#04 闇に蠢くモノ
点々と灯されているたいまつの明かりが
祭壇を照らし出している。
祭壇の中央には、ひとつの影
幼さの残る少女が一人、佇んでいる
「さぁ、奏でよ!」
深く暗い闇に、響く声
「魂の灯火を燃やす、争いと、渇きの唄を!!」
そこに居たのは【神官ヴォルドー】
口元を、狂気に歪ませて高らかに告げる
「力!」
「争い!」
「それを求める、渇き!!」
「人間はそれを手放すことはできない!」
呼応するように、祭壇の炎がより激しく燃える
「それ故に欲望に飲まれ、集い、求める!」
「それを支配し、規律と恐怖でこの世界に君臨するのは」
「この、ヴォルドーなのだ!!」
狂気に染まった笑い声が
少女の奏でる唄声と共に、闇へと飲まれていく
少女は唄い続ける
自らの意思を持たず、言われるままに
「さぁ、私に差し出せ!」
「魂の燃え逝く輝きを!!」
闇の中、たいまつの明かりがひとつ揺れる
「まいったなぁ・・・」
トボトボと、一人で歩き続けるアイン。
「あの二人、元気すぎるんだよ・・・」
ブツブツとぼやくその耳に、獣の唸り声が聴こえてきた
「!!?」
すぐさま、戦闘態勢に入り気配を探る
その殺気を隠そうともせず
その気配は、壁を突き破り現れた
「な、なんだコイツは・・・!?」
前脚には鋭く、大きな鉤爪と肩から腕にかけてわずかに残った翼
爬虫類のそれに似た姿は、余りにも禍々しく強大である。
低い唸り声を、響かせにじり寄ってくる
緊張の糸が張り詰めていく中
先に動いたのは、そのモンスターの方であった
巨体を物ともせず跳躍するその姿に
気圧されてしまうアイン
地面をえぐりとるほどの一撃を、紙一重で避ける
「やれるのか?こんな奴相手に!?」
背中にじっとりと汗が滲むのを感じる
獲物を見定めるように舌なめずりをするモンスター
「覚悟を決めるしかないか・・・!」
重心を低く構えて武器を握る
牙をむき出しにして飛びかかってくるモンスターに対し
咄嗟にブレードを振り上げるものの
裏をかくようにアインの頭上を超える
「な・・・!?」
予想外の行動に動きが乱されたアインは
強烈な尻尾の一撃を喰らい、壁に叩きつけられてしまった
意識を失わないよう必死に歯を食いしばりながら
壁を背に立ち上がる
それをあざ笑うかのように距離を詰め
獲物を仕留めんと迫り寄る
「いやぁぁぁぁ!!」
一声のもとに割り込んでくる影
そして辺りに響きわたる甲高い金属音
次の瞬間、巨大な体を壁に叩きつけられて
のたうち回るモンスターの姿が眼に飛び込んできた
自らも、そんな目に遭うとは思わなかったであろう
困惑はすぐさま怒りへと変わり
激しい咆哮が、闇に震える
「来るわよ・・・!」
現れたのは一人の女性ハンターだった