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自作小説倶楽部 第21冊/2020年下半期(第121-126集)  作者: 自作小説倶楽部
第122集(2020年8月)/季節:風習(精霊流し、迎え火送り火、大文字焼き)&フリー: 概念(魔法、黄泉、仏)
8/28

03 柳橋美湖 著  精霊流し(風物詩)『北ノ町の物語 75』

【あらすじ】


 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立つ。



挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「魔法少女OBマダムの若返り魔法」

    75 精霊流し(風習)


 ご機嫌いかが、クロエです。

 浮遊ダンジョン最大フロア・第七階層をクリアした私達。その際、ディフェンス側に寝返った吸血鬼・白鳥さんに壁ドン告白されてドキドキしたりしながらも、とにかく第八階層に登ることができました。


          ◇


「この山城、またまた浮遊ダンジョンのフロア面積推測値から逸脱した、不条理な規模だなあ」

 第八階層スタート・ゲートを出るとすぐ、私達の視界に巨大な山城が姿を現したとき、理系大学卒で地元にITベンチャー企業を立ち上げた従兄の浩さんの第一声。

 次に、浩さんと並んで立つ、お爺様の弁護士・瀬名さんの言葉。

「ある意味、第八階層ゴールゲートがどこにあるのか分かりやすい。出口はあの城の天守閣にあるのに違いない」

 そして、私の隣にいたマダム。魔法少女モードに移行しながらこうコメントしました。

「問題はどうやって天守閣までたどり着くか。そこに待ち受けているはずの、クロエ・パパや白鳥さん、そして炎龍のピイちゃんとどう戦うかだわよね」

 まさしくその通りです。

 麓から百メートルくらいはある屏風のように急峻な二つの尾根。細長い谷底を挟んだ東西にある尾根のうち、今、私達パーティー四人と審判三人娘の皆さんが立っているのは西の尾根。谷底の城下町を挟んで反対側にある、東側尾根の頂にあるのが、石垣の廓で囲った四層天守の山城です。山城に至るには、まず谷底にある城下町を通り、そこから、山頂に至る山道を登っていかねばなりません。さっそく私達は西の尾根を降りて谷底にある城下町を目指しました。城下町は、細長い谷底の南北を仕切った石垣に挟まれたところで、南北にある仕切りの石垣には、それぞれ門がありました。私達が降りたところは南ノ木戸と呼ばれる市門です。


          ◇


 渓谷沿いにある一本道を通り、木橋を渡ろうとすると、向こう岸に、船着場を備えた土蔵が立ち並び、たくさんの川船が横付けされているのが見えました。少し離れたところにいた町衆が、模型の小舟に蝋燭を立てて流していました。

「あらあら精霊流しだわ」

 マダムが目を細めて言います。

 精霊流しといったら、お盆に戻ってきたご先祖様の霊を、黄泉にお送り返す風習じゃないですか。

 暮れかけた川面に、おびただしい模型が浮かび、はかなげな灯火を揺らしています。

 そこでです。

 な、なんと上流から、二つの川船を渡し板で連結した双胴船に、炎龍のピーちゃんが乗っかって、木橋の上にいる私達に向かって、今にもファイヤーブレスを吐く態勢になっているではないですか。

 審判三人娘の皆さんは、ピョンと跳躍して、向こう岸・南ノ木戸の前に立ち、手を振っています。

 ――このままじゃ四人は丸焼きだあ!


          ◇


 それでは皆様、また。

          by Kuroe

【主要登場人物】


●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

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