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ミチノカナタ~~物戻る街で~~  作者: 流氷陽北
第二章:お願いの仕方は数あれど……。
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『告白とキス』




「イオ、俺の友人を紹介するぜ」

「う、うん」

 頷きながら自分が震えてくるのがわかる。

なんで私を紹介するの?こんなに醜いんじゃ、見るのも嫌かもしれないのに。

私が涙を拭っていると、トキが黒い帽子の人の肩を叩く。

「こいつはチャート!滅茶苦茶踊りがうめえ!俺には負けるがな」

「うるさいな、君のが先なんだから当然だろ」

「ひっひ、まあ俺は宙返りできねえよ、で、こっちの赤いのがイトランゼ、歌が下手な吟遊詩人だ」

「どーぞよろしく、歌が下手な歌人です。これからも公演を滅茶苦茶にしてやるわ。特に次ね!次に歌う時は滅茶苦茶になりそう」

「お、おう悪い今のナシな、冗談だよ冗談」

 私は何を言ったらいいんだろう。

私なんかが来ても、この人たちは嬉しくないのに。

「で、チャートにイトランゼ、この子がイオだ」

 チャートとイトランゼの二人が私を見つめる。

二人は声をかけあぐねてるようで、私はすぐに居たたまれなくなって、「会えて嬉しいです」ってだけ言って、扉に早足で向かう。

 出て行こうとするとトキの怒った声が聞こえてくる。

「逃げんなよ!?逃げたら、君の館に行ってずっと悪口言い続けるぞ」

 無視しようと思ったけど、想像したら怖くて、私は何度か足を踏み出しかけて、結局は足を止める。

 そして逃げたかったから、トキに恐々と言い返す。

「なんでトキ?トキは昔、私にね、トーリスに会いにくるなって言ったよ。恥ずかしいからトーリスで俺には会うなって」

「あの時はあの時だろ、なあチャート、イトランゼ、あん時はイオに関わってる場合じゃなかったよな?」

「まあな」「今もだけど」

 チャートは戸惑い気味に、イトランゼは興味なさそうに、ベッドに座っていて、雰囲気からして、私をそこまで歓迎してないことは伝わって来る。

「トキは……なんで私を連れて来たの?私ねもうだめなの、自分で自分が嫌いなの、誰にも会いたくないから、もう行くね」


 そう言うとトキは、ふうっと言葉を吐いて、よおーしって気合いを入れる。

「あのさあ、今から告白するわ俺」

 告白?

「告白って誰に?イトランゼさん?」

「イトランゼえ?!おい、君、イトランゼと関係あるか?!なんでイトランゼに告白するのに君連れてくるんだよ」

「じゃあチャートさん?」

 チャートがぶふっと噴き出して、トキが頭を抱える。

「待て待て!頭までイカレんな、チャート男だろ、イトランゼよか離れてんじゃねえか!」

「告白の意味が違うの?私の悪口をこくはく?」

「そんな告白しねえよ!君に普通に告白すんに決まってんだろ!」

 怒鳴られて私がびくっとして、トキがちょっと慌てる。

「悪い。イオ、逃げるなよ?逃げないで聞いてくれよ、告白するんだからな」

「……私に告白?」

「俺さあ!君の地味な服も含めて好きなんだよ。神マネ講座も会う前から時々見ててさ、なんつーかよ、俺勇気貰ってさあ、だから君が好きっつーか、あー、わりい!緊張して言葉でねえ」

 トキが私を好き?

 それは意外すぎて、私の頭が一瞬思考を拒否する。

 なんで私に告白?でも男の人に告白されたのは初めてで、緊張して赤くなって、でも私の服は醜いから、すぐに嫌われるんじゃないか怖くなる。

「……こ、告白ありがとう、ございます」

「いや、なんで丁寧に答えるんだよ。まだ告白の途中だぜ?」

「う、うん。そのね、ちょっとベッドに入るね」

私は言いながら、チャートとイトランゼの座ってるベッドのシーツに潜り込む。

一分しか効果はないけど、告白してもらうときくらい、醜い服を隠したかったから。

 トキは苦笑して、ベッドから顔だけだした私を覗き込む。

 その瞳は真剣そのもの。

「俺は君が好きだ!あんな姿見ても好きなんだぜ?だから一生好きだ、わかるな、俺は君が好きなんだよ、地味な服も全部!」

 本当に告白?すごく頬が赤くなってしまって私は緊張してこくこく頷く。

トキも緊張しているみたいで、強張った顔で立ち上がり、チャートとイトランゼを呼ぶ。

「言ったぜえ、チャート、イトランゼ頼む」

「はいはい」「ああ」

「んでよう、イオ、これから君に、お、俺がどんだけ地味なのが好きなのか、見せる。君、自分の服が地味だって気にしてるだろ?でも、俺それ好きなんだよ。それを見せてもいいか?」

 私はもっと緊張して、ゆっくりと頷く。

でもどうやって地味なのが好きなのを見せるんだろう?

 シーツを口元までひいて、可愛い表情を作ろうとしたけど、自分がどんな仕草をしたらいいかわからなくて、身体がカチコチになる。

トキも緊張して、何か仕草がぎこちない。

「よーし、見とけよ?んじゃ見とけよ!ヨードロゼ、始めるぜ」

ヨードロゼ?

