#03 集いしものたち
かつて、其処にあったものは既に朽ち果て
その姿を残すは、多大の残骸のみ
そのものは
何を求め
何を成したのか
そして
何を伝えるのか・・・
先の見えぬ暗闇を
カンテラの明かりを頼りに進んでいく
つい先日
密林の孤島で、発見された遺跡の内部には
広大な迷宮が広がっていた。
ギルドの調査隊によって発見されたこの遺跡は未だ
踏み込んだ者がいない未開の場所である。
調査隊の前に、突然広がる視界
そこは、予想をはるかに超える場所だった
辺りには、無数の生き物とみられる骸が無造作に打ち捨てられている
そして、何よりもそれはまだ【真新しい】のだ。
「こ・・・これは、なんだ・・・?」
調査隊の一人が、照らし出した先に現れたのは巨大な骸
「飛竜・・・なのか!?」
それは既に、朽ち果ててはいたものの
圧倒的な存在感を持っている
しかし、それを【飛竜】と呼ぶには
余りにもその姿はかけ離れたモノ
巨大な水柱の中に漬けられた異質な存在が、虚ろに見返す
辺りを見渡すと
同じように水柱に漬けられた生物たちの骸がいくつも確認できた
「まさか、ここは禁忌とされている場所なのか・・・?」
積み重ねられた本の中にあったのは【生物資料】
人道を踏み外したものが、己の研究意欲のために書き記したもの
余りにも非人道的なため【禁忌】として封印されたのだ
調査員はその直後、全員消息を絶つ
そして、その事実がギルドに知られるのは
一連の事件が起きた後となる
数日後
「よくぞ集ったトレジャーハンターたちよ!」
白いローブに身を包む男が、高らかに叫ぶ
「ここに、そなたたちの求めるものがある!!」
煽るように言葉は続く
「それは武器か?」
「それとも鉱石か!?」
「はたまた莫大な財宝なのか!?」
両手を広げ、天を仰ぐ
「その手に求めよ!」
「その者にこそ、真実を知る栄誉を与えよう!!」
密林の遺跡に声が響きわたる
「この【神官・ヴォルドー】の名において!!」
地響きのように大地を震わせて
無数に集まったハンターたちの雄叫びが轟く
「ものすごい数だな・・・」
軽く数百は超えると思われるその数に、気圧されるように
アインがつぶやく。
「欲に、目が眩んだだけの愚か者たちよ」
無表情で、過激なことを言い放つツバメ
「私たちの探しているのは、あくまで【黄金竜】の手掛かり」
「財宝なんて、どうでもいいわ!」
その言葉に反応して、周りから鋭い視線を浴びる
「おいおい、あんまり目立つと潰されちまうぜぇ?」
「その分、分け前が増えるだけだがよぉ!?」
早速、ガラの悪いハンターが絡んできた
「いいか?ベルカ!あんまり騒いで目立つなよ!?」
小声で諭すもそこにベルカの姿は既に無い
「・・・・・・・・・」
おそるおそる、ベルカの姿を探す
「あぁ!?何か呼んだかぁ!?」
アインの視線の先には、飛び蹴りを放ちながら叫ぶベルカの姿
「ふ・・・そう来なくちゃね・・・!」
ツバメもその中に飛び込んでいった
「こ、こいつらぁ!?」
「かまわねぇ!やっちまえ!!」
騒ぎは、またたく間に広がり辺りは混乱していく
「・・・・・言うだけ無駄だったか」
頭を抱えてうなだれるアインを余所に
一団はもつれながら遺跡の奥へと消えていくのであった