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『愛しき全ての人たちに――2』




『レリー』



 ワタシはトーリスから出たあと、ランピスに行き、……でもランピスもワタシには合わなくて、人形の世界に引きこもっていた。

人形の世界ではワタシの知らない価値観を知ることができて、3つの問題を解くまででれない怖さが密やかな楽しみを与えてくれた。

 ……そんなワタシが久しぶりに外に出て、ランピスの大通りを歩いていると、チャートが声をかけてきて、一緒にランピスの話芸を聞いて過ごした。


チャートは青い光を輝かせなくても、何となくカッコいい男性で、ワタシもちょっと気になってる。

恋とまではいえなかったけれど。

「今の話芸はどうだった?俺は好きだけど」

「そうね、少しは笑えたけれど、ワタシ笑いを取る話芸はあまり好きじゃないわ」

「ここの主流はそれだからなぁ、君が好きな公演見つけるのも大変そうだ」

 曲がり角を曲がった時、チャートが鍔の広い帽子を押さえてワタシを見て「ん?」と声を出す。

「何?」

「キミ、少し……変わった?」

「何が?」

「トーリスの歩き方と違う、悪いけど、もう一回その角曲がって」

「曲がらなくても、トーリスとは変えてるわ」

「いや俺が見たい」

 チャートはいつもより真剣で、ワタシも仕方なく承諾する。

「一度だけならいいわ」


 そう言って、人形の世界で学んだ曲がり方をする。

通常、トーリスでは建物の角に腕が当たるように曲がる。

その際、腕が角にぶつからないように、腕を勢いよく当ててすり抜けさせて、でも、それを周りに気づかせず自然に回るのが、トーリスのしきたり。

こうすると最短距離を回れるし、それを周りにも気づかせないため、最上の曲がり方とされていた。

トーリスでも下流の人間は、大胆に近道をしたり、肘の動きを早くしすぎて周りによくわかるから、見分けるのが簡単。

 ……ただ、それはトーリスでの話、人形の世界でこれをやると、腕は角にぶつかるし、服に汚れがつくから、ワタシは角に触れずに回る癖がついていた。

 人形たちはとても美しく曲がっていたから、その方法を覚えたんだけれど……。

礼儀知らずと思われるのは嫌だったから、チャートに尋ねる。

「トーリスの回り方がいい?」

「いや、今の君の回りかたの方がいい」


そうチャートは嬉しそうな顔をする。

ここまで嬉しそうなチャートは見たことがないから、ワタシが内心頭をひねっていると、チャートは自分のことを話始める。

「今の君にだから言うけど、実は俺、トーリスの作法の大部分は見栄えが悪いって思ってるんだ」

 それはワタシも驚かない、トーリスには見栄えの悪い作法も、よく混ざってる。

「そういえばチャートは、作法とは違うけれど、綺麗な動き方するわね」

「それが俺の作法、俺、夢があって、いつかトーリスの作法を変えるって決めて実践してるんだけど。君から見てどう?」

「そうね、青い光を消しても、妙に見れる動きってところね」

「見れるって、君ちょいちょい口悪いよなー」

「あらこれは絶賛してるの、カラリスの服装なのに、見れるようになるんだから、すごいことよ」

「その感じが好きなんだ」

「?」

「君はトーリスの作法を守ってるように見えて、あんまり見栄えが悪いのは、やってなかった。例えばテーブルに座ったり」

「ええ」

「美意識もいいし、君なら俺の考えがわかるって思ってた。ただ」

「なに?」

「トーリスのしきたりは君の頭の中に残ったままだった。

だから、俺は言うべきか迷ってたんだ。

ランピスが君を変えたのか?」

 へえ、チャートはワタシのことよく見てるのね。

あんまりワタシに興味ないかと思ってたのに。

「……それは教えないわ。

でも、なんとなくだけれど、あなたとは楽しく話せそうね」

「ああ、俺もそう思ってた。これから、そういう相談してもいい?」

 いつも堂々と喋るチャートが、その瞬間だけ少し不安そうに言って、ワタシは少し楽しくなって、ランピスの挨拶をかえす。

「いいわ。今日が終わっても、また会いましょう」




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