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僕の単眼系彼女を愛でるだけの話

作者: 那智

ツイッターのフォロワーさんが俺好みの小説を書くから我慢できなくなった。

なお全年齢向けに描写はソフトです。


暖かな春の日のことだった。

新年度の学校、そこで僕は一つ年下で大きくてぱっちりとした瞳の彼女に心を奪われた。

それが初めての一目惚れで初めての恋だった。





それから時は経ち僕は彼女と恋人となったのである。

え?過程はどうしたって?知るか、結果を楽しめ。


「あのーセンパイ、そんなにじっと見られるとさすがに恥ずかしいんスけど・・・」


いつもの家デート中、本を読む彼女を一時間ほど眺めていたら顔を赤くした彼女にそう言われた。ああ、メガネのレンズ越しの瞳も美しい。


「しかたないじゃないか。 君はいくら見てても飽きないしむしろウキウキしてきて心があったかくなるんだもの」

「そんなのセンパイくらいなもんっスよ。 あたしみたいな単眼種を好きだなんて臆面もなく言う人間はセンパイしか見たことないっスもの」


僕の恋人は人間ではない。サイクロプスと呼ばれる種族の女性だ。

彼女の種族の特徴は二つ。人間よりも一回り大きい身体と顔の中心にある大きな単眼だ。

人間と人間以外のヒトが共に暮らしはじめてしばらく経ったけど異種族同士で恋人になるケースはまだまだ少ない。

だからなのか君はたまに不安そうな顔をしてこう聞いてくる。


「あたしのどこが好きっスか?」

「一番は瞳かな。 次に手入れの行き届いたまつげと少し垂れた目尻。それから 」

「すとーっぷセンパイ、ウェイトウェイト。 それ以上言われると顔から火が出るっス」


いつもこうだ。聞いてくるのは君なのにすぐにストップをかけてくる。

ちなみに僕は眼が好きだ。フェチだと言い換えても良い。ありのままの瞳もだが眼球から眼窩まで好きな筋金入りだと自負している。

特に彼女の眼はお気に入りで何時間だって見ていてられるほど好きだ。一目惚れの理由の八割ぐらいを占めてるほどに。


「相変わらずのドストレートっスね。 何度聞いても慣れないっス」

「特に眼に関してならいくらでも愛を語れるよ」

「知ってるっスよ。 センパイは『カップルにお互いの一番好きなところを聞いてみよう』って企画のインタビューの人を眼の話題だけで一時間拘束するぐらいの眼フェチっスもんねー」

「そりゃね。 全部好きだなんて愛の無いことは言えないさ。 すべての人を平等に愛することができないように真剣に愛すれば愛するほどその人のすべてを平等に愛することは難しいものさ」

