『緑青の湖畔でお披露目します』
アクセサリーはできたから、あとは着飾るだけ、ここは湖の畔で鏡がないから、ミレに尋ねる。
「一応ね、つけたけど、どう?」
三つの渦巻きの髪飾りからは、白い光の流れが出てきて、髪に付けると私を光のヴェールに包んだ。
……色んな場所を削っていったら、思ったより光の流れはうまく扱えて、綺麗なドレスみたいになる。
ミレは私の髪飾りの位置を慎重に調整し、やがて喝采をあげる。
「美しい人ね!白光のドレスが綺麗!所々の焦げ茶色が白を際立たせてるのね」
「うん!ローブもね、私のものだから、全部隠したくなかったんだ」
「髪の上から薄い光のヴェールが後ろに流れてるけどどうなってるの?」
「髪飾りにね切り込みを入れてるの、そうするとね。光の薄い場所もできるから」
「そう?素晴らしいわイオ、これならトキも、よりあなたに恋するはずよ」
「ブローチはどこにつけようかな」
削り方で色調に差をつけたブローチは薔薇を象った物にした、でも、ただの薔薇じゃなくて、薔薇に、盾と王冠とそれを支える二匹の獣をあしらったもの。
2つともこれから私の長く過ごす、薔薇の館の象徴だから、これにしたくて、付き人になってくれたスミの分と2つ作っていた。
スミは私を助けてくれたから、そのお礼に。
「胸のこの辺りに付けたらいいと思う」
「ありがと、そうするね」
最後に、トゥリーイヘアド(60)を数える虹色の指輪を指に嵌めて、私の準備が整う。
トキはさっき一度ミレが呼びに行って、ここに向かってるところ。
この衣装を最初に見せるのはトキが良かったから、私は湖の畔の森にこうやって身を潜めておく。
できる限り綺麗に出てく方法を考えたら、空と湖が緑と青の二色に染まる緑青の時間が一番良くて、トキにはその時間に着くようにお願いしてある。
ミレが空を見上げる。
「緑青ね。そろそろ湖の畔で待ってたら?私ここで見ているから」
「うん、ありがとミレ!トキなんて言うかな!」
「それはあなたしか聞けないこと、私にもあとで教えてね、神のご友人!」
そう言ってミレは笑って、私に「楽しい時間を!」
って言ってくれる。
あとはトキを待つばかり。
湖の畔で緑青の風景を眺めてると、トキらしき人影が、湖の周回をまわってくる。
最初は遠まきに、私の方を見たけど、私だと思わなかったみたいで、途中で足を止め、森の方とか、湖の反対側とか、別の方をきょろきょろと探し始める。
「おいイオー、どこだ」
……わ、トキ、私だと思ってないんだ。
私がすごい綺麗になってるから?私は嬉しくなって、トキにちょこちょこと手を振る。
遠くだったけど、トキは怪訝な顔で私を見て、それからそっぽを向き……ゆっくりゆっくり、人違いじゃないか、確かめるみたいに近づいてくる。
トキは人違いだったときの言い訳を考えてるみたいで、私の方を見ず、湖を眺めながら近づいてきて、私の9歩くらい先で止まって、完全に湖の方を向いてボヤく。
「あーイオ、いねえな、まさかこんな綺麗な奴じゃねえーし、イオどこだよ。おいイオー!」
トキはもう自分で確認する気はないみたい。
人違いか、私かを、私に言わせたいみたいで、湖を見てるだけ。
本当に分かりかねてるみたいだから、ちょっとびっくりさせよう。
……私はトキから離れる方にたくさん歩いて、トキの視界から外れ、つつつって回っていきトキの後ろから近づいていく。
「んだよ違うのかよ」って、トキが振り向いたところで、ふわって抱きつく。
「トキ!」
「お、おいやっぱ、君イオか?」
「うん!」
トキは驚いたように、私の衣装をせわしなく見る。
「イオおお?」
「うん!」
「おおいっ!めっちゃ綺麗な衣装になってんじゃねーか!トーリスでも最高位だぜ!なんだよ、おい、すげーな君!」
「ありがと!ね、トキ、地味なの好きって言ってたけど。でもねこれが私の綺麗だから!」
「うおおっ!すげええ!俺さ、地味なの好きなんだよ。イオ地味だったろ、その見た目好きだったんだわ、地味なのがすっげえ好きなんだよおお!」
「じ、地味なの?」
「おお!地味な君だ!」
「えっと地味な私が好き?」
「おう地味なの好きなんだよ!ものすごくっ」
うそ?地味なのが好き?
「綺麗すぎた?え、あ、ごめんね、アクセサリーだから外せるから」
「お、おい外すなって」
「え、ちがうの?ブローチ?指輪?地味なのだよね」
「ちげえって!あれだよあれ!悪い!興奮しちまって頭回んねー、そういう意味じゃなくてさあ」
「何?」
「じゃなくてさあ!あーあれだ!今わかったんだよ。俺さあ、地味なのが好きだったんじゃなくて、イオが好きだったんだわ!君が綺麗になったら、もっとすっげえ好きになった、なんだよそのドレス!すっげえ可愛いよ、イオ!」
言いながらトキは私を抱き上げてくれて、私の顔を覗いて、すっごく嬉しそう。
抱え上げた私の全身をすごく嬉しそうに眺めてる。
「わ、……わー、なんかね恥ずかしい……」
横向きに抱き抱えられてたから、光の流れが崩れてないか気になったけど、ちゃんとドレスみたいに身体を包んでくれてた。
トキが私を抱えたまま歩き出し、声を弾ませる。
「おい、君ずっとそうしてろよ、俺の恋人だって街中に広めるぞ!他の男が寄って来ないようにな!
まだ誰にもその衣装の裸は見せてねえよな?」
は、裸?
「うん、見せてないよ」
「じゃあ俺が初めてだな!君は俺のもんだから、もう誰にも靡くんじゃねーぞ!」
やっぱりトキもあれは気にしてたんだ。
私が他の男の人に身体を許してしまったこと。
ちょっと申し訳なかったけど、少しはトキの悔しい気持ち和らいだかな。
「ねえトキ」
「なんだ?君が嫌がっても街に広めんのはやめねーぞ」
「……、少しだけでも、私に恋してくれた?」
「少しどころじゃねえよ!!君はなあ、俺の最高の女だ!」
よかった。
トキの喜びを感じて私も心が暖かくなる。
だから、トキの首に両手を回して、身体を持ち上げて、トキの頬にキスをする。
トキは驚いて、にやけながら言う。
「おいー、やめろよ、余計に好きになっちゃうだろ」
「私、トキ、大好き!これからもトキのためにがんばるから!」
「おう!お互いがんばろーぜ、まあお互いっつっても、特に俺が頑張らなきゃな」
「え?」
「君が可愛いすぎんだよ!よーし、いいから恋人宣言してくる、君は俺のもんなんだからな!どんなかっけー男が来ても断ってくれよ?」
「うん!安心して」
「安心できねえって、俺、君一人にしたくねえよ、とにかく宣言だ宣言、神の友人だろ、仕草綺麗だろ、性格良くて、見た目めちゃ綺麗だろ、ぜってえ男が寄ってくる」
トキは焦ったように私を抱え、街に急いで急いで、私は笑い出してしまう。
ありがと、トキ、トキのおかげで私はね、自分に自信が持てたの。
私はもっとあなたに好かれるように頑張るよ。
だから、ね、ずっと一緒だよ。