「いいかイオ、俺はこいつらのリーダーで、アイステっつう足だけのダンスをやってんだ。

普通ダンスってさ、腕が主流で、足の動きだけだと地味なもんだろ、でも俺はそれが好きなんだ。君と同じように。よーし、イトランゼ頼む」

って言って、トキが手を上げるとイトランゼが朗々と歌い出し、歌に合わせて、トキがチャートと並んで踊り始める。

「よっほっ!」

 トキは歌に合わせ、すり抜けないようゆっくりとステップを踏んで、時々足を勢いよくあげ、ゆっくりと下ろす。

 その踊りは言われてた通り、本当に足だけで、普通知られてるダンスと比べるとほとんど派手さがなかった。

 そしてそれどころか、同じダンスを踊ってるはずのチャートとトキでさえ違っていた。

 トキは地味なダンスをただ一生懸命踊っていたけど、隣で踊るチャートは、身体の動きや、帽子を押さえる動作をまぜて、トキより数倍華麗なダンスになっていた。

同じ踊りのはずのチャートと比べても、トキのは本当に足だけにこだわって、足元を見ながら、地味なダンスを本当に一生懸命に踊ってる。

不器用に不格好に。

私はそのダンスに釘付けになる。

 地味でも格好悪くても、トキは本当に丁寧に、懸命に、愛着を持って踊っていたから、だから、トキのダンスへの愛情はすごくよく伝わって、……そのダンスを自分の地味な服と、というより私自身と重ねてしまうと、何か気恥ずかしくなって、心がすごく暖かくなった。



 ダンスはそのまましばらくして終わって、終わった頃には一分が過ぎ私はシーツの上に座っていた。

 私が身にまとうのはダンスと同じくらい、地味なローブと靴、それはとても人に見せられないものだったけど、でもトキの気持ちは口で言われるより、ずっとよく伝わって、私の胸の奥にすーって届いて、涙もすーって流れ落ちてしまう。


「おい泣いてんのか?」


「え?……うん、いいダンスだね。私ね感動しちゃった」


「お!そーか、泣いたやつ初めて見たぜえ。俺のダンスも捨てたもんじゃねえな。チャート、イトランゼ、あんがとよ」

トキは二人にお礼を言って、二人が笑って、トキに軽口を言った後、イトランゼが私に言う。

「いいイオちゃん、トキは私の親友よ?あんまり泣かせないであげてね」

「うん」

「よろしい、じゃあトキ、あとはごゆっくり」

 イトランゼはそれで扉に向かって、チャートもトキに小声で何か話して背中を叩いたあと、「じゃ、俺も」って私に手を挙げて扉から出ていく。


 そうしたら、部屋には私とトキの二人だけになって、私は緊張して顔が上げられなくなる。

 こげ茶色のローブもこげ茶色の靴も、トキに見られていたけど、本当に地味なの好きかもしれないって思っちゃって、勇気を出して隠さないでいた。

トキはそんな私の隣に座って、たどたどしく聞いてくる。

「か、肩抱いてもいいか?告白の返事待つ間だけな」

「いいよ」

「お、おう」

 トキは私の肩に手を回して、力強く抱き寄せてくれる。

その腕が頼もしくて、私の髪がトキの胸元に当たって、緊張してくる。

 何て答えたらいいかわからなかったけど、やっぱりドキドキして、言葉が上手くでない。


「告白……ありがと、トキ、嬉しかった」

「おう」

 トキがより強く私の肩を抱き寄せてくれて、またすごく緊張してくる。

「わ、私ね、今はね、ちょっとねドキドキしてて、答えられそうもない」

「おっ、ドキドキしたんだな?」

「う、うん、した」

「よーし、いい感触だな」

 良い感触が私の身体に向けられたものな気がして、ちょっと言葉にできない。

 頭の中だけは熱くなって、くるくると色んなことを考えてたけど、言葉にしようとすると口から出せなくて、トキは私が言葉にするまでをじっと待ってくれていた。

 開けづらかった口をなんとか開く。

「……あのねトキ」

「おう」

「私ね、告白す、すごくね嬉しくて、トキのことね、好きになると思う」

「おっしゃ!じゃあいいんだな、恋人だよな!」

でも、ちょっとだけ待って、って拒否しようとして、その言葉を飲み込む。

 ……なんでかは自分でもよくわからない。

 ただ、なんとなくトキに抱きしめられてるとどきどきして、それを言えなくなった。

「キスするぜ」

「……うん」

 私が頷くと、トキは私の顔を上げさせて、私が目を閉じてる間に唇と唇を重ね合わせる。

 トキの唇は暖かくて、口の中からは唾液が出て、唇からトキを感じてると、芯まで痺れるような感じがして、頭の中まで火照ってくる。

それがどれくらい続いたんだろう、唇が離れる時、トキが「しゃっ」って声を出す。

 キスしちゃった……。

 その感触に浸っていたくて、自分の唇を人差し指でちょっと触り、何も言える気がしなくて、私は勇気をだしてそっとトキの手に触れる。

トキは握り返してくれて、私は赤くなりながら俯いていた。




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