「またそんな風に難しく考えてないことを難しく話すんスから。 センパイは不安とか感じ無さそうっスね」

「それは君の勘違いさ。 僕にだって不安はある。 目下の不安は君のお父さんに「娘はやらん!」と机に拳を叩きつけるその勢いで一緒に叩き潰されないかぐらいだけど」

「いやさすがにパパもそんなことはしない・・・はずっス」

「そこは完全に否定して欲しかった。 君のお父さん五メートルくらいあるんだから洒落にならないんだよ?」


そんな他愛もない話をしていると不意に彼女の手が僕の手に触れた。その手は男である僕のものより大きいけれど僕のものより女性らしく柔らかい。


「なあに? その綺麗な眼で瞬きもせずに見つめてくれるの?」

「やー、それはちょっと・・・ドライアイは種族的な弱点っスから」


サイクロプスの弱点はその大きな眼だ。種族的なイメージとは逆に眼はとてもデリケードなのでお手入れは欠かせないという。目薬は必需品だ。

いつも思うけど弱点丸出しじゃないかね?なかなか難儀なものである。


「その、センパイは眼フェチっスからやっぱ・・・えと、あたしの眼を・・・」

「愛でたいさ。 時間の許す限り見つめていたいしキスしたい。 可能なら舐めたりもしてみたい」

「うわー、ガチっスねー」

「ガチだもの」


それから少しの静寂。お互い次の言葉を見失って・・・ちょっとしてから君はポツリと言った。


「い、いいっスよ・・・」

「え?」

「その、だから、センパイなら・・・別に・・・やっても・・・・・・」


これはOKサインというやつだろうか。思わず唾を飲み込んだ。

たった今弱点だという話をしたばかりだというのになんていじらしいのだろうか。

彼女に対する愛しさが溢れだして思わず僕よりも大きな身体を押し倒してメガネを外す。

そして覚悟を決めたような彼女の顔にゆっくりと近づいて


瞼にキスをした。


「あれ? ・・・センパイ?」

「これで満足」


彼女から身を離し隣に座り直した。


「だってそれは君が痛いでしょ? 君が痛がるのは僕にとって嬉しくない」


確かに衝動のままに君の瞳をなめ回したい欲はある。愛を囁きながらその眼球に舌を這わせたい。

だけどそれは独り善がりの愛だろう。君というヒトに対して行う愛ではない。いくらフェチでも、いやフェチだからこそその辺の分別はついているのだ。


「あ、別に我慢してるわけじゃないよ? 触れるだけが愛じゃないしね。 むしろその綺麗な瞳が僕を映してるだけでわりと興奮する」

「とんでもないカミングアウトをされたっス・・・。 だけどそれじゃセンパイ生殺しじゃないっスかね・・・?」


どうにも彼女は感じる必要がない負い目を感じているらしい。まったく、気にする必要など小指の先ほども無いというのに。


「じゃあそうだな、君が死んだら眼をホルマリン漬けにして愛でるとしよう。 これならいいでしょ。 お互い痛くないし死んでも一緒的なニュアンスにもなる」

「うわーさすがにドン引きっス。 これは長生きして標本にされないようにしないと」

「おーっと、逃がさないからね。 僕はその時まで君から目を離す気はないんだから」







「ん・・・」


どうやら夢を見ていたらしい。


「あら、起きたの?」

「眼が覚めて隣に君がいるなんて、考えうる限り最高の目覚めじゃないか」

「それ毎回言ってるわね。 なにか飲む?」

「じゃあコーヒーを。 飲みながら日課に勤しむとしよう」


彼女が淹れてくれたコーヒーを啜りながら彼女の瞳を見つめる。彼女と結婚してから毎日欠かしていない日課だ。


「夢を見たよ」

「あら、どんな夢?」

「昔の夢、君がまだ後輩口調だった頃の夢だよ。 あの口調はなかなか好きだったのに今じゃすっかり落ち着いてしまった」

「それはそうよ。 だってもう後輩じゃなくて妻だもの。 口調の一つぐらい変わりもするわ」


彼女と話す時間は今でも心が弾む。彼女の瞳を見つめる時間と並んで僕の人生で最も大切な時間の一つだ。

どうかこの時間が永遠に続いてほしい。だけども悲しいかな、時間は有限だ。


「しかしこの分だとあれだね」


話しているうちに冷めてしまったコーヒーを飲み干して僕は大きく息を吐いた。


「君の眼をホルマリン漬けにするのは無理そうだ」


男女の寿命の違いかそれとも種族としてのものか。僕のほうが彼女より衰えるのが早かった。彼女はまだ元気だけど僕はもうベッドから出るのも一苦労だ。


しみじみ年老いたことを実感していると彼女が泣きそうな顔をしてるのに気づいた。


「まったく、君はこういう話をするとすぐ泣きそうになる。 ああ、泣かないでくれよ。 僕は君が泣くのが嫌いだし君の流す涙は量が多いからベッドがびしょびしょになってしまう」

「あたしが泣き虫なのを知ってるくせにそんな話をするからよ」

「ああ、それは僕が悪いね。 ゴメンゴメン。

だけどね、悲しむことでもないよ。 この歳になるまで君と一緒にいれたし君より小さくて僕より大きい子供にも恵まれた。 その子供が孫まで見せてくれた。 人としての幸せはもう大体コンプリートしたさ。 君は幸せじゃないかい?」

「馬鹿ね、幸せに決まってるじゃない。 だからもっと幸せでいたいのよ」

「そうか・・・ならもう少し頑張らなくちゃね」


そう意気込んだけど、やっぱり老いというのは手ごわい。また眠気がやってきた。


「ふう、最近は何をするにもすぐ疲れてしまって敵わんね。 少しぐらい運動して体力をつけたほうがいいのかな」

「ベッドで寝てばかりいるから衰えたたのよ。 今度軽い運動ができる道具でも持ってきてあげるわ」

「それはありがたい」


瞼が重くなってきた。まいったな、もう少し彼女と話していたかったのに。


「ああ、また少し・・・眠ろうかな。 どうにも眠くてしょうがない」

「・・・そうね。 無理はいけないわ」

「それじゃ、寝るまでこっちを見ていてくれないか。 とても、安心するから」

「言われなくても見てるわよ。 いつだってあたしの目にはあなたしか映ってないもの」

「はは、それはうれしいな」


目を閉じると途端に意識が沈んでいくのを感じた。もう、眼も開けないほど億劫だ。


「おやすみなさい。 あたしの愛しい人」


おやすみ、僕の愛しいヒト。








起きたらまた、君の綺麗な瞳に僕を映してほしいな


いやーとてもソフトないちゃらぶでしたね!

書ききれなかった設定とかキャラの設定とかは活動報告に書きます。


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