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中3の秋、部活も生徒会も代替わりし、3年生は高校進学を本格的に意識し始める時期だ。しかし、俺はそれどころではなかった。そう、生徒会の挨拶運動が終わったので、彼女は朝早く来なくなった。そして、魔法が解けた今、俺は自分の気持ちを本格的に意識することになった。
彼女と二人きりの時間が無くなってしまったならば、本来なら元の読書の時間に戻せばいいだけのことだ。でも、それは出来なかった。何故なら、彼女との10分が、たったの10分が、俺は何よりも楽しみだったから。
俺は、愕然とした。あれ程自らに言い聞かせていたのに、結局沼に足を突っ込んでしまった。太陽に近づきすぎたイカロスのように、彼女に近づきすぎた俺は自由の羽をもがれ、恋に堕ちたのだ。勝ち目なんて無い、成就なんてするわけ無い、無惨な結末しか無い哀れな恋。しかし、俺の苦悩とは裏腹に、もう気持ちは止らなかった。
受験勉強なんて、手につかなかった。ただ、成績も良いであろう彼女と同じ高校に入りたい、それだけで何とか勉強した。だから、進学先が違うと知ったとき、俺は本気で出願先を変えようかと考えた。結果的に俺は出願先を変えなかったが、その事実が俺を苦しめた。俺の、彼女の側に居たいという気持ちは、その程度なのかと、自問自答を繰り返したものだ。
いやー、青春してたんだな、俺。立派なアオハルじゃないか、俺。
中学校の卒業式の花道、俺は、相変わらず彼女の隣に居た。その時ほど、自分の身長の低さに感謝した時はなかった。もうこれで最後、と思うと、無茶苦茶泣けた。本当に、胸が苦しかった。ずっと泣いてたな、俺。
でまあ、彼女、木山さんとの思い出は、これで終わりかというと、もう少しだけ続くんだが、今は置いておこう。
回想?は今回で終わりです。
展開、あるのかなぁ(ぉぃ)