
それならば仕掛けてきてる連中の動きに納得する。
そして、手口が分かった事で余計に腹が立った。
「そんな事をしてたのか……」
どうしてくれようかと思う。
「そういう奴らはどうすればいい?」
素直に尋ねていく。
分からない事は聞く、というは基本だ。
そして、目の前に居る師匠は、質問にはちゃんと応える人間だ。
「そんな事も知らないのか」というような馬鹿な事は言わない。
分からない事は当然というのをわきまえている。
「簡単だ」
師匠の答えは明快だった。
「見つけて叩けばいい」
実際、それだけである。
どんなやり方であろうが、対処の基本は同じだ。
やってる奴を見つけて叩く。
これだけである。
今回それが出来ないのは、見つける前に敵が逃げてるからだ。
なら、逃げる前に捕らえればいい。
「でも、どうやって?」
「なに、難しく考えるな」
師匠はニヤリと笑う。
「とりあえず必要なものを取り寄せないとな」
対応するにもそれなりの道具が必要だ。
使わなくてもいいが、それだと人数が必要になる。
その人数を調達するのが面倒だ。
ヒロキ達の所にもそれなりの人数はいる。
しかし、使える人間は少ない。
大半がストリートチルドレン…………少年浮浪者だ。
そうでない大人も何人かいるが、使い物になるのは少ない。
それらを使っても成果があがるとは思えない。
それならばそれなりの道具を揃えた方がマシというもの。
そもそも道具とは、少ない人数でより大きな成果を出すためのもの。
使わない手はない。
さっそく朽木に必要なものを調達してもらう。
朽木もすぐに賛同する。
ただ、どうしても時間がかかるので、それまで待ってもらわねばならない。
その間は、なんとか手持ちで保たせるしかない。
「まあ、その間にやっておく事もあるから、丁度いいか」
「何をするの?」
尋ねるヒロキに師匠は、
「探すんだよ、内通者を」
と答えた。
<注意>
現実の群馬県、およびその関係する諸々と本作は一切関係はない。