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1回目 群馬1999

 巨大都市の下部構造。

 地下ではないのに日の光も差し込まない底辺部。

 そんな所でも、人は日々の生活を営んでいる。

 ゴミだらけの道路の上をせわしなく歩きながら。



 佐奈加瀬さなかせヒロキはそんな通りを進んでいく。

 背中を丸めたような、覇気の無い姿勢で。

 しかし、足取りはしっかりとしている。

 まっすぐに、迷うことなく進んでいく姿は、周辺にいる者達と明確な違いを見せていた。



 向かうは、この近辺で粋がってる連中の巣窟。

 建物の隅にある小さな場所を根城にしている。

 わざわざそこに出向く者はいない。

 近づけば面倒な事になるだけだ。



 そこにヒロキは踏み込んでいく。

 迷いや躊躇いはない。

 上着の下に手を差し込みながら。



 しまっていた物を装着していく。

 暗視・照準などの機能を備えたゴーグル。

 消音器付きの機関拳銃。

 閃光手榴弾。

 闇市でもなかなかお目にかからないようなものだ。



 それらを持って建物の間にある隙間に入っていく。

 通路を見渡しながら。



 歩いて行くとゴーグルに様々な表示がなされていく。

 監視カメラや赤外線探知機など。

 それらのありかに銃口を向けて、引き金を引く。

 照準装置のおかげで狙いは外さない。

 次々に監視装置を破壊し、ヒロキは自分の存在を隠していく。



 とはいえ、これで相手に感づかれてしまうのも確かだ。

 監視装置があるという事は、誰かが見張ってるという事だ。

 それを潰せば、異常を伝える事になる。

 相手も警戒する事だろう。



 それでも姿が露見するよりはマシだ。

 監視装置が生きていても、何かが来るのは分かる。

 だが、潰しておけば、何が来てるのかは分からない。

 人数も、武装も。



 近づけばどうせ知られるのだ。

 だったら、与える情報は少ない方がいい。

 その分相手がとる選択肢は限られる。



 そうして相手の目を潰して先へと進む。

 ここからは時間が勝負となる。

 与えれば、相手は防御を固めるか、攻撃の準備をととのえる。

 さもなくば逃げるか。

 どちらにしても良いことではない。



 そんな猶予を与える事なく、ヒロキは飛び出していく。

 装着している身体強化器具を使って。



 人間の能力を向上させるための機器。

 身体補助の為の装置は大きく発展している。

 太めの針金くらいの細さのそれらは、体の要所を結び、動きを補助する。

 それを使ってヒロキは、地面を蹴り、空へと飛んだ。



 地上から数メートルを垂直に飛ぶ。

 そのまま建物同士の間を交互に蹴りながら上へと向かう。



 そこから今度は横に進み、屯してる連中のところへと向かう。

 幸い、高さ数十メートルほどの所に監視装置はない。

 目標の連中も、こんな所までは警戒してないようだった。



 その先にある空間。

 閃光手榴弾をそこに放り込む。

 瞬間的に腕で目を覆うヒロキ。

 直後に、一辺数メートル程度の小さな空間で、まばゆい光がほとばしる。

 くぐもった悲鳴が上がってきた。



 閃光手榴弾は、文字通り閃光を放つ。

 一瞬だけではあるが、目を突くような。

 直視してしまったら、一時的に視力を失う。

 目を閉じていたら効果は全くないが、直前に気づける者がどれほどいるか。



 相手は全くの無防備だったようで、閃光を直視してしまっていたようだ。

 なまじ、ヒロキが向かってくる方に意識を向けていたのも状況を悪化させた。

 そちらに目を向けていたせいで、視線が一カ所に集まってしまっている。

 それに合わせて閃光手榴弾を放り込んだのだ。

 効果は絶大だ。



「ぐあっ!」

 くぐもった悲鳴をあげて倒れていく者達。

 まともに目を開けていたら誰だってそうなるだろう。

 目に補正用の器具を付けている者ならば。

 目の部分を機械部品に置き換えて、通常以上の視力を持っていたらなおさらだ。



 閃光によって目を潰された者達がそこらにのたうちまわる。

 それを避けられた者はいない

 閃光対策────サングラス状態にしていたゴーグル越しに見ていたヒロキを除いて。



 駆け上がった上空から見下ろすうずくまってる者達。

 それらに向けて、手にした機関拳銃を向けていく。

 ゆっくり狙いをつけてる余裕はない。

 これまでの経験から目星をつけていき、引き金を引く。

 反射神経というよりは、当てずっぽうという調子で。



 それでも、ゴーグルに表示される銃口の先は、相手をとらえる。

 ほんの一瞬ではあるが。

 その一瞬のうちに引き金を引き、弾丸を発射する。

 そして、うずくまってる者達に当たっていく。



 銃弾は全て命中。

 だが、それで全てが倒れたわけではない。

 急所を外れた者もいる。

 防弾チョッキなどを身につけていた者もいる。

 それらはまだ生きている。



 地上へと落ちていく中でそれを確かめる。

 壁を蹴り、飛び回りながらまだ生きてる奴を見定める。

 それに向けて、銃弾を集中させていく。

 一発で倒れないなら二発三発と打ち込む。



 防具を身につけてない者はそれで終わる。

 銃弾をしのいでる者も、着弾の衝撃にのけぞる。

 鉄板だって貫通するのが銃弾だ。

 当たれば痛みは感じる。

 その痛みが防弾チョッキ越し体を襲っていく。



 そうしながら地面に着地。

 途中で弾倉を交換。

 まだ生きてる最後の一人に向かう。

 頭に銃口を付けるほど近づけて発射。

 防具のない頭ははじけ飛んだ。



 倒れて動かない者も同じように処分していく。

 頭を吹き飛ばし、確実にとどめをさす。

 生かしておいてもろくな事にはならない。



 処分が終わってから片付けをはじめる。

 倒した者達が持ってる者の回収を。

 武器などを残すと面倒になる。

 これらを見つけた別の誰かが何かし始めるからだ。

 なので、それらは可能な限り回収していく。



 ナイフや拳銃などのわかりやすいものが手に入る。

 それらは可能な限り持ち帰る。

 体に埋め込まれた機械化部品はさすがに無理だったが。

 それらは銃で穴を開けていく。

 再利用が難しくなるように。



 それらを終えてから隙間を出て通りに戻る。

 機関拳銃やゴーグルをしまい、道行く者達に混じっていく。

 ヒロキを気にする者はいない。

 ヒロキも他の者を気にしない。

 見知らぬ誰かを気にするような暇人などいない。



 そのままヒロキはその他大勢の一人となって、その場をあとにした。



 かつて群馬県と呼ばれた場所。

 そこにそびえ立つ一体型複合都市。

 高さ1000メートルを頂点としたピラミッド型の三角形の建造物。

 その底辺における、さして珍しくもない日常の一コマである。



<注意>

 現実の群馬県、およびその関係する諸々と本作は一切関係はない。

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