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「この窓の向こうに、あなたは何を見ているの?」

作者: 榊友里

此の窓の向かふには、何が有るかつて言ひたいのかい―――と、色素の薄ひ髪をさらと耳に掛けて、彼は言ひました。

「いいえ」

貴方が何を見てゐるか、です。

「さうですね。貴方には何が見へますか」

「土と、石と、紅葉と、空と、塀です」

「さうでせう。私にも其れが見へてゐます」

「ならば何故、ぢつと見詰めてゐるのです」

さふ言つてゐる間にも、彼の目はふわりふわりと窓の外を泳ひでゐます。

舞ふ紅葉を追つてゐるにしては、振れ幅が広ひ気がしてなりません。

「此の景色の上に何か見てゐるのでせう?」

「ええ、さうです」

「其れは何です」

僕は声を荒げて仕舞ひました。

すると彼はゆつくり此方を見ました。

「驚かせないでくださいな」

さう言つた彼の視線は僕を貫ひてゐる。

「御免なさい」

「其んな事を言はれて仕舞ふと困ります」

眼鏡を掛けてゐて良かつたと思ひます。

彼の目を其の侭に受けて仕舞つたら僕は耐へられる自信が御座いません。

「私の目が緑色なのはね」

彼の視線はゆつくりゆつくり、本棚と床の間を通り過ぎて、窓へ戻る。

「紅葉の紅く成ら無い時の姿なのですよ」

「紅葉の?」

「此の紅葉でも紅く変り行くと言ふのに、私は変はらず緑色の侭なのですよ」

「でも貴方は」

「だから嫉妬してぢつと外を睨む事にしたのですよ」


普段からこの仮名遣いで過ごしてはいないので、こうは書かなかったのでは?という文もあるやもしれませぬ。

その時にはどうかご指摘くだされば有難いです。

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