表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と海と電話  作者: lamina
2/3

メインストーリー

4月のある日、俺はいつも通り、練習後に教室に向かっていた。教室につくと、女の子が一人で小説を読んでいた。(うーわ、人おるし、俺だけの場所やったのに。えーっと、名前なんやっけな。まーいつも通り、近づけば、名前言ってくれるか)そう思いながら、自分の席に座った。俺はある違和感を感じた。それは、その女の子は騒ぐどころか、俺に会釈をすると、そのまま小説を読み続けていた。俺は、戸惑いながらも、音楽を聴き、今日出された課題をした。

「終わったーー。疲れたーー。めっちゃ集中したーー。」(そういえば、女の子は流石に帰ったかな。うん、流石に帰ってるよな、だって3時間経ってるしな。)そう思っていると、「お疲れ様」という言葉が聞こえた。「……!ビックリした。まだおったん!?」すると、女の子は、クスッと笑いながら、「すごく集中してたね。」と言ってきたので、顔が赤くなってしまった。女の子は、小説をしまい、帰る用意を始めたので、俺も教科書を机の中にいれて、帰る用意を始めた。「帰りってどっち方面なん?」(え、俺、何言っとん。)そう思いながら、同時にもうちょっと話せることを期待して、無意識に言ってしまっていた。さすがに女の子も少し驚いた顔をしていたが、すぐに「東町の方だよ。」と答えてくれた。それを聞くと、俺は「俺もそっち方向やねん、一緒に帰ろうや。」と誘った。それからは、毎日放課後に教室で会い、一緒に下校した。そして、下校中は、将来の夢のことや、お互いの趣味など、色々な事を話した。その中で分かったことは、彼女の名前は雫 美帆-しずく みほ-で、将来、小説家を目指している。そのため休日は家で小説を書いているらしい。そして、実は俺の事は名前だけしか知らなかったみたいで、俺の名前を言ったとき、すごく驚いていた。俺の事を知らなかったから、すごく気楽でいれたのかとその時になって気づいた。そのときから、知らず知らずして、雫に惹かれていた。

一緒に帰るようになって1ヶ月が経った頃には、俺の心の中には1つの思いが募っていた。それは、雫に対する気持ちだ。(明日こそは告白する。)そう心で決めながらもできずに過ごしていた。そんなある日、雫が「立石くんって好きな人いるの?」と言ってきた。俺は「いるよ」と答えると、雫の顔が残念そうに見えた。俺はそれに耐えることができず、「雫のことが好きやねん」と漏らしてしまった。雫は顔を真っ赤にしていたが、俺はそれどころではなく、(やってしまった。嫌われる。)と思って顔を伏せていた。すると、雫が「私も立石くんのことが好き」と勇気を出して言ってくれた。そして、二人の間には数秒間の沈黙の世界が広がった。(これってどうしよ……)そう迷いながらも、「連絡先交換せえへん?これから連絡することもあるやろうから」そう言って連絡先を交換してもらったのと同時に、沈黙の世界から抜け出した。家に帰ると、嬉しくて雫にメールをした。返信を見てみると、文章の最後の言葉に疑問を感じた。それは“私と海と電話”という言葉だった。(なんか変な言葉やな。でも、おやすみ言うてもうたし、また今度に聞いてみよ)そう思って、この日を最後にした。

2ヶ月ほど過ぎた頃には、俺たちは名前を呼びあう関係になっていた。そこまで進展しても、俺は相変わらず部活で土日も練習しているし、相変わらず注目を浴びていた。美帆は休日は小説を書いているから、一緒に過ごすのは、放課後の教室と、下校するときだけだった。連絡先を交換してから毎日メールをしている。そして、そのメールの最後決まって“私と海と電話”と送ってくるのだ。気になって一度美帆に聞いてみたけど、美帆は「魔法の言葉」としか言ってくれなかった。

夏休みの終り頃に俺は、美帆の家に遊びに行くことになった。初めて、彼女の家に行くから、すごく緊張していたら、美帆が「悠希くんに少し会いたくなっちゃった」と言ってきた。それを聞いた瞬間、(可愛すぎやろ。)と思い、緊張なんか微塵もなくなっていた。美帆は「書いている小説が行き詰まったから相談したかった」と恥ずかしそうに言った。それを聞いて、俺はパソコンを覗き込むと驚いた。その小説のタイトルは『私と海と電話』だった。それを見ていた美帆は「初めて会ったときと同じ顔をしてるね」と顔を赤くして言ってきたので、俺はそれ以上に顔を赤くしてしまった。小説を読んでみると、どうやら美帆が書いている小説は恋愛小説らしいが、最後のページだけが白紙になっていた。最後のページに関して話していると、時間になってしまい、今日はそこで解散した。学校が始まってからは、毎日、最後のページの事を話した。

時が過ぎ、大学受験が始まり、俺たちはお互いの進路に向かって頑張っていた。幸いにも俺は、バスケを頑張っていたこともあり、推薦で地元の大学に合格することができた。美帆は、地方の大学を目指していたらしく、勉強もかなり頑張っていたおかげか、無事に大学に進むことができた。美帆が大学に合格したときは、死ぬほど嬉しくて、一緒に喜んだことは一生忘れないと思う。

卒業式が終わり、美帆が地方に行くとき、俺は美帆の家の前で待っていた。駅まで美帆の親が送ってくれるはずだったが、無理を言って、俺が送ることになった。駅に着いて、二人で話していると、美帆が乗る電車が来てしまった。美帆が「また会いに来るから」と言うと、俺が「その前に俺が会いに行く」と言って、二人で笑った。電車に乗る前に、美帆は俺に「後で見てね」と言いながら1つの袋を渡した。そして、彼女が乗った電車がホームを出ても、見えなくなるまでずーっと見送り続けた。電車が見えなくなった後、俺はもらった袋の中身を確認しようとベンチに座った。袋の中身は美帆が書いていた『私と海と電話』だった。俺は、それを読み始めると、あることに気づいた。それは、登場人物が俺らにあまりにも似ていたことだ。実際に、それは美帆が二人を題材にした恋愛小説だった。そして、あの最後のページを開けると、俺は自然と涙を流していた。すぐに美帆にメールをすると、すぐに返信が返ってきた。そのメールには、たった一行だけしか書かれていなかったが、その一行は、俺には十分すぎる言葉で、今まで美帆の言っていた魔法の言葉を解かす言葉だった。それは“愛してる”という言葉だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