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自作小説倶楽部 第21冊/2020年下半期(第121-126集)  作者: 自作小説倶楽部
第126集(2020年12月)/季節:風物詩(冬至南瓜 大掃除 鐘 湯たんぽ・カイロ)&フリー:道具(グラス 刀)
26/28

03 紅之蘭 著 刀 『ガリア戦記 18』

【あらすじ】

 

出世に出遅れたローマ共和国キャリア官僚カエサルは、人妻にモテるということ以外さして取り柄がなかった。おまけに派手好きで家は破産寸前。だがそんな彼も四十を超えたところで転機を迎え、イベリア半島西部にある属州総督に抜擢された。財を得て帰国したカエサルは、実力者のポンペイオスやクラッススと組んで三頭政治を開始し、元老院派に対抗した。


挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「三頭政治」

   18 刀


 ガリア遠征も二年目が終結し、冬営期になった。カエサルは本国に帰り、ピサの港で、盟友であるポンペイウスやクラッススに会うことになる。ピサの港は共和制ローマの主要港の一つで、穀倉地帯であるシチリア島からの小麦が荷揚げされるところでもあった。

 カエサルは、年長者である二人を、荘園屋敷ヴィレに招いた。

 暖炉の前に三つの寝椅子を並べ、壮年の男三人が半身を起こして、酒を酌み交わした。


「それにしても、四個軍団とは――」

 クラッススはめまいを覚えた。四個軍団とは金を貸したカエサルが私的に増設した部隊数で、一個軍団は基本、四千人からなっている。カエサルは借金を返してくれるのか。……そう口にしかけた言葉と一緒に、奴隷女が杯に注いだ、温めた葡萄酒を飲み込んだ。

 とはいえ自分は、三頭政治の一角に食い込んだとはいえ、確かに財力頼みだという身の程は心得ている。その一方で、カエサルに預けた倅は、前線で活躍し、一万二千の兵に匹敵する将に育っている。口の悪いローマ市民は、「鳶が鷹を生んだ」などとも言うが、カエサルには感謝するほかない。ふっ、親ばかか。――クラッススはさらに一杯、葡萄酒を口にした。


「ポンペイウス殿、娘は息災ですか?」

 カエサルが聞くと、老ポンペイウスは満足そうな顔をした。カエサルの娘ユリアは、絶世の美女で、しかも立ち振る舞いが優雅で、ローマの女性達からとても愛されていた。娘ほども年の差はあったが、ユリアはポンペイウスに寄り添ってくれる。


 共和制ローマの実権を握る三者間に生じた利害は、ここで調整される。そこで、付けたしのような提案を禿げ頭のカエサルがした。

「元老院は市民に、何かと我らが悪であるかのように吹聴する。ここで、一ついい顔もしておいたほうがよいと思います。先年、越権行為の罪でローマを追放した元老院議員キケロの罪を赦してはいかがかと」

「問題ない」残り二人の実力者も肯首した。

 キケロは、追放撤回を求める手紙を、有力者達に出しまくっていた。手紙は三頭政治の実力者達にも出されていた。かくしてキケロは、足取りも軽くローマに帰還し、元老院議員に返り咲いた。

 ――キケロの奴め、どんな土産を届けるか、見ものだな。

 キケロは、ポンペイオスやクラッススに、莫大な黄金を贈った。

 カエサルには……

「それがしの実弟、それにわが弟子達を閣下にご紹介いたしましょう」

 以前、カエサルは弟キケロの仕官を求めたが、断られている。だが、兄キケロの追放解除で恩義を感じた弟キケロが、カエサルの幕僚の一人に加わった。さらにキケロは、哲人政治家である自分を慕って、ローマ全土から、教えを乞いに集まってくる青年達の中から、選りすぐりの者を、カエサルに紹介した。

 カエサルは、黄金以上に、人材の提供を喜んだことは言うまでもない。


 だがここで、カトウを中心とする元老院は、カエサル派の切り崩しを図る。

 カエサルの傀儡のようなクラッススは捨て置いたが、ポンペイウスにより強大な権力を与えつつ、カエサルが重用する側近ブルータスにも、要職を与えて懐柔していった。

 そして『ガリア戦記』は三年目、第三巻となる。


 つづく

【登場人物】


カエサル……後にローマの独裁官となる男。平民派として民衆に支持される。

クラッスス……カエサルの盟友。資産家。騎士階級に支持される。

青年クラスス……クラッススの子。カエサル付き将校になる。

ポンペイウス……カエサルの盟友。軍人に支持される。

ユリア……カエサルの愛娘。ポンペイウスに嫁ぐ。

オクタビアヌス……カエサルの姪アティアの長子で姉にはオクタビアがいる。

ブルータス……カエサルの腹心 

キケロ兄弟……兄キケロと弟キケロがいる。兄は元老院派の哲人政治家で、弟はカエサルの有能な属将となる。

ウェルとイミリケ……ガリア人アルウェルニ族王子と一門出自の養育係。

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