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14回目 陰口をたたける場所

「ぼちぼち、上手くいってるな」

 朽木は成果に喜んでいる。

 通信回線を設置しての動画放映。

 それは上手くいっている。



 商売としてはもちろん。

 おかげでそれなりの労働力を手に入れる事が出来た。



 もちろん、それだけが目的ではない。

 労働力確保も利益になるが。

 それだけを求めてるわけではない。

 むしろ、それはおまけのようなものだ。



 求めてるのはそれではない。

 回線利用者が起こす行動だ。



 通信回線は何も一方的な放映だけの為にあるわけではない。

 通信回線を通じた連絡の取り合いも出来る。

 自分の意見の表明もその一つだ。



 自分の意見を書き込める場所。

 それは群馬では貴重なものだ。

 しかも、上層部の監視のない場所。

 こんな所は群馬の中では貴重だ。



 それでも警戒をしている者はいるが。

 口の軽い者もいる。

 ここなら大丈夫だろうと安直に思い込み、羽目を外すような者が。

 そういった者が、通信回線の中に様々な事を書き込んでいく。



「だりい」

「ふざけやがって」

「どうにかならないもんか」

「やってらんねえ」



 大半はこういった愚痴だ。

 意味があるわけではない。

 だが、愚痴でも何でも、積み重なれば流れを生み出す。

 そういう事をしても良い場所だと。



 そう思った者達は、更に過激な事を書き込んでいく。

 現状への不満を。

 その原因を。



 それが情報として朽木の所へと流れ混んでいく。



「なるほど」

 そういったものを眺めているだけでもなんとなく分かる。

 何が問題なのか。

 何を求めてるのか。

 外部にいては分からない貴重な情報だ。



 中には直接の問題が書き込まれてる事もある。

 この近隣で最も影響力のある集団や。

 その背後にいる者達なども。

 まず滅多に書かれるものではない。

 しかし、そういった事も投げ込まれることがある。



 それが分かれば次の目標も立てやすい。

 朽木とその背後にいる者達にとって邪魔になる者達が。



 外部と隔絶した都市である群馬。

 その中の情勢はまだつかみ切れてないところがある。

 それらを知る事が出来るだけでも大きい。

 問題を潰すことが出来るなら、それに超した事も無い。



 幸い、その為の人材は揃っている。

 成長著しいヒロキを始め、何人も育ってきている。

 それらを投入すれば、問題は即座に片付くだろう。



 だが、朽木はそれよりももっと手軽に使える者達に連絡をとっていく。

 それは、彼の目の前の画面の中に、今も憤りを書き込み続けている。



「やあ、こんにちは」

 通信回線をたどった先。

 そこに住んでる者に声をかける。

 相手は当然ながら警戒している。

 だが、そんな彼の表情を無視して朽木は話を続ける。

「いい話があるんだが、のらないか?」



 不平不満を抱いている。

 そういう者ならば、提案にのりやすい。

 また、怖じ気づくことも少ない。

 それを見込んで朽木は話をもちかける。

 必要になる武器などと一緒に。



「どうだ、やらないか?」

 質問の答えはたいてい一緒だ。

「やる、やるよ」

 最底辺に落ち込んだ者に迷いはない。

 どうせいつかくたばるのだ。

 ならば、少しでもせいせいした気持ちで倒れていきたい。

 そう考える者は多い。



「なら、決まりだ」

 朽木はそう言って笑みを浮かべる。

(これで兵隊が増える)

 少しでも戦力が欲しいところだ。

 使えるものは何でも使う。



 例え潰れても問題はなかった。

 目星をつけてる者は他にもいる。

 くすぶってる者は数え切れないほどいる。

 一人二人がダメになっても何の問題もなかった。



 むしろ、篩にかける機会だ。

 誰が使えるのか。

 誰がダメなのか。

 それを実際に突撃させて確かめる。



 何も考えずに頭から突っ込むのか。

 やり方を考えてじっくりいくのか。

 方法自体は問わない。

 ただ、成功して生き返ってくるのか。

 失敗して死体になるのか。

 それで見極めていく。



 成功して生きて帰ってくるなら、次も使う。

 失敗してだめだったらそれまで。



 事前に見込みがあるのが分かれば、教育なども施すが。

 それを調べるのも面倒である。

 だから、いきなり実践に投入していく。

 実地試験という形で。



 成功率はそれほど悪くはない。

 頭を使う者は少ないが、それでもだ。

 同じ最下層の住人同士、標的だって頭を使うような連中じゃない。

 なので、勢い任せに突入してもどうにかなる。



 それでも失敗する者もいるが。

 成功して何回か作業をこなせば、それなりに使えるようになる。

 そういう人間を使って、朽木は最下層の勢力をひろげていっている。



「今日は上手くいくかな?」

 武器を渡した者達の何人かがこの日も突入していく。

 そのうちの誰が生きて帰ってくるのか。

 予想は付かないが、今までの経験で何割かが生き残るのかは分かる。

 それが誰になるのか。

 多少の期待をしながら待つ。

 手駒が増えるのは良いことなのだから。




<注意>

 現実の群馬県、およびその関係する諸々と本作は一切関係はない。

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